やっと10月開始のアニメを、一通り観ました。
当然、感想を…と行きたいところなんですが。
ところが、そういう気分じゃないんだな~~~。
今、私の頭の中は、季節外れの「パームシリーズ」ブームが沸き立っちゃっているから!
ふと、久々に書棚から引っ張り出し読み始めたら、もう夢中!
いや、昔から大好きでしたよ。
でも、大人になって読み返すとこれまた、いろいろとね~~。
深いわーー。
「パームシリーズ」。
獣木野生(伸たまき・改め)著の、知る人ぞ知る大長編漫画であります。
第1巻の発売は1984年!
今年、34巻が発売された大河ドラマ的作品で、忘れた頃に新刊が出るので非常に慌てたりします。
この作品を、人に説明するのは非常に難しい。
サスペンス?オカルト?社会派?そのどれもあてはまり、でもそのどれにも収まらない。
その全部の魅力を備えつつ、登場人物達の会話は常に機知とウィットに富み、ドライな作風を保つくせに、クライマックスには息が詰まるほど叙情的で詩的な描写で読む者を圧倒してしまうのだ。
うーん。あえて端的にこの作品のテーマを表わすなら、主人公の一人カーター・オーガスの義父レイフが、死の間際カーターに語った言葉を借りるのが一番かもしれない。
「カーター。人生は、しっちゃかめっちゃかな壁掛け(タペストリー)みたいだな…
神様はとてもまともな織物師じゃない…
けれどそのタペストリーはとても美しい…
蜘蛛の巣が美しい図形を描くのと、同じ理由で…そうは思わんか?カーター…」
まさに、複雑な紋様のタペストリーのように、魅力的なキャラクターがサスペンスフルで摩訶不思議で、ちょっと笑えて、でも胸の熱くなる物語を織り成していく…それが「パーム」なんですよね~~。
そ!魅力的なキャラクター!
おお、やっとその話ができるぞ・
日系アメリカ人、長い黒髪と悩めるキャラが売りの、元医者で今は探偵のカーターもいいけど、やっぱジェームス・ブライアン!
彼が最強~~!!
ドイツ系アメリカ人。白っぽいブロンドと灰色の瞳。6フィート超の長身。常人なら2,30回は死んでるようなハードすぎる過去を持つ天才でカーターの助手。
彼にはアンディという、アラブ系アメリカ人で褐色の肌に青い瞳のキラキラ天然美少年な魂の片割れがいて、24時間以上離れていると体に変調をきたしてしまうという、難儀な体質もあったりして。
なんかこう書くと安いBLみたいだけど、そうじゃない。
その証拠に、ジェームスは後にカーターの妹とちゃんと結婚することになる。
だから、そんな軽い言葉じゃ語れない、ほんとに「魂の番」ともいうべき関係なんだなー。
ただ、確かに二人はそういうこともあって、他人の目も気にせず結構ベタベタくっついてる。
いい男二人の密着がいっぱい見られて、いやーこれも確かに「パーム」の楽しみ方の一つであるには違いないかな。
このジェームス、大事な人間を守ること意外に、一切のこだわりというものがない。
何物にも執着しない。
とてつもなく器がでかく、全てを許容してしまう。
自分を付け狙う殺人鬼をも、戦い倒した後にその魂を結局彼は受け入れてしまう。
その懐の深さは、まさに底なし。ブラックホール級だ。
彼の魅力はねー、ぜひ読んでその目で確かめていただきたい!
ある意味、こんな罪な男もいないぜ!って思うね。
この物語やキャラクターの骨子は、作者が14歳の頃から出来上がっていたというから、驚かされる。
作中の時系列はけっこう頻繁に飛ぶけれど、伏線やキャラクターに一切の破綻やブレが見えないのも、それだけ長い時間をかけて練られた結果なんだろうなー。
悲しいことに、ジェームスの死も決定している。結婚後まもなく、自分の娘の顔も見ないまま28歳で死亡するらしい。
物語の本線は、カーターの妹ジョイと婚約した23歳時点で止まっていて、今展開中の「蜘蛛の紋様」では、カーターと出会う前の壮絶な少年時代が語られているところだ。
作者は自身のホームページで、物語の後書きを公開している。
ジェームスの死に直面するのは辛いけど、「グイン」みたいに途中で終わられるのはもっとイヤだよ。
限られた物語であるからこそ、その終末へ向かう1ページ毎が愛おしい。
稀有なキャラクターであるジェームスを、その最期をしっかり見届けたいと思っている。
それにしても…なんで、この作品がもっと世間に評価されなのか、不思議でならんぞ!!
初期のシリーズは、もう文庫版しか発行されてないらしいとかっ。ありえんっ。