時事解説「ディストピア」

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朝日新聞の主張では慰安婦問題を解決できない

2014-06-27 00:08:02 | マスコミ批判
朝日新聞の社説より。

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慰安婦検証―問題解決の原点に返れ



慰安婦問題をめぐる93年の河野洋平官房長官談話について、
政府はきのう、作成過程などの検証結果を国会に示した。


談話の文言をめぐって日韓両政府間でかなり細かなやりとりがあり、
一部は韓国側の意向を受け入れたが、日本政府の独自の調査に基づいてつくった。
最終的には韓国側と意見が一致した――。そんな概要である。


両政府のやりとりからは、
双方とも難しい立場を抱えながら
問題を解決しようという強い意志が感じられる。



検証チームの但木敬一座長も
談話を出すことで未来志向型の日韓関係をつくろうとした」と語った。


この検証が行われたのは、日本政府が行った元慰安婦の
聞き取り調査の信頼性を問題視する声が上がったからだ。
談話の作成過程を明らかにすることで韓国を牽制(けんせい)する狙いもあったのだろう。


しかし、報告書は次のように指摘している。
資料収集や別の関係者への調査によって談話原案は固まった。
その時点で元慰安婦からの聞き取りはまだ終わっておらず、
彼女たちの証言を基に「強制性」を認めたわけではない。


安倍首相はかつて、慰安婦への謝罪と反省を表明した河野談話の見直しを主張していた。
だが、国際社会からの強い反発もあって、河野談話を見直さないとの方針に転じた。

もう談話に疑義をはさむのはやめるべきだ。


報告書は、河野談話やその後の「アジア女性基金」について、
韓国政府が一定の評価をしていたことも明らかにした。


韓国にすれば、日本側から秘密にしようと持ちかけられていたことである。
それなのに了承もなく、一方的に公表されるのは信義に反することになる。


報告書に韓国政府は猛反発し、せっかく始まった
日韓の外務省局長級協議も中断する可能性が出てきた。

また、韓国政府は「国際社会とともに対抗措置をとる」とも表明した。


慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がたとうとしている。

この間、両政府関係者やNGOなど多くの人々が関わってきた。
だが、もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済であることは論をまたない。

韓国政府に登録した元慰安婦の生存者は54人になった。

日韓両政府に、互いをなじり合う余裕はない。
河野談話をめぐって「負の連鎖」を繰り返すことなく、
今度こそ問題解決の原点に返るべきだ。


http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140621/1403331972

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この朝日新聞の社説、一見、
慰安婦側に立った見解をしているようにみえるが、そんなことは決してない。


結論部に注目してほしい。
日韓両政府に、互いをなじり合う余裕はない。
と書いているのがわかるはずだ。

これは、遠まわしに
「韓国政府は日本政府をこの件で批判するのはもうやめろ」と言っているものである。



それを踏まえて社説を読み直すと、


・両政府のやりとりからは、双方とも難しい立場を抱えながら
 問題を解決しようという強い意志が感じられる。

・談話を出すことで未来志向型の日韓関係をつくろうとした

・河野談話やその後の「アジア女性基金」について、韓国政府が一定の評価をしていた


と、あたかも当時の日本政府が慰安婦問題解決に積極的だったかのような
イメージを植え付けた文章で埋め尽くされている。


まず、河野談話に関しては、それ以前から一貫して日本政府は
国や軍は慰安婦制度に関与していないと否定する一方であり、
この報告書でも、国の関与を明記しないよう主張されている

次に、社説で好評価しているアジア女性基金だが、
これは日本政府が国家責任を認めず、金銭によって問題を解決しようとした
もので、被害者、女性団体、政府から猛反対を受け、頓挫したものである。


無論、韓国政府も例外ではない。結果的に韓国政府はアジア女性基金からの
金銭を受理しなくても済むように、政府側から現金約310万、支援団体からのも
合わせて360万の現金と、医療施設の無料サービスなどの支援を行った。

このアジア女性基金が被害者女性に基金を受け取らせようとした時に
語った詭弁が「もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済である」だった。

日本政府による謝罪や補償は無理だから、これで我慢しろ。
アジア女性基金は、そういう性質の運動だったのである。

このように、アジア女性基金それ自体が
日本政府が慰安婦問題の責任を取ろうとしない現れだったのだが、
この件について、朝日の社説では全く触れていないばかりか、
再び、この女性基金の路線で再開しろと主張してさえいる。


朝日新聞の記者たちの中では、金ではぐらかして、
表面的な賠償によって決着を付けようとする行為を未来志向だと言うのであろうか。


あるいは、「日本政府の法的責任の追及を中止せよ」と
韓国政府に問いかけるのが正しい決着のありかたなのだろうか?




安倍政権のように慰安婦問題を極力回避し、
責任を取ろうとしない態度は、村山政権から、一貫してとられてきた。

改めて言うが、朝日は批判しているようで
実際は、日本政府に路線変更するなとエールを送っているのだ。



最後に、朝鮮新報の社説を合わせて併記したい。
朝日新聞の中途半端な立ち位置がより鮮明になるはずだ。

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「歴史は否定しても変わらない」/朝鮮中央通信社論評

「河野談話」否定する日本政府非難



朝鮮中央通信社は23日、「歴史は否定するからといって変わらない」と題する論評を発表した。
その全文は次の通り。

日本政府が、日本軍性奴隷犯罪の強制性を認めた「河野談話」(1993年)を
事実上否定する「検証結果」報告書なるものを発表した



これまで、「河野談話」が外交の誤りだとか言いながらも
国際社会の顔色をうかがって公式に否定できずにいた日本が最近、
露骨に検証をうんぬんした報告書まで発表するようになったのは、
彼らの誤った歴史観の集中的な発露にほかならない。

日帝の性奴隷犯罪は歴史に空前絶後の特大型の反人倫的犯罪であって、
誰かが否定するからといって変わらない。

日帝のように侵略軍兵士の性欲充足のために20万人の朝鮮の女性と
多くの国の女性を強制連行、拉致、誘拐して性奴隷にした例は、
どの戦争の歴史のページにも見当たらない。

日帝が働いた性奴隷犯罪の重大さは、政府の関与の下に軍部が組織的に行ったことにある。

日帝は、太平洋戦争を挑発して侵略軍の戦闘士気を高めるための対策で
軍人に「性の慰安」を与えることを軍部の重要な業務の一つに規定し、担当部署まで定めた。

そうして、旧日本軍では上層から末端部隊に至るまで「慰安所」の
管理・運営システムが立てられ、その統一的な指揮、監督の下に
日帝侵略軍の性奴隷行為が行われるようになった。

中日戦争が長期化して占領地域が拡大するにつれて日本軍部は
性奴隷制度に関連する全ての問題を自らの指示によって処理するようにした。

性奴隷の連行と輸送に必要な資金も派遣部隊に直接提供したし、
渡航と現地への輸送も軍部が直接、または管轄の下に行わせた。

太平洋戦争の時期、政府首班が「軍総帥」を兼ねた事実は、
政府が日帝侵略軍の性奴隷行為に直接関与した否定できない証拠になる。

こうした事実にもかかわらず、今日、日本が性奴隷犯罪を執拗に歪曲、
否定すれば、自ら国際的孤立と政治的破滅を招くことになる。

国際世論は既に、日本が最も血なまぐさい歴史のページを破るからといって
過去に働いた悪事を消してしまうことができるのかとして、
「河野談話」否定の動きは日本に自滅の結果をもたらすであろうと警告した。

現日本政府が過去の過ちを正さないなら、その責任を次の世代に転嫁するも同然である。

日本は大勢の流れを直視し、「河野談話」歪曲・否認行為を直ちにやめるべきである。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/20140626riyo-3/

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このように、朝鮮新報の社説では、この検証が事実上の否定だと
強く批判している。朝日のように「政府は見直しはしませんと言ってます」
などと書いて、一連の動きについてフォローを入れてはいない。


また、慰安婦制度の残虐性を改めて指摘し、
決してゆがめられるものではないと批判している。

この慰安婦制度の実態への言及もまた朝日は行っていない。
つまり、国家が犯罪に関与したという記述を避けている。


よって、両者とも河野談話の見直しを批判してはいるものの、
その路線は真逆であり、朝日の中途半端な意見は右からも非難されている。


私のような左からすれば、女性基金の再開などふざけるなという話だが、
右からすれば河野談話の見直しを否定する朝日はけしからんということだ。


新聞が売れなくなって久しいが、少なくとも朝日に関しては
このどちらつかずでいるために、結果的に時の権力者に味方している
ところが、どちらの意見に立つ側からも鼻につくからではないだろうか?


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