中国西安で奮闘する大学教師Mの日々

日本人教員として中国の陝西省西安市の大学生・大学院生に対し、「日本文化・社会」や「卒業論文」などを教えています。

中国における給与体系 大学教員を事例に

2013年06月30日 01時13分16秒 | 現代の中国社会
私は2009年より中国の大学で外国籍教員をしています。
その中で、中国における給与体系と日本のそれとの違いを感じる経験が何度もありました。

よって、今日は「中国の給与体系」に関して少し書きたいと思います。
その際、基本的に大学における給与体系に限定させていただくことにします。

中国の大学における給与は主に、

(1)基本給(月々の)
(2)各種手当
(3)ボーナス

の三つからなっています。
ここだけを見れば、日本の大学と同様であるとお感じになることでしょう。
しかし、以下の点が日本の大学とは大きく違うのです。

それは、(2)の「各種手当」に関する部分です。
中国では、この手当の中に実に様々なものが入っています。
実際に見聞きしたものをあげれば、

まず、職位給(教授給、副教授給など)、昼食手当、交通手当、法律で規定された一人っ子手当などがあります。
(なお、日本と違い「住宅手当」という手当はないのも特徴)
また、休日労働(土日や祝日の講義)の手当として休日出勤手当がつきます。
この他にも管理職、或いは、○○指導手当というのもあります。
(例えば、「卒論指導手当」など)

以上は私が知っているものだけで、この他にも様々な手当があるようです。

特に管理職として高い職位を得るほど、高額な職位手当がつくことになっていて、それが既得権益になっています。
かなり高額な職位手当が出されているケースもあるようですが、その額を他の教員は知るよしもありません。

一般的には日本の大学教員の場合、
給与大半は基本給が占め、その次にボーナス、最後に手当の額が続くと思います。
しかし、中国の大学教員は上記のように手当が多様であるため、基本給と手当が大体同じケースもあります。
或いは、手当が基本給を上回ってしまうケースもあるのかもしれません(聞いたことはない)。


このように、中国では教員によっては高額な手当が支給されるケースがあり、それは他の教員には見えません。
よって、各自の基本給は大体分かるのですが、手当を加えた額になると誰がどの程度なのか分からない場合があるのです。
そして、そうしたケースは大学の管理職として高い地位を得れば得るほど分からなくなっていきます。

さらに、上海のケースだと大学で管理職をしていない教員達は担当授業が週二日、三日程度しかありません。
管理職でない場合、中国の大学では主にやるべき仕事は授業だけです(会議が少々あるが)。
よって、管理職手当がつかない教員は、授業以外の日に別の仕事をしていたり、週末手当がつく土日にも授業をやっていたりします。
さらに大学教員をしながら、自分の会社を経営しているなどという方も珍しくありません。

ですから、上記の手当に加え、こうした通常の大学以外での仕事の収入も入れると、誰がどの程度稼いでいるかなどは想像できません。


極端な例ですが、私の知り合いの同済大学(上海)の建築学部のある教授は、

1、同済大学での仕事(上海)
2、別の大学で出張講義(広州)
3、建築デザインの請負(中国国内の各種デザイン建築)
4、不動産の貸し出し

などをこなしていると話してくれました。
特に、3の仕事例では2010年の上海万博のデザイン設計も担当したそうで、その収入は相当なものだったとか。
ですから、その教授は、

「同僚も同じような状態なので、どの先生がどの程度収入があるのかは全然わからない」

と話していました。

以上からお分かりのように、中国は日本よりも大学の給与体系が不透明な箇所が多く、そのために互いの給与がどの程度かは想像することが難しいのが現状です。
また他の仕事も兼ねている教員も多く、そうした場合にはさらに分からないということになります。


ちなみに、一般的に中国では給与をあまり気にせずに話したり、聞いたりすることが慣習となっています。
しかし、その際に話すのは基本給の額が大半であり、手当を含めた額を伝えることがないのが実態です。
分かりやすい例を一つ紹介します。
以前、学生の一人が、

「先生、温家宝さんの給与は一か月3000元も満たない額なんです」

と話してくれたことがありました。
これが事実か否かは別として、この額が基本給のみを指していることは明らかです。

中国に来て以来、私はどうして中国人が給与を平気で話したり、聞いたりするのか疑問を持っていました。
ですが、上記の中国の給与体系を考えると、基本給が“全ての給与”ではないからこそ、基本給を公言したり、聞いたりすることがはばかられないといえるのかもしれません。

実際の全ての給与を話したり、聞いたりするということは日本でも中国でも避けられるべきことと捉えられているように私には感じられます。


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