菖蒲園で
世の中には 自分で自分の命を絶ってしまう人がいます。
「 死んだほうがましだ 」 というのが その人たちの心情なのでしょう。
つまり 生きているあいだに もうやることはなくなったということです。
自分で命を絶ったほうが この世に生きているよりも幸せだとその人が思うならば それは死んだほうがいい。
いくら生きていても 生きていることの意味を見いだせず 喜びも悲しみもなんの感情も持たずに生きているのは 生ける屍であり 抜けがらのようなものです。
ところが 不思議なことに みずからの命を絶ってしまう人が 最後に残すのは 「 先立つ不幸をお許しください 」 といいます。
「 ご迷惑をかけますが あとはどうぞよろしくお願いします 」 といいます。
多額な借金で首がまわらなくなり どうすることもできなくなって自殺する人の よくいうセリフがこれです。
一見 殊勝なセリフで 「 ああ 気の毒だなあ 」 と思う人もいるでしょうが 気の毒なのは あとに残された家族のほうじゃないですか。
「 生きているより死んだほうがまし 」 と思うのは勝手ですが 死ぬなら死ぬで迷惑をかけずに死んで欲しいです。
自分がしでかした責任を自分で背負い 果たすことができず 他人に押しつけて 「 あとはよろしく 」 とは 何たるエゴだ ・・・ と思います。