時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

リオ・オリンピックでの北朝鮮・韓国両選手の交流

2016-08-15 00:18:30 | 北朝鮮
今回のリオ・オリンピック、意外なところで北朝鮮が健闘している。

例えば、女子卓球においては
北朝鮮のキム・ソンイ選手が日本の福原愛選手に勝利し、銅メダルを獲得した。

オリンピックというものは結局のところ、
選手を育てられるだけの資金力を持っている国が勝つようになっていて、
加えて、日本を応援しなければいけないという同調圧力があるようにも思われてどうも好きではない。


もちろん、個人的に応援したい日本人選手は応援しているが、
できることであれば、日本や中国、アメリカ、ロシアのような資本のある国ではなく、
十分な設備もなく優秀なコーチを招くだけのパワーがない途上国の選手が金メダルを勝ち取ってほしいと思う。


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北朝鮮と韓国の対立関係は、この2国からの2人の五輪選手には関係なかった。

2人は、政治は普通の人の関係に影響すべきではないと証明した。

韓国のイ・ウンジュ選手(17)と北朝鮮のホン・ウンジョン選手(27)が
試合前の準備体操のときに一緒に自撮りをし、民族的敵意と憎悪のステレオタイプを打ち壊した。

ネットユーザーは、この2人の少女の行動は、
全人類の友情を1つにして強めるという五輪の目的を最大限に反映している述べた。


http://jp.sputniknews.com/sport/20160810/2620017.html
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北朝鮮と言えば「韓国やアメリカに対してやたらと好戦的なポーズを取っている」と
私たちは日常的に刷り込まれているが、実際には米韓の強硬政策に反対しているだけで、
民衆に対してはむしろ上の記事のように友好的な関係を築きたいと願っている。


というのも、北朝鮮の理屈によれば、
「韓国に住んでいるのは同じ朝鮮民族であって、攻撃の対象ではない」からだ。


(実際、北朝鮮の弾道ミサイルはアメリカ軍に向けたものであり、
 仮に日本や韓国が攻撃されるとするならば、それは両国に存在する米軍関連施設である)


ところが、このような微笑ましい両選手の交流に対して、
またしても「北朝鮮である」というそれだけの理由でバッシング記事が書かれた。


次の文章は、それらのデマに対する
スプートニク紙のタチヤナ・フロニ論説委員の反論記事を引用したものである。


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韓国と朝鮮民主主義人民共和国、両国は、半島を2分して隣り合い
共通したアイデンティティを持ちながらも、今では全く多くの点で違ってしまっている。


しかしリオデジャネイロ五輪では、すでに長年において、政治の世界では見られないことが起きた。

韓国のイ・ウンジュ選手と北朝鮮のホン・ウンジョン選手が、
オリンピックの場で親交を結び、記念に一緒に自撮りしたのだ。



この写真は、世界中のマスコミが取り上げ、
ソーシャルネットワーク上では嵐のような議論が巻き起こり、賛否両論が戦わされた。


新聞Daily starなどは
初めて会った記念の、この何の罪もない写真が、
 北朝鮮の女子選手に銃殺にまで至る厳罰をもたらすおそれがある
」などと報じている。


新聞報道によれば、北当局は、こうした記念撮影を「祖国への裏切り」とみなす可能性があるとのことだ。

北朝鮮では、祖国を裏切れば死刑が待っている。
今回の二人の女子体操選手の行動は「死のセルフィ-」になるかも知れない。


そうした推測について、スプートニク日本のタチヤナ・フロニ記者は、
ロシア極東研究所コリア調査センターのコンスタンチン・アスモロフ研究員に意見を聞いた。
研究員は、この有名なタブロイド新聞の報道について「何の根拠もない」として、次のように続けた-


「新聞Daily starは、できるだけ多くの人に新聞を買ってもらおうと、
 あんな根も葉もない記事を載せたのだろう。あれは、北朝鮮についてのものなら、
 どんな嘘でも信じてしまう西側の読者用の明らかに全くバカげた記事だ。


 西側では、北朝鮮の高官、チャン・ソンテク氏が失脚し、
 罰として犬の餌にされたとのニュースさえ信じられてしまう。

 今回の、可哀想な女子体操選手の処刑に関する憶測も、同類のものだ。
 北朝鮮が、外の世界から見れば、大変閉鎖された国であることは言うまでもない。
 しかし韓国選手とのこうした接触について、何の処罰もされないことは明白だ。
 この写真が撮られてからもう数日が経ったことに注意してほしい。
 もし北朝鮮が、新聞Daily starが書いているような懲罰的体制を持っているなら、
 とっくに選手は祖国に送還されていただろう。でもそんなことは、起こらなかった。


質問:では逆に、韓国のスポーツ選手の場合、こうした写真を撮ったことで罰を受ける可能性はないのか?


答え:

韓国には、いわゆる国家安全保障法が存在する。
 この法律は、北朝鮮市民との正式に許可されていない接触について、非常に厳しく規制している。
 それ故、帰国後(もし罰を受けるようなことが万一あるのなら)韓国の選手にか、
 はたまた北朝鮮の選手にか、どちらが重い処分を受ける可能性があるのかは、まだわからない。

 もし、そんなことは信じられないという人がいたら、
 国家安全保障法についての内容はネットで英語で出ており、誰でも読むことができるので確認してほしい。
 北朝鮮の代表者とコンタクトしたり、写真撮影した韓国市民がどうなるか知ることができるだろう。」


韓国選手と記念撮影した北朝鮮選手は「死刑になるかもしれない」という話や、
北朝鮮の指導者金正恩氏の叔父にあたる高官が失脚し、飢えた犬たちの餌にされたとの怪情報は、
疑いなく、北朝鮮からの情報が不足している事からくるものだ。

朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮は、
なんでもありのミステリアスな国家だというイメージが勝手に作り上げられている。


この事は、現代のインターネット社会が、
無責任な憶測や検証されていない情報を積極的に垂れ流し、再生産していることの反映だと言ってよい。


http://jp.sputniknews.com/opinion/20160813/2636818.html
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実のところ、スプートニク紙もあまり他所のことは言えないのだが、
それでもなお、「北朝鮮であれば、どのような嘘を書いても罪を問われない」という
欧米およびその属国のマス・メディアの腐敗と悪質性がよく伝わる良記事だと評価できよう。



時間があれば、記事に書きたいが、現在、フィリピンの新大統領、
ドゥテルテ氏が「人権侵害」を行ったということでアメリカから攻撃を受けている。



その内容は、同氏の市長時代に市内の麻薬密売人を殺害してきたというもの。

自国の警察は黒人やヒスパニック、ムスリムに対して
文字通りの人権侵害を行っているのだが、それはそれ、これはこれということらしい。


私に言わせれば前大統領のアキノ氏こそ、典型的な汚職政治家だったが、
こちらはコテコテの親米家だったので、罪には問われないようだ。さもありなん。


イランやベネズエラも同様の「人権」攻撃をアメリカから受けている。北朝鮮もしかり。
そして、これらの攻撃にしばしば見られるのが、嘘とでっち上げであり、
政府とマスコミが結託して自国の民衆を詐欺にかけようとしているあさましい姿である。


こうした合法詐欺師たちの発言をいちいち検証していくことは骨が折れるが、
他国(特に非欧米国家)のメディアの記事を丁寧に読んでいくことで自然と確認が取れるだろう。