で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1987回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『レイジング・ファイア』
正義を貫く刑事たちと警察に復讐を貫く元刑事たちがぶつかるクライム・アクション。
主演は、ドニー・イェンとニコラス・ツェー。
監督は、『 レクイエム -最後の銃弾-』、『新少林寺/SHAOLIN』のベニー・チャン。
ベニー・チャンは本作完成後の2020年8月に逝去。今作が遺作となった。
物語。
香港警察のボン警部とそのチームは、長年追い続けてきた凶悪犯ウォンの麻薬取引の情報をつかみ、現場に乗り込む作戦を今夜に控えていた。
いよいよ作戦決行の時を迎える直線、ボンのチームは外されてしまう。
警察の網をかいくぐり、現場から大量の麻薬が奪い去られる。
捜査線上に浮かび上がってきたのは、かつてボンを慕っていた元エリート刑事ンゴウとその部下たちだった。
ンゴウは4年前のある事件によって運命を狂わされていた。
脚本:ベニー・チャン、ライアン・リン、ティム・トン
出演。
ドニー・イェン (チャン・ソンボン警部)
ニコラス・ツェー (ンゴウ)
チン・ラン (ボン警部の妻)
パトリック・タム (ボウ)
ケニー・ウォン
ディープ・ン
ジーナ・ホー
アンガス・ヤン (チョウ・ニン)
ブルース・トン
ユー・カン
トニー・ウー
レイ・ルイ
サイモン・ヤム
ベン・ユエン
ベン・ラム
ロー・ワイコン
カルロス・チェン
スタッフ。
製作:ベニー・チャン
製作総指揮:アルバート・ヤン、エドワード・チェン、チェン・イーチー
撮影:フォン・ユンマン
編集:クラン・パン
音楽:ニコラ・エレラ
アクション監督:ドニー・イェン
アクションコレオグラファー:クー・ヒンチウ、谷垣健治
『レイジング・ファイア』を鑑賞。
現代香港、正義を貫く刑事らと警察に復讐を貫く元刑事らがぶつかるサスペンス・アクション。
ガンアクション、カーアクション、スタント、集団戦、タイマンバトルと香港アクションてんこ盛りでありながら、二人の主人公をきっちりと描き出す。職務と正義の天秤の上で揺れる男たちはそのまま香港の姿に重なる。
ドニー・イェンとニコラス・ツェー、15年ぶりの共演。
ハリウッドの金のかかったアクションをしのぐ、鍛え上げた技の素晴らしいアクションが次から次へと。特に車対バイクの最高の一つが見られます。
ナイフ対警棒のバトルは映画のアクションの伸びしろがまだまだあることを示す。
ドニー・イェンのチーム(アクションコレオグラファーは、クー・ヒンチウ、谷垣健治)が気を吐いている。
監督と共同脚本のベニー・チャンは、完成後の2020年8月に逝去し、遺作なのです。そして、最高の遺作でもある。
なにより、これが香港映画であることが重要。
中国により香港への圧力により、香港市民にとっては、正義の所在が複雑になってしまった。
警察は市民を抑圧するある意味で敵となってしまったので、香港映画のお家芸であった警察もの。そこでも警察内部の腐敗を描いてきたとはいえ、主役側を描くのが難しくなった。だから、今作もその空気がある。(2019年に脚本は出来ていたそう)
そこにあるのは、内と外の葛藤の中で、なにを信じるかを問うベニー・チャン色の葛藤の衝突に挟まれよ。
昔なら刑務所のシーンがあったとは思う。だからこそ、残っているハードさは中華映画界への牽制。そう映画自体がバトルなのだ。
打たれれば、打ち返そうとする心を繋ぐ怒作。
おまけ。
原題は、『怒火』。
英語題は、『RAGING FIRE』。
『怒りの火』。
2021年の作品。
製作国:香港
上映時間:126分
映倫:PG12
配給:ギャガ
ベニー・チャンへの献辞が捧げられる。
ドニー・イェンとニコラス・ツェーは、『かちこみドラゴンゲート』以来、15年ぶりの共演。
ややネタバレ。
『ヒート』、『ザ・アウトロー』、『ザ・タウン』、『ブルータル・ジャスティス』などの新しいアメリカンノワールの流れへ、それは元々、香港ノワールの流れだともいう思いさえ見える。そこには香港アクションがいまやハリウッドの主流の一つでもある現状へその存在感を示したというところだろう。
そして、それは韓国ノワールへも(実際、香港ノワールのリメイクもされている)告げているし、それはそのまま中国映画界へほぼ飲み込まれた香港映画界へのエールでもあろう。
これは消えかけた香港のワールの火、運命へ抗おうとする香港映画界からの一撃であろう。
EDテーマはニコラス・ツェーの作で歌。
ネタバレ。
チーム戦でもあるので、もう一人ぐらいボン刑事側の仲間にもキャラを立ててもよかった気はするよね。
ウォン逮捕でスラムへ行って、助けに来た時に、その一人であそこの都合よさがあるので。
富裕層との癒着、警察事態に腐敗の中で、正義を貫くとは、というテーマになっている。
だからこそ、最後のセリフが重い。
好みの台詞。
「負けは認めよう。だが、運命には抗う」
「あの時、お前がウォンを追っていたら、俺たちの運命は逆になっていたのか」