で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2166回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『殺しを呼ぶ卵』 【最長版】
巨大養鶏場で夫の妻への愛憎を通し、資本主義社会の非情と世の虚無を描くサスペンス・スリラー。
主演は、『男と女』などの名優ジャン=ルイ・トランティニャン。
共演は、『わらの女』のジーナ・ロロブリジーダ、『キャンディ』のエバ・オーリン。
監督は、『情無用のジャンゴ』で知られるイタリアの鬼才ジュリオ・クエスティ。
1968年の初公開時に世界配給された国際版ではカットされた残酷描写などを含む【最長版】を、2022年12月より劇場公開。
物語。
60年代イタリア。
ローマ郊外にある巨大養鶏場。
社長マルコは業界の名士として名を知られていたが、経営の実権と財産は妻アンナに握られていた。
彼は、妻に満たされぬ思いを娼婦相手に発散する変態的な嗜好を持っていた。
しかも、同居しているアンナの10代の姪ガブリと愛人関係にあった。
やがて3人それぞれの隠された欲望が暴かれていく
脚本:ジュリオ・クエスティ、フランコ・アルカッリ
出演。
ジャン=ルイ・トランティニャン (マルコ)
ジーナ・ロロブリジーダ (アンナ)
エヴァ・オーリン (ガブリ)
レナート・ロマーノ (ルイージ)
ジャン・ソビエスキー (モンダイニ)
クレオフェ・デル・シレ (娼婦)
ビアジオ・ペリグラ (受付)
ジュリオ・ドンニーニ (ホテル支配人)
アルド・ボナマーノ (警部補)
マルゲリータ・ホロヴィッツ (マルコの秘書)
スタッフ。
製作:フランコ・マラス
撮影:ダリオ・ディ・パルマ
編集:フランコ・アルカリ
音楽:ブルーノ・マデルナ
『殺しを呼ぶ卵 【最長版】』を鑑賞。
60年代イタリア、巨大養鶏場の社長が妻への愛憎をこじらせるサスペンス・スリラー。
とにかくアバンギャルド
1968年の作品をリバイバル。だが、国際版ではカットされた残酷描写を含む【最長版】を初公開。
監督は、『情無用のジャンゴ』のジャッロを切り開いた一人ジュリオ・クエスティのやりたい放題。
やりたい放題の飛べない羽ばたきに足を与えるのは、『男と女』などの名優ジャン=ルイ・トランティニャンが、その演技でこの螺旋階段のようなキャラを歩かせる。千鳥足にさせるのは『わらの女』のジーナ・ロロブリジーダと『キャンディ』のエバ・オーリンの華やかさと傲慢。
そこにあるのは、金と法の資本主義の教え。
そして、嫌悪とその狂気を代弁する品種改良のブロイラー。
鳴り続ける音楽は、まさに60年代の熱狂を映したよう。
その奥で、悲鳴と鳥の鳴き声が響き続ける。
イタリアの血塗れジャンルと言われつつも今もリメイクされたりするように、ジャッロは意外とストーリーもしっかりしてるのよね。今作も定番な内容で〇〇譚とくくれる内容。
それを編集と映像でケレンケレンで楽しませたいか、こう見せたいか分からない盛り具合。考察しちゃいたくなる謎シーンもけっこうあるしね。
妙にクセになる。珍味なので、苦手って人もいるでしょう。
だけど、今回リバイバルしたのも日本の配給会社の人が探し続けてようやくってことだそうですよ。だからこその初公開の最長版。
50年以上前の作品ですが、現代に通じるプレッシャーの話なので、身につまされる。
独特の色合いといまはなかなか聴けない音楽ジャンルがビンテージ感。
当時の生々しさにある道具立ても今はなかなか見れませんよ。ある意味ドキュメンタリー。
なのに、ユーモラスを受け取っちゃうとこが新鮮。
時代物の生卵という矛盾。
イタリア時間旅の気分にさせてくれる鶏作。
おまけ。
原題は、『La morte ha fatto l'uovo』。
『死が産んだ卵』。
英語題は、『A CURIOUS WAY TO LOVE』、『DEATH LAID AN EGG』。
『好奇心旺盛な愛し方』、『死産卵』。
1968年の作品。
製作国:イタリア・フランス合作
上映時間:105分
映倫:PG12
初公開時の配給:東京第一
2022/12/02のリバイバル 【最長版】の配給:アンプラグド
ネタバレ。
自業自得。因果応報。