時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

非核化宣言の裏で進む日本の軍拡

2016-04-14 00:37:02 | 国際政治
前回、前々回の記事で、すでにG7の非核化宣言の偽善性について暴いたつもりだが、
これに関して、モスクワ国際関係大学のアンドレイ・イワノフ上級研究員の見解をここに紹介したい。


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会談の目的は、全体として気高いものだった。

すべての人々にとって、もっと安全な世界へと続く道を皆で話し合い、
核兵器のない世界のための諸条件を創り上げるという立派なものだった。

会談をまとめた宣言の中で、G7の外交担当責任者達は「我々は、そうした方向に前進する」と言明し、
そうした動きを困難にしている問題があることを指摘した。

具体的には、シリアやウクライナなど
いくつかの地域の安全状況の悪化、そして北朝鮮の度重なる挑発行為である。



シリア、ウクライナ、北朝鮮という3つの地域で起きている事が、
世界の安心感を高め、軍縮を奨励するものでないことは、争う余地がない。

特に、こうした地域、さらに他の一連のホットポイントにおける緊張の真の原因を考慮するなら、
言うまでもないことだ。ついでに言うなら、その原因について、
欧米とロシアの見方は違っており、その事は、世界の安定と相互理解を妨げている。


欧米は、シリアでの出来事を「血塗られた独裁者」であるアサド大統領に対する
シリア国民の戦いとみなしているが、ロシアは、地域の一連の国々によるアサド大統領打倒の企てとみている。


なぜなら、ペルシャ湾岸のカタールからシリア領内を通じて
欧州へと通ずるガスパイプライン建設を、アサド大統領が認めないからだ。

そのため暴徒集団やテロリストを使って、アサド政権転覆を図っていると、ロシアは考えている。

さて、もう2年以上流血の無秩序状態が続くウクライナだが、
欧米は、ウクライナ人が、ロシアの影響圏に残るのを望まず、
自由をめざし汚職と闘うため「ヨーロッパへ入る選択」をしたゆえに起きたものと説明している。

一方ロシアは、そうした親西欧的傾向は実際あったが、それは一部のウクライナ人の間だけで、
そうした一部の人達が暴走し、国を分裂させ、内戦に導いたと見ている。

またロシアは、この2年間でウクライナでは逆に汚職が増え、
自由が制限された事、そしてウクライナ経済に至っては、ほぼ壊滅的な状態だ
という事をよく知っている。しかし欧米は、それを知りながら、そうした事実を認めようとしない。


さてここで、一つの問いが生じてくる。
ロシアのどこが悪かったのか、なぜロシアに対し制裁が導入されたのか?という問いだ。

また、今回広島でまとめられた宣言の中では
「対ロシア制裁を今後も続けるかどうかは、ロシアがミンスク合意を完全に履行するかどうか、
 ウクライナの主権を尊重するかどうかに直接左右される」と述べられている。

これは、明らかに狡猾なやり方だ。まず第一に、ロシアはミンスク合意を実現する事が出来ない。
なぜなら、それを守っていないのはウクライナだからだ。

第二に、ロシアはウクライナの主権を尊重しており、その侵害をたくらんでなどいない。
クリミアについて言えば、ロシアの一部であって、ウクライナの主権とはもう何の関係もない。
これはクリミアの住民自身が、真に民主主義的手段によって、自分達で決めた事だ。

最後に、北朝鮮について言えば、すべてはかなり単純だ。
世界を核実験によって脅すような事は、もちろん、よい事ではない。
それゆえロシアは、つい最近の、北朝鮮当局を非難し制裁導入を求める国連決議を支持した。

しかし、米国のような力のある大国が、介入するとか、
体制を打倒するとか言って小さな国を脅すのは、よくない事だ。


小さな国の中では、恐怖のあまり、核兵器を作り始めている国もある。
そうした行動に駆り立てた責任は、一体誰にあるのか? それは明らかだろう。

広島での今回の会議では、こうしたあれやこれやの問題に答えが出されなかった。
それゆえ核兵器のない世界という夢の実現が、近づく事はなかった。

http://jp.sputniknews.com/opinion/20160411/1941295.html
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加えて、今回の外相会議が中国に対してどのような反応を与えたかにも注目したい。
次の文章は広島宣言の直後に掲載された人民網の記事から引用したものである。


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G7外相会合がこのほど日本・広島で開催された。
会議で議論される安全保障問題の中で、西側メディアは中国関連の海上紛争に特に注目し、
東中国海と南中国海での「挑発行為」に参加各国が反対したと次々に報じた。

~中略~


日本の行動は決して偶然ではない。
近年の同国による南中国海問題へのたゆまぬ介入には、大きく次の動きがある。

第1に、南中国海での中国の合法的で理にかなった行動を非難する。
日本高官は南沙(英語名スプラトリー)諸島の島・礁での中国の建設活動について、
南中国海の「軍事化」を招くとして繰り返し批判している。

第2に、領有権主張国との安全保障協力を強化する。

フィリピンとのハイレベル往来はことのほか頻繁で、
安倍首相とアキノ大統領の会談では南中国海問題への言及が必ずある。


日本はフィリピンの軍事力を高めるため
装備面で支援することも決定した。


第3に、南中国海問題の国際化を推し進める。

日本はフィリピンが一方的に提起した国際仲裁を明確に支持しているうえ、
G7など国際的な場で機会を探っては南中国海問題を議論している。

第4に、南中国海での米国の軍事行動を支持する。
米国は艦艇や航空機を中国の南中国海海域に進入させ、いわゆる「航行の自由作戦」を実施している。

日本は米軍の南中国海巡航を支持しているうえ、
現在実施中の米比「バリカタン」を含む関連する演習への参加を望んでいる。

日本は南中国海をめぐる争いの当事国ではなく、南中国海問題への介入の背後には計算と私利がある。

日本の差し迫った課題は地域の安全保障問題で「存在感」を増すことだ。

安倍首相の現在の任期における主要課題の1つは、
第2次大戦後の束縛を脱して、日本を政治大国、軍事大国にすることだ。

日本はすでに集団的自衛権の行使を容認し、新安保法も正式に施行した。
束縛を脱した後、日本は地域の安全保障問題で役割を発揮することを急いでおり、
南中国海問題という紛争は便利な取っ掛かりとなっている。

http://j.people.com.cn/n3/2016/0412/c94474-9043225.html
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これらの指摘を読めば、以下に広島宣言の裏で非常に好戦的な動きが取られているか、
知れるものだが、加えて次の記事にも注目しなければなるまい。


G7外相会合と安倍政権に抗議、広島県民が集会とデモを実施 日本

在日朝鮮青年抗議団が米、南大使館前で抗議

実はこのサミットが行われていた期間、日米韓政府を非難するデモが行われていたのだが、
どちらのデモも無視された状態で、広島宣言は発表されたのだった。

特に在日コリアンのデモに対してはかなり陰湿な対応を取られている。


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朝鮮に対する米国と南朝鮮の侵略策動に反対し、
在日朝鮮青年抗議団が11日、米国大使館と南朝鮮大使館前で抗議活動を行った。

朝青中央・金勇柱委員長を団長とし、関東地方の朝青専従活動家ら約50人で構成された抗議団は、
米大使館前で横断幕とプラカードを掲げながら
「『制裁』と核威嚇、侵略戦争策動を中止せよ!」「平和協定を締結せよ!」「朝鮮は一つだ!」
などのスローガンを叫び、抗議文を読み上げた。


抗議団の正当な抗議行動に対し日本の警察は、
大使館前での抗議行動は認められないなどとしながら、
抗議団を強制的に解散させようとした。


また、大使館側に抗議文を伝達したいという抗議団の要求に対して、
米国大使館側は事前申請がないという理由で拒否した。

抗議文は、朝鮮の首脳部を狙った米国と南朝鮮による合同軍事演習を
朝鮮半島に核戦争の危機をもたらすものとして糾弾するとともに、
対朝鮮敵視政策を即刻中止し、平和協定締結に向けた対話に臨むよう、米国政府に強く求めた

http://chosonsinbo.com/jp/2016/04/11suk-3/
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要するに、広島宣言とは沖縄県民や在日コリアンといったアジアの紛争の被害者の言葉を
ガン無視して発表された被害者不在の声明であり、それは自国の侵略的性質をごまかすものでしかない。


アメリカは「民主主義」という言葉を巧みに操って他国への干渉行為を正当化しているが、
日本の場合は「非核・反核」というイデオロギーを隠れ蓑にして自国の権威を高めようとしている。


これについては、人民網が良い論評を書いている。


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日本はなぜ「核被害者」のイメージを作るのか?


日本・広島で行われていたG7外相会合が11日に閉幕した。
日米など7カ国外相は
各国指導者に被爆地訪問を呼びかける内容を含む「広島宣言」を発表し、現地の被爆慰霊碑に献花した。

日本はG7議長国であることを利用して被爆経験を伝え、
いわゆる「核被害国」としてのイメージを作ることで、
核軍縮と核不拡散の雰囲気を推進することを望んでいる。中国新聞網が伝えた。


日本側が発表しようとした宣言の内容について米政府は警戒し、
「加害者」としての自国のイメージが作られることを警戒したうえ、
オバマ大統領の今年5月の広島訪問についても慎重な姿勢だったと分析される。

ケリー米国務長官は日本側の願いと異なり、広島への原爆投下について謝罪しなかった。
韓国外務省も、自国の必要性を超える核物質を保有するのなら、自国と他国の安全に脅威をもたらすと強調した。

安倍政権は広島宣言を非常に重視し、G7外相会合の成果、
G7サミット首脳宣言の「核心的内容」とすることを計画してきた。


その背後には、いくつもの意図がある。

日本が自国の被爆の「傷痕」を再び示すことについては、
時勢に従い視線をそらし、世界を欺く安倍政権の行動だとの見解がある。


1つには、安倍政権は「被害者」ムードを引き続き誇張することで、
日本の核物質に対する国際社会の注目を弱めようとしている。

もう1つには、日本国民は反核意識が非常に強く、核問題で慎重な姿勢を政府に求めているため、
安倍政権はこれによって民意をなだめ、国内圧力を緩和しようとしている。

特に新安保法の正式施行および自民党の改憲計画の展開に伴い、
日本の軍事化は加速し、「核兵器製造」など右翼の発言が国際社会の注視と強い警戒を招いている。

安倍政権のやり方によって平穏であるかのように取り繕うことは難しいだろう。

http://j.people.com.cn/n3/2016/0412/c94474-9043179.html
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非核化宣言とは裏腹に、東南アジアの国々に日本の軍隊が派遣されている。

そこで私が思うのは、大日本帝国がアメリカのやり方を真似て朝鮮を侵略したように、
現在の日本もアメリカを真似て、フィリピンやベトナムを属国にしようとしているのではないか

ということだ。


つまり、今のところは軍事演習のために軍艦を派遣する程度にとどまっているが、
将来的には沖縄のように、両国に日本軍の基地を置こうとしているのではないかという懸念である。
(ちなみに日本軍の海外基地はすでにソマリアにある)


よく安保法案が施行されると、ただちに戦争が始まるかのような言われ方がするが、
米英仏侵略トリオのシリアやウクライナにおけるやり方をみればわかるように、
基本的には、侵略というものは現地の政府や武装組織の支援、自軍の派遣から始まる。

ウクライナやイエメンはその好例だろう。


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