菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

ドープ・インパクト! 『ドント・ルック・アップ』

2021年12月19日 00時00分32秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1981回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 


『ドント・ルック・アップ』

 

 

 

学生と二流天文学者が、地球壊滅クラスの彗星接近を発見するSFコメディ・サスペンス・ドラマ。

 

主演は、ジェニファー・ローレンスとレオナルド・ディカプリオ。
共演は、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、タイラー・ペリー、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデ、ヒメーシュ・パテル。

 

監督・脚本は、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、『バイス』のアダム・マッケイ。

 

 

物語。

近未来アメリカ、天文学部大学院生と二流天文学教授が、地球に向かっている巨大彗星を発見する。
恐竜が滅びた時よりもでかい彗星は、半年後に地球にぶち当たる。
二人は、この脅威を政府に訴える。
だが、彼らの意見は、スキャンダルの渦中で選挙を控える大統領に、まともに取り合ってもらえない。
だって、人類滅亡なんて、いままで南百回も言われたけど、結局、滅びてないんだもの。
そこで、彼らはマスコミ暴露することで、世間を動かそうとする。

原案:アダム・マッケイ、デヴィッド・シロタ
脚本:アダム・マッケイ

 

 

出演。

ジェニファー・ローレンス (ケイト・ディビアスキー)
レオナルド・ディカプリオ (ランダル・ミンディ博士)
ロブ・モーガン (クレイトン・“テディ”・オグルソープ博士)

メリル・ストリープ (ジャニー・オルレアン大統領)
ジョナ・ヒル (ジェイソン・オルレアン首席補佐官)
ロン・パールマン (ベネディクト・ドラスク大佐)
マーク・ライランス (ピーター・イシャーウェルCEO)

ケイト・ブランシェット (ブリー・エヴァンティー)
タイラー・ペリー (ジャック・ブレマー)

メラニー・リンスキー (ジューン・ミンディ)
ロバート・ラドシア (エヴァン・ミンディ)
コナー・スウィーニー (マーシャル・ミンディ)

ティモシー・シャラメ (クエンティン・ユール)
アリアナ・グランデ (ライリー・ビーナ)
スコット・メスカディ (DJチェロ)
マイケル・チクリス (ダン・ポーケティ)
ヒメーシュ・パテル (フィリップ)
トメル・シスレー (アドゥル・グレリオ)

ポール・ギルフォイル
ロバート・ジョイ

 

 

スタッフ。

製作:アダム・マッケイ、ケヴィン・J・メシック

撮影:リヌス・サンドグレン 
編集:ハンク・コーウィン
音楽:ニコラス・ブリテル

 

 

『ドント・ルック・アップ』を鑑賞。
近未来アメリカ、天文学部学生と二流天文学教授が地球破壊彗星を発見するSFコメディドラマ。
アメリカお得意の地球滅亡の危機に立ち向かうはずが……というSFブラックコメディのはずが、このご時世を映し、妙にリアルな物語になっている。キレキレの皮肉に笑いながら背筋が寒くなる。もはやホラーと肩を並べる。
いうなれば、『日本沈没』の地球規模版コメディ。現代の現実を切る脚本に感情をあるあるといいながら、ぐらぐらさせられます。アダム・マッケイの筆とメガホンは正攻法で伝統の滅亡大作を語り上げている。現代の『博士の異常な愛情』ともいえる作品に仕立て、当代最巧のムービーストーリーテラーとなったと言っても過言ではない。奇人ではなく普通の偉人を描き上げ、知識層を扱いながら平たい語りを成し遂げているのだから。
なんといっても、NETFLIX作品史上最大の二桁の豪華キャストが売り。
ジェニファー・ローレンス、レオナルド・ディカプリオ、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、タイラー・ペリー、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデ、ヒメーシュ・パテル。
特に、レオナルド・ディカプリオのキャリアでも最も地味でその演技の巧さを見せつける二流教授の普通ぶりがたまりません。普通のままスターになるという境地に痺れますぜ。
女優陣は全員が人間味たっぷりで惚れ惚れしちゃいますよ。
主軸はあれど群像劇なので、話は盛沢山ですが、混乱もほぼ無し。
撮影も名手リヌス・サンドグレンでしっとりとクラシカルさとテカテカの嫌味っぽさがヌケヌケと同居。
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』でスタートしたキャリアで、デビッド・リンチや近年のテレンス・マリックも手掛けるマッケイの鋏ともいうべきハンク・コーウィンの編集もビリビリ鋭い。
『ディープ・インパクト』を見ていると、構成が似ているので笑いが増えます。「ドープ(Dope=ヤバイ、おバカ、麻薬常習者、)・インパクト」って感じ。
そして、あの世界の終わり映画2作も参考にしてるんじゃないかな。
にしても、人はどうして他人の話を聞けないんでしょうね。
現代的なコミュニケーション不全を描き出します。
映画館で上を見上げる楽しさに浸り、感想を伝える相手もいない終末じゃない一抹の寂しさを覚える星作。


 

 

おまけ。

原題は、『DON'T LOOK UP』。
『見上げるな』。

 

2021年の作品。

製作国:アメリカ
上映時間:145分
映倫:G

 

Netflix映画で、今月から配信されます。
配信に先立ち、劇場でも公開。

 

 

2019年11月にアダム・マッケイが脚本・監督・製作を担当すること発表された。
2020年2月、Netflixがパラマウントから本作を買い取った。
最初の脚本が完成後、マッケイはディカプリオとアイデアを出し合い、脚本を修正。最終的にディカプリオが契約するまでに4〜5ヶ月を費やした。
ケイト・ディビアスキー役は、ジェニファー・ローレンスに当て書きされた。

2020年4月に撮影開始予定だったが、コロナ禍で延期され、2020年11月に撮影開始し、2021年2月に撮影終了。

 

 

 

 

 

ネタバレ。

ハンク・コーウィンが、テレンス・マリックとの仕事で伸ばしてきた技法が活きている。
自然や人間の世界をシーンの合間に挟み込むことによって、この映画のテーマと愛しさと美と惜別を浮かばせ、映画ならではの語りにしている。

 

エンドクレジットでの、その人を象徴する小物で語るのもいいよね。

 

BASHが、ブロンテロックまで予測で来ていたなら、けっこう早い段階で、彗星で死亡するという人がいっぱい出てたろうな。

BASHは、ブッシュへの皮肉も入っているのかしら。

 

参考にしたと思しき彗星映画2作はラース・フォン・トリアの『メランコリア』とディザスターパロディの『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』。
前者はスーパースローによる彗星落下表現やポスターのヴィジュアルが似ているし、鬱病の寓意になっている。後者にジョナ・ヒルはメインキャストで出演で、今作以上の数のオールスターキャスト。
そもそも災害映画はオールスターキャストでお祭り的にという定石を踏襲している。前者もけっこうオールスターキャストだったりするし、もちろん、今作も。
加えて、アメリカのディザスター映画は宗教的な神話をなぞることが多いのだが、今作も多分に漏れず、それをなぞっている。
その意味で、3作ともに、最後の晩餐映画といえる。

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (denkihanabi)
2021-12-31 18:19:28
Netflixで見ました。面白かった。「マネー・ショート」と「ヴァイス」しか見てないと思いますが、この監督のテンポのいい語り口は気持ちいい。ドライなのが好きなので。最近のアメリカのドキュメンタリーもこういう感じのがありますね。「RBG最強の85才」とか。そういうのを見るとうまいなーと感心しています。レオナルド・デカプリオ、この人も上手いね。トム・ハンクスと間違えそうだった(笑)。
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ルック・アップ (ひし)
2022-01-01 07:29:03
>denkihanabiさん

サタデーナイトライブの作家でしたから、飽きさせたくないんでしょうね。
初期の映画もけっこうベタでアナーキーでよいですよ。
返信する

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