
起きがけ、ビバルディの四季「冬」を聞いた。
イムジチ合奏団、バイオリン、フィリックスアーヨ演奏の名盤である。
外の景色とマッチして「四季」の中で最も好きな楽章である。
ロックのエレキギターの曲弾に負けないパワーを感じる。
20年くらい前だったか、東京から主人の知り合いの編集者の男の人が遊びにきた。
朝ご飯を用意して、
「この景色にぴったりなんですよ」
と言って、窓から見える雪景色の中、大音声でこの「冬」をかけたのである。
40代くらいだろうか、静かな人である。
しばらくして、台所からご飯を運んだとき、その男性が泣いていてびっくりした。
わたしは、慌てて台所の方へ行った。
彼の中で、どんな物語が展開したのか分からないけれど、
バイオリンの追いかけるような、積み重なるような、激しい音の繰り返しがあり、
第2楽章のゆっくりしたメロディが、また珠玉の美しさである。
バイオリンの音色はそれだけで、悲哀を感じてしまう。
その時、わたしは言葉を交わさなかったけれど、その人と濃い瞬間を共有した気がした。
