一期一会

日々是好日な身辺雑記

謀略法廷/ジョン・グリシャム

2012年09月23日 | 日記


今日は一日中秋雨の降る肌寒い日だった。一週間前には北八ヶ岳下山に汗を流していたのに、
季節は確実に秋に向っているようである。こんな雨の日は読書でも、ということで
先週から読み始めていたジョン・グリシャムの「謀略法廷」下巻を読んで過ごす。
三連休の北八ヶ岳行きや、今週金曜日に外部の試験があり、その泥縄式勉強等で上巻を読み終えてから一週間程間を空けてしまったが、その面白さはさすがグリシャムという本だった。

最初の1ページが陪審評決の場面から始まるという展開で、この裁判はどんな裁判なのだろう?
陪審評決はどうでるのか?というように、一気にこの本に引き込む。
読み進めていくと30ページ辺りになって損害賠償金4,1001万ドルでの原告側の勝訴という場面になる。
そしてこの裁判が大手化学会社クレイン社を相手どってミシシッピー州ボウモアの町民が起こした訴訟だということが分かる。
クレイン社の有毒廃棄物の不法投棄により町の水系が汚染され、それが原因と思われる癌患者が群発するという事案の裁判である。

この陪審評決に対し、クレイン社は上訴するのであるが、これが原題の「THE APPEAL」上告、控訴になっている。
そして邦題が「謀略法廷」で、これはクレイン社が最高裁判所へ上訴すると共に、
選挙コンサルティング会社を使い、あらゆる謀略で自分達の影響下における裁判官を当選させようとするところからきているのだろう。

州の最高裁の裁判官を住民による選挙で選ぶというアメリカの司法制度は分からなかった。
ここで描かれている選挙コンサルティング会社が使う莫大な費用や、ネガティヴキャンペーンのやり方等は正に大統領選挙で行われていることなのだろう。

この小説はリーガルサスペンスに類されるものだろうが、従来の本とはちょっと毛色が違う。
法廷の場面は冒頭の陪審評決だけで、それ以外は出てこない。

原告側の弁護士夫妻が主人公と思い読み進めていくと、必ずしもそうでもない。
詳しくは書かないが、この裁判に関わる何人かの人物が主人公とも言うべき話の構成になっている。

だいたいサスペンス小説は、読み進めていくと最後はこうなるだろうという予測通りになるのだが、この本の結末は違う。

グリシャムはこの本でアメリカの裁判制度の問題を描いたのだろう。絶対のお薦め本である。