ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

外来生物問題に見られるダメな言説のパターン

2009-08-30 23:03:41 | 議論
熊森や池田清彦達に反論してきて彼らの意見のだめなところの知見の蓄積ができてきましたので、ここに公開します。外来生物問題を語る人を見たときに判断材料の一部にでもしてください。

既存の外来生物の定義を分かっていない
“「自然との共生」というウソ”の著者である高橋敬一氏を具体例としてあげます。氏の場合、“「自然との共生」というウソ”のP99でこのように述べています。

>外国から入ってきて、なおかつその移動に人間が関与している種が外来種と呼ばれることが多い。しかし国境などは人間が勝手に決めたもので、本来ならばある地域へ他の地域から入ってきた種はすべて外来種と呼ぶべきだろう。

問題となっているのは生態学で言うところの地理的隔離や自然史が無視されているからです。べつに国境で区別しているわけではありません。日本の場合は島国のためそういった外国から来る外来種の判別が容易というだけの話で実際は琵琶湖産アユの放流など国内での移動も問題視されています。

勝手にオリジナルな外来生物の定義を作りたがる
池田清彦が典型例です。彼の場合は“外から来たもの”というくくりで自力で来た生物も人為的に来た生物も外来生物とします。また文化も外来生物などと言い出して外来生物という言葉を恣意的に使うケースも見られます。
この部分は書籍などを出している人によく見られます。皆「独創的なアイディアを出せるオレすごい!!」がやりたいのですね。

自分が作り上げた定義の論証がおざなりである
 作りたがる論者とほぼセットで見られます。自分の定義を作ったはいいが、それが既存の定義と比べてどこが優れているのか、現実のどの部分と整合しているのかということについてきちんと根拠を示して論証せずに自分の定義を使って外来生物問題を批判します。意外と博士号を取った人に見られます。科学のルールを忘れたのでしょうか。学生時代に論文くらい書いたでしょうに。

管理された外来生物とそうでないものを混同する
けっこうあるパターンです。人の管理下でのみ生育できるイネなどを持ち出して「外来生物は人の役に立つ。外来生物を廃絶するのは好くないor駆除しようなどという連中は損得計算ができない」などといった使い方をされます。実際には管理下に置かれずに暴走した外来生物や管理下を離れた場合のリスクが高いと考えられるものが外来生物問題での争点になりますから管理された外来生物を持ち出すのは的外れです。

防除は無駄と勝手に決め付ける
 防除(外来生物の拡散や増殖を防ぐこと。駆除も含まれる)は税金の無駄などと決めつけるパターンです。具体的に批判しようとすると防除で採られた方法やその外来生物の防除では努力量当たりの成果がどれくらいかなどといった相場を理解していないと有効な批判にはならないのでかなり大変です。ちなみに僕は熊森などのように外来生物対策に懐疑的な人たちがここまで踏み込んだ発言をしたことを未だかつて見たことがありません。

やがて新しい生態系がつくられるから問題ないとする
 防除は無駄とセットで見られることもあります。ここで持ち出される根拠としてはライオンとシマウマなどといった在来生物同士の関係が持ち出されます。在来生物のような関係にならないからこそ問題視されるんですけどね。これを持ち出す人に限って「私は外来生物の持ち込みには反対だ」などというケースが多いです。彼らの論理に従った場合、一度定着した外来生物はそのまま増えるにまかせ、拡散を防ぐための封じ込めや駆除などは却下されます。結果的に外来生物を持ち込んだ側勝ちの状況を作り上げているだけで外来生物の無制限な持ち込みに賛成しているのとあまり変わりません。

そしてここが一番肝心ですが・・・・・・
そもそも外来生物問題(ないし外来生物の具体的な事例)がどういうものか分かっていない。
 どうも外来生物問題というのがどのような生物によって引き起こされ、どのような影響があるのかという個別事例への知識が乏しいことが多いです。ですから本人たちは華麗に外来生物問題全般に反論したつもりでも「現実にはあなたの理屈に合わない事例がある」と具体例を持ち出されてあえなく沈没ということになります。どうもダメな論者は外来生物の事例を1つ、2つ知った程度(理解したではないことに注意)で外来生物問題全般を語りたがるんですね。個別の反論に留めておけばいいものをなぜかメタなことにまで反論したがる。ただしこうも考えられます。すなわち個別事例に具体的に反論できないから具体性が必要とされないように見えるメタな部分へ反論を行って全否定しようとするのではないかと。ただ、やっぱりメタを語るには相当の個別事例を踏まえないとあえなく反論をくらって沈没してしまうんですけどね。

僕の場合はこれらのパターンに一つでも当てはまったらその人は外来生物問題を理解していないものとみなしています。ただ、慎重を期すには上記のパターンに二つ以上当てはまっているかを目安にしてもいいと思います。二つ以上という根拠は単純に僕の経験則なのでこれを参考にするかどうかは各自で決めてください。

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