一期一会

日々是好日な身辺雑記

「スパイはいまも謀略の地に」ジョン・ル・カレ

2020年10月09日 | 日記
ジョン・ル・カレの最新作「スパイはいまも謀略の地に」を2日間で読み終えた。
ル・カレのスパイ小説はプロットが複雑で、前に遡って読み返したりするので、時間もかかるが、この本は冷戦期の諜報戦を題材にしたスマイリー3部作と比べると、筋立てがシンプルだったので読み進め易かった。
ル・カレの新作としては2年半振りとなり、1ヶ月前に日経新聞の書評を見て図書館に予約したら3人目となり、思いがけず早く手に取れた。新作でも日本の人気作家と比べると圧倒的に予約が少なく、私の後には1人だけだ。ル・カレは好きな海外作家の1人で新作が出ると直ぐに読むが、なにせ89歳という高齢なのでいつまで新作が読めるか。

イギリス秘密情報部(SIS)のベテラン部員ナットに引退の時期が迫っていたが、新しい任務として対ロシア活動を行う部署の再建を打診され、やむなく承諾する。
そしてコードネーム(ローズバッド)と呼ばれる、ウクライナ人の新興財閥のロシアへの怪しい資金の流れを探る作戦を指揮する。
バトミントンを趣味とするナットが、スポーツクラブでエドという若者と知り合う。反Brexit、反トランプを語るこの若者に違和感を感じながらも、バトミントンの対戦を通して少しずつ親しくなっていく。
そんな中、ロシア人亡命者から近いうちにロシア人大物スパイがイギリスで活動するとの情報がもたらされる。そこから色々な手を尽くしての諜報活動が行われるのだが、最後にナットはイギリスの諜報機関を裏切るような決断を迫られる。

読後感は、ル•カレの本にしては読み易かったなぁ、というものだった。
東西冷戦下での諜報戦を書いたものではなく、Brexitの時期を背景としているので、冷戦期のような緊張感は伝わらないが、登場人物の言葉として語られる汎ヨーロッパ主義や反トランプや反プーチンはル•カレの思いでもあるのだろう。

ロシア人亡命者の言葉として「トランプが何か知ってるか?あれはプーチンの便所掃除人だ。あのちびウラジが自力で出来ないことを、代わって全部やっている。ヨーロッパの結束に小便をかけ、人権に小便をかけ、NATOに小便をかける。クリミアとウクライナは神聖ロシア帝国のもの、中東はユダヤとサウジのものだと我々を説得する。世界秩序などくそくらえだ」と、トランプのゴールデンシャワースキャンダルにかけたのだろう。
また「トランプは完全に空っぽで、生まれも育ちもギャングだ」とも言わせている。

この本がシンプルなストーリーでも事実は小説より奇なりで、ロシアがドイツやイギリスでロシア人亡命者の暗殺を行なっているのは、周知の事実で今もドイツで裁判中である。
そして最近のロシアのナワルヌイ氏の暗殺未遂など。
この本では「プーチンは生まれた時から民主主義というものを知らないで育っている」とも。




そんなトランプのこの一週間は前にも増して史上最低最悪の大統領振りだった。
NYタイムズに750ドルしか税金を納めていない事を暴露され、バイデンとの討論会では相手の発言を遮り非難した挙句に、自分に投票された用紙が川に捨てられたと、根拠と証拠を示さず話すという一国のリーダーとしての品位、理性、知性を感じさせられないものだ。
そして先週末には本人がウィルスに感染し、側近も感染するというホワイトハウスがクラスター化している。そして入院からまる3日での退院については報じられている通りだ。
退院と同時にビデオメッセージをTwitterに投稿したというので、削除していたTwitterをインストールし直した。そこには映画さながらにバックグランドミュージックにのせて、ヘリコプターがホワイトハウスに降下し、トランプが出てきて階段を上り、バルコニーから敬礼するという映像だった。
何台ものカメラを使ったカット映像の編集で、撮り直しをしている様子を写真でとられている。
金正恩が白馬に跨がり駆けるというプロパガンダ映像を思いだし、不愉快になりインストールし直したTwitterをまた削除した。
いずれにしても11月3日の大統領選挙以降もこのお騒がせ男から目が離せない。
色々な手を使って大統領の椅子に座り続けようとするだろうから。

2ヶ月前にプライムニュースで木村太郎がトランプの圧勝を予想していたが、現在の予想を聞いてみたいものだ。



昨日はNHK BSで10:00からのマイク・ペンスvsカマラ・ハリスの副大統領候補の討論会を見ていた。今回の両大統領候補が74歳、77歳と高齢なことから次期大統領の可能性もあるので興味を持って見ていた。先週の30日のトランプvsバイデンの討論会は登山中で見れなかったのと、実況放送があるのも知らなかったので録画もしていなかった。
トランプのなりふり構わぬ挑発的なもので内容がなかったらしいが、エンタメとしては面白かったかもしれない。

昨日の討論会は色々な面で興味深いもので、こういうディベートも有りなんだなぁと思った。司会者の質問に直接答えず、はぐらかすという高等テクニック?のような手が目立った。ペンスはトランプがオバマケアを廃止し、既往症のある国民への医療保険の提供はどうするのかとの質問に答えず、人口中絶の廃止の是非についても回答しなかった。
キリスト教福音派の信仰に従い明確に反対の意見を述べると思っていたが意外だった。
気候変動についてはカマラ・ハリスは即パリ協定に復帰すると言ったが、ペンスは回答を避けた。
両者とも答えなかったのは、高齢の大統領が執務が出来なくなった場合の事を話し合ったかとの質問だった。まぁこの質問には答えにくいのは理解できる。
カマラ・ハリスはペンスからのバイデンが勝てば最高裁判事の定数を増やすのかとの質問には明確に答えなかった。

全体的にはカマラ・ハリスは2年前にボストン旅行中にTVで見たカバノー最高裁判事候補へのような舌鋒鋭い追求は抑え気味にしながらも、ロジカルに攻めていた。
ペンスはトランプの失点をカバーするのに苦労して、得点をあげることは出来なかった。そして1番印象に残ったのは、白髪のペンスの頭にハエが止まり続けたことだ。
これはトランプ側への不吉な兆候かもしれない。

今週末は台風の影響で大雨となるらしいので、録画してあるこの番組をまた見てみよう。

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