ヨーロピンビスタ(1.66:1)は「黄金比」(1:1.618)に近い。
スタンダード(1.33:1)は「白銀比(大和比)」(近似値で1:1.414)に近い。
シネスコ(2.35:1)は「白銀比(第2貴金属比)」(1:2.414)に近い。
ワイド(16:9=1.78:1)は「白金比」(近似値で1:1.732)に近い。
でも、アメリカンビスタ(1.85:1)は特にないんだよなぁ。
だから、逆に映画っぽいと思うのだ。
一応、アスペクト比は、幅と高さの数値比率のこと。
画角ともいいます。
デジタルになってから、いろんな画角の作品が増えました。
最近だと、1.50:1とかの『ハッピー・オールド・イヤー』もありました。
こういうのも映画の進化よね。
初期の写真風のほぼ真四角で角が丸い『イーダ』や『私はゴースト』、スタンダードの『Mommy/マミー』(2014)、80年代のビデオで撮影された『NO』の4:3などもありました。
これも楽に使われるようになった、現像しないでデジタルで作り出せるようになったから。
アナログでも昔からずっとあるっちゃるのですが。
二画面のマルチスクリーンで見せる映画もあり、これは珍しい画角の画面が二つあるともいえる。
最近だと、『ヴァスト・オブ・ナイト』は昔の丸いブラウン管テレビの画面にところどころ変わった。
そう、一番の変化は画角が途中で変わるもの。
これも前からあるにはあった。
1:66→2:35:1の『コールド・フィーバー』、『リング』やミヒャエル・ハネケも『ベニーズ・ビデオ』のように映画の中に昔のテレビの画面(ただし、TVを写しているので、画面比自体は変わらないけど)を入れるものは昔からありましたし、8mmなどを挟み込むことで変えるというのもあった。
これがデジタル撮影(仕上げ)と上映でさらにやりやすくなりました。
最近だと、時代でスタンダード→1:66→1:85の『グランド・ブダペスト・ホテル』や1.85→16:9の『ヤクザと家族 TheFamily』とかでやってますね。
現代的にはスマホの縦画面使いの9:16や1:1:85も当たり前になりつつある。
もはや、これも普通に技法になった。
ミヒャエル・ハネケの『ハッピーエンド』(2017)もこれで撮影されたシーンが何回か出てきました。
ずっと、縦画面の映画も短編(『Dead Of Night』など)や配信ではありますが、スクリーン向けには『V2.Ecape From Hell』という作品が待機中で2021年に公開予定です。
(スマホで見るための配信映画で縦画面のものもあるが)
クリストファー・ノーランは画角変更したくてしてるわけじゃないけど、『ダンケルク』は35mmとIMAX70で画角が変わっていた。
IMAXも定着しましたが、日本には最大のIMAXフォーマットの上映は2か所しかないので、なかなか見る機会がない。
通常のIMAXはだいぶ定着しましたね。
アニメなどの高画質版をかけるなどでソフトも安定しているし。
ただ、実写でIMAXを安定して使えているのが、クリストファー・ノーランとMCUとDCEUぐらい(単発的にはある)なので、これがもう2つくらい増えると安泰という気もします。
他にも、IMAXではない巨大画角では、70mmをポール・トーマス・アンダーソンが『ザ・マスター』や『インヒアレント・ヴァイス』で復活させたり、クエンティン・タランティーノがウルトラパナビジョン70(2.75:1)を『ヘイトフル・エイト』で復活させたりしている。
その最大が270°の3画面での上映のScreenX。
こちらは専用と言うよりは、スペシャルなアトラクションな感じがまだある。
これって3画面のシネラマの再来よね。
シネラマも資料でしか見たことないけど撮影した映像だったんだけど、ScreenXはそれ用に追加でつくった映像らしいんで、どういう映像が流れてるんだろうか、一度見てみたいなぁ。
ゆえに、昔のアナログ撮影装置を復活させたものもある。前述の『ザ・マスター』や『ヘイトフル・エイト』もその一つ。
加えて、加工した画面や特殊な機材だけで作り出す映画も出てきた。
『レバノン』はほぼ戦車内からの視点だけで構成されているので、照準の画面(一部でスナイパー視点で使われたり、『007』の拳銃のバレル内視点などもあった)がそこそこの分量で使われるし、機械のPOVで構成される『ハードコア』や、監視カメラの画面だけで構成された『インフルエンザ』(短編)、iPhoneのみの『マンダリン』などもある。GoProだけの短編もある。
青い画面だけの『ブルー』は撮影がないともいえるし、真っ黒な画面がわざと入る『ヴァスト・オブ・ナイト』もある。
漫画のコマを再現したかのような画角の映画もある。
プロジェククションマッピングを利用した3次元的なマルチスクリーンを採用した映画もある。
今後は、画角が変わりまくる映画(マルチスクリーンの『ロンゲスト・ヤード』をさらに発展させたような)、片目の人の視点だけの映画、丸い画面の映画、キャンバスの上で展開する映画、オリジナルの画角を作り出した映画が生まれてくるだろう。
すでに、VRで360°の映画もあるわけだし。
映画はさまざまなところで見られるようになった。
そして、さまざまな画角も定着し始めた。
映画の初期のような様相を呈してきているともいえる。
これって、映画が新しくなろうとしている胎動なんじゃないかな。