で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1779回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『82年生まれ、キム・ジヨン』
幼い頃から様々な場面で女性であるがゆえの被虐に塗れたある主婦の人生を通し、それが当たり前の理不尽な社会を描くドラマ。
韓国発で本国や日本のみならず、世界的ベストセラーとなった小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の実写映画化。
チョン・ユミとコン・ユが、3度目の共演を果たしている。
監督は、短編映画で注目され、本作が長編デビューとなる韓国期待の女性監督のキム・ドヨン。
物語。
みんなが感じつつも、誰も理解できない、これはあなたと私の話。
結婚・出産を機に仕事を辞めた82年生まれのキム・ジヨンは今は育児と家事に追われる忙しい日々。そして、社会の女性への抑圧に疲弊している。当たり前ゆえの無自覚なそれに削られていく。
彼女は、そのせいか、憑依したかのように別人のごとくなってしまう。だが、ジヨンにその時の記憶はない。
心配した夫デヒョンは、恐ろしくて、それを伝えることができず、精神科医に相談に行く。
原作:チョ・ナムジュ 『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房刊)
脚本:ユ・ヨンア
出演。
チョン・ユミ (キム・ジヨン)
コン・ユ (キム・デヒョン)
リュ・アヨン (アヨン)
キム・ミギョン (ミスク)
コン・ミンチョン (姉のウニョン)
キム・ソンチョル (弟のジソク)
パク・ソンヨン (キム・ウンシル)
イ・オル (ヨンス)
イ・ボンリョン (同僚のヘス)
キム・ミギョン (デヒョンの母)
ソン・ソンチャン (デヒョンの父)
キム・ジョンヨン (医師)
パク・セヒョン (高校時代のジヨン)
キム・ハヨン (12歳のジヨン)
イ・ナユン (14歳のウニョン)
ユ・ジュヌ (7歳のチソク)
カン・エシム (ジヨンの(父方の)祖母)
ウ・ジヒョン (ビョンシク)
イ・ジェイン (パク課長)
イ・ジュウォン (チョン課長)
スタッフ。
PD:モ・イリョン
助監督:キム・ソンユン
撮影:イ・ソンジェ
照明:イ・ドンファ
アートディレクター:イ・ファソン
美術:イ・ナギョム
編集:シン・ミンギョン
音楽:キム・テソン
『82年生まれ、キム・ジヨン』を鑑賞。
近現代韓国、ある主婦の人生から女性差別的な現代社会を描くドラマ。
韓国発の世界的ベストセラー小説の実写映画化。
丁寧な映画的構成で一人の女性の抑圧を焙り出す。
キム・ジヨンは韓国ではありふれた名前で、その群れから個を取り出す。
思いやりすら無自覚な差別の中にある。
チョン・ユミとコン・ユの端正がそれでもの嘆息を漏らさせる。
姉との対比が逆に苦しくもさせるのか。
整った撮影がしみじみと空気の層を見せつける。
映画の普遍性と小説の普遍性の違い。
多くのキム・ジヨンの一人に顔を与える声作。
おまけ。
原題は、『82년생 김지영』。
英語題は、『KIM JI-YOUNG: BORN 1982』。
『82年生まれ、キム・ジヨン』。
2019年の作品。
製作国:韓国
上映時間:118分
観覧基準:12歳以上 観覧可
配給:クロックワークス
受賞歴。
2020年の第25回 春史映画祭にて、新人監督賞(キム・ドヨン)、女優助演賞(キム・ミギョン)を、受賞。
2020年の第56回 大鐘賞映画祭にて、女優主演賞(チョン・ユミ)を、受賞。
2020年の第56回 百想芸術大賞にて、新人監督賞(キム・ドヨン)を、受賞。
2019年の第20回 今年の女性映画人賞にて、演技賞(チョン・ユミ)を、受賞。
「キム・ジヨン」は、韓国でかなり多い名前だそう。
日本だと「佐藤ゆうこ」とかですかね。
日本版のキャッチコピーは「大丈夫、あなたは一人じゃない」は「大丈夫」が余計な気がした。
ネタバレ。
原作小説は未読。ただ、映画後に少しパラパラと見たのと、ネットでの解説を読みました。
なぜなら、ネットを見ると、原作との違いに納得いかない人の意見が多かったから。
それを見ると確かに映画の描写にいきり立つのもわかる。
ただ、映画は、小説が持つ、多くのキムジヨンではなく、一人の女性キム・ジヨンという事例を見せた感じで、女優が演じるがゆえに、希望あるパラレルワールドの一つを描いたようにも見える。本国韓国でも評判がよかったりするしね。
女性監督でなかったら、改変は許されただろうか?
原作らしきものを書き始めるラスト。
作品に昇華することが社会への告発が始まったととれなくもない。
でも、日本ではキム・ジヨンの子供時代のような『はちどり』が同時期というのもあるよね。
あれの出来が良すぎるのだもの。
それにしても、『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『トガニ 幼き瞳の告発』、『密偵』、『サスペクト 哀しき容疑者』、今作とコン・ユはあらゆる地獄を訪れる。