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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

弱いものは見ないようにする。 『梟 フクロウ』

2024年02月12日 00時00分21秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2307回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

 

『梟 フクロウ

 

 

 

17世紀朝鮮、盲目の鍼師が王子の死の真相をつかんだため、窮地に陥るサスペンス・スリラー時代劇。

朝鮮王朝時代の記録書「仁祖実録」にある壮絶な怪死の謎を基にした歴史フィクション。

 

梟─フクロウ─ | あらすじ・内容・スタッフ・キャスト・作品・上映情報 - 映画ナタリー

2/9(金)公開 映画『梟ーフクロウー』公式サイト

 

 

原題は、『올빼미』。
『梟』。

英語題は、『The Night Owl』。
『夜梟』。

 

製作年:2022
製作国:韓国
上映時間:118分
映倫:G

 

配給:ショウゲート  


 

 

物語。

1654年、朝鮮王朝時代の都。
盲人だが優れた針術の実力を持ちつつ、ある秘密を抱えるチョン・キョンスは、心臓病の弟と二人きりで暮らしている。
チョンは心臓病の薬のために、金を稼ごうとするが、なかなかうまくいかない。
あるきっかけでオウィ(御医)のイ・ヒョンイクから重用される。
その頃、清国に人質となっていたソヒョン(昭顕)セジャ(世子=王子)と妻カン嬪が、8年ぶりに帰国する。
残されていた10才の若君ソクチョルの喜びは頂点。
王のインジョ(仁祖)は、体調が優れず、息子を迎える気力がなく、チェ領監の力が増してきており、若き妃ソヨンも心労が絶えない。
ある夜、キョンスはソヒョン世子の治療に呼び出される。

 

 

主演は、『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』のリュ・ジュンヨル。
共演に、ユ・ヘジン。

 

監督は、本作が長編デビューとなるアン・テジン。

2023年の第59回大鐘賞映画祭で新人監督賞・脚本賞・編集賞、第44回青龍映画賞で新人監督賞・撮影照明賞・編集賞を受賞するなど、同年の韓国国内での映画賞最多受賞を記録。

 

 

 

スタッフ。

監督:アン・テジン
PD:イ・ガンジン
原作:キム・ボヒョン、ペク・ヨンジャ
脚本:ヒョン・ギュリ、アン・テジン
脚色:パン・スイン、パク・セウォン
助監督:ムン・デヨン
撮影:キム・テギョン
照明:ホン・スンチョル
美術:イ・ハジュン((株)想像工作所)
武術:チャン・ハンスン(ソウルアクションスクール)

編集:キム・ソンミン
音楽:ファン・サンジュン

 

 

出演。

リュ・ジュニョル   (チョン・ギョンス/チョン盲人/鍼師)
チェ・ムソン     (イ・ヒョンイク(御医))
パク・ミョンフン   (マンシク(先輩医員))

ユ・ヘジン      (インジョ(仁祖)/王)
キム・ソンチョル   (ソヒョン(昭顕)セジャ(世子)/王子)
チョ・ソンハ     (チェ領相(ヨンソン)/大監)
アン・ウンジン    (ソヨン /チョ氏(王妃))
チョ・ユンソ     (カン嬪(世子の妃))
イ・ジュウォン    (ソクチョル(若君))

キム・イェウン    (ソ尚宮(サングン))
チョン・ソグォン   (ネグミジャン(内禁衛将))
リュ・ソンヒョン   (先輩 医員)
キム・スンテ     (大臣1)
シン・ムンソン    (ウスンジ(右承旨))
アン・ソンボン    (清国 使臣)
ムン・スンベ     (大臣2)
キム・イングォン   (ネグミジャン(内禁衛将)ピョルガム(別監))
キム・チェウォン   (チェ尚宮 (サングン))
キム・ドウォン    (キョンジェ(卿宰))
ヤン・ヒミョン    (医員1)
カン・ジンフィ    (先生)
パク・ヒウン     (毒薬 キミ(気味)尚宮(サングン))
キム・セッピョル   (エジョン 内医女)
キム・ジェヒョン   (エジョン ピョルガム(別監))
リュ・ソクホ     (幼いネイウォン(内医員)1)

 

 

『梟 フクロウ』を観賞。
17世紀朝鮮、盲目鍼師が王子の怪死の目撃者となり、窮地に陥るサスペンス・スリラー時代劇。
朝鮮王朝に残された、七つの穴から血を流す怪死の謎を基にした創作史劇。
シンプルに面白い、まさにエンターテインメント。歌も踊りもギャグもなしですけど、ハラハラドキドキのほっこりさめざめ。しかも、ただただヤッタゼにならない大人の苦みのあるのがたまりません。
もうね、脚本がかなりいいのよ。(大きな穴が一つあるが、大きいゆえに”あえて”の可能性高いけど)
盛りだくさん要素、歴史もの、ミステリー、アクション、病気、人情、夜がメイン、とどっぷりとあるのに混乱しない。
構成も前半と後半でギアをまるっきり変えて、映画2本分の内容をぎゅっと2時間にしている。
前半はじっくりと鍼師のサクセスストーリーと宮廷お仕事もの、後半はズバンと大きな秘密と政権争いと命がけのサスペンスで一気呵成に駆け抜ける。
そこに、刺さるある一つのアイディアで映画全体を貫く。これがもう映画的でシビレちゃう。中心のアイディアはちょっと前のインド映画にもあったので目新しくないのだけど、そこに革新的なひねりが加わえたのが発明的。
ソレをガッツリ使い倒しつつ、ソレに甘えないで他にもタップリ面白い要素を入れてるので、相乗効果を生み出している。
観たらミステリーの要素は薄いとも思うでしょうけど、実はある別の部分がミステリーの一つとして組み込まれていて、ヒントもいくつもあって、かなりうまい。
韓国で、2023年のサプライズ大ヒット(年間第6位)と国内最多受賞記録を打ち立てた。
監督(共同脚本も)のアン・テジンは今作で51歳にして監督デビューを果たし、高い評価を得た。助監督(『王の男』など)で鍛え上げた手腕で、娯楽要素を盛り込みまくりながらも淀みなく交通整理した語りを成し遂げている。早いし、映像的な説明もたまにさらっとしてるので、次回作で、こなれているかどうかも楽しみなほど期待。
おいらの重視する、脇キャラの描き方もなかなかよいのよ。ただ2時間なので、その部分はかなりダイジェストっぽい。もうちょっと描いて欲しかったなぁ、ともっとを求めちゃうぐらいには。
キャストは少々ばらつきがあるけど、そこも娯楽要素として配置したのだろうと思えるので、許容範囲。
盲人部分も手抜きなしでリュ・ジュニョルがヒーローにし過ぎない生きて生きた心優しき弱き市井の人を存在させている。なんといってもユ・ヘジンがコミカルさを封印し、さらに深みを掘り下げていて、驚愕。子役(イ・ジュウォン、リュ・ソクホ)のうまさは今回も唸らされる。
音響設計がいい。
場面設計がいい。
撮影がいい。
夜がちょうどいい暗さ。洋画的な暗さではない、アジア的なほの暗さ。それは盲目者の気持ちにも近づけるし、緊張感も盛り上げる。それと、ある視点を見せるときも適度でバッチリ。こういう言い撮影を浴びるのは映画ならではですからね。ここをないがしろにしてないのが良い。やっぱ光と影の部分を一番長く浴びるからね。映画館で見る楽しさに直結するもの。
後半の面白さは、ここ数年のサスペンススリラーの中でもかなり上位の出来と太鼓判押せます。
力の持つ意味を3つの角度(王族と役人と市民)で見せる、攻撃と治療と痛痒が連環する一本。

 

올빼미', 그날 밤에는 무슨 일이…8인8색 캐릭터 포스터 < 영화 < 기사본문 - SPOTV NEWS

そうそう、日本版のポスターはちょっと『マリグナント』っぽいけど、実際にあるシーンだしね。
韓国版の方は劇中の要素を端的に表しているけど、チョット難あり。
日本版の方がインパクトはあるか。



韓国映画…リュ・ジュンヨル「올빼미フクロウ」 | アンチエイジングにINFINITE

日本公開決定の映画『梟―フクロウ―』が今年で25冠達成!大衆性と作品性で“断トツ” - ライブドアニュース

2/9~【劇場公開】韓国映画「梟ーフクロウー」のあらすじ、キャスト、受賞歴、視聴方法など | 韓国エンタメ広場

 

 

受賞歴。

2023年の第59回 百想芸術大賞にて、 作品賞、新人監督賞、男子最優秀演技賞(リュ・ジュニョル)
2023年の第43回 韓国映画評論家協会賞にて、新人監督賞、男優主演賞(リュ・ジュニョル)、撮影賞
2023年の第43回 黄金撮影賞授賞式 最優秀作品賞、監督賞、撮影賞 金賞、最優秀男優主演賞(リュ・ジュニョル)、最優秀助演男優賞(チェ・ムソン)、照明賞
2023年の第59回 大鐘賞映画祭にて、新人監督賞、脚本賞、編集賞
2023年の第44回 青龍映画賞にて、新人監督賞、撮影照明賞、編集賞
2023年の第28回 春史国際映画祭にて、主演男優賞(リュ・ジュニョル)、新人男優賞(キム・ソンチョル)、新人監督賞、脚本賞
2023年の第10回 韓国映画制作家協会賞にて、脚本賞、編集賞、音響賞(パク・ヨンギ)

 

 

 

 

 

ネタバレ。

現在では、ソヒョン世子は、元々、清の頃からひどい病気だったので、その病気を抱えたままの帰国で死去したというのが定説だそう。
その治療に鍼師が治療に当たったということらしい。
仁祖王とソヒョン世子が対立していたのも史実とのこと。
仁祖王は心神耗弱をとなり、最終的に病(マラリアではないかという説有り)で死亡したとの説が有力だそう。

 

最後、心臓病の弟の話がきちんと描かれないのは、「一人になってしまい死んだ」という厳しいことなので、あえて省略したのかも。
最後、キョンスがああいう目に遭ってさえ、死が近いであろう王に、人前で直に手を下したのは、弟の復讐からだとも考えられる。
それか、最後、島流しで受付していたのは弟だったりするのかしら?

最後に、王のそばにもう一尾呼ばれるのは、権力を失ったものの悲しみもあるが、ほかの権力者の意向で、とにかく連れてこないとならなくなったと見た方が映画のトーンと合う。
周りの者がギョンスの素性を知ったとしても、あえて目をつぶって呼んでしまったのだと。

暗いところでだけ、目が見えるという映画的なアイディアがこの映画の白眉。
わずかに目が見えるが見えないふりをしている、ということが劇中で不利にも有利にもテーマ的にも活かされている。
「弱いものは見えないふり、聞こえないふりをする」という言葉は何度か繰り返される。

原作というクレジットがあるが、どうも、元は小説ではないのかがわからない。


 

暗闇でしか見えない。
それ、映画がじゃないか。

 

 

 

 

 

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