ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

それは地雷でした

2010-10-17 21:06:29 | 書籍
 先日、図書館で獣害関係の本をいくつか借りてきました。今日はそれについての簡単なレビューを。

「ニホンザル保全学」和田一雄著 農文協
参考にはなりました。ただ、参考になるとは言ってもどうでもこの本を読まなくてはならないほどの必然性は僕にはなかったです。今西が日本の霊長類学にどういう影響を与えたかは少し面白かったですけど。
僕がこの本の評価を低くしているのは、日本オオカミ協会の言っているオオカミ再導入をほぼ無検証で肯定しているからです。
オオカミは人工物に慣れやすいから住宅分布が複雑な地域でも生息可能だし、よほど特殊な条件以外、オオカミは人を襲うことは無いとか言ってますが、そんな認識で大丈夫か?(byエルシャダイ)
そもそも、そんなところまでオオカミが出てきたら大騒ぎになることが今の日本の状況を見てわかりませんかね?今年だって建物に侵入したクマが射殺されたり、ニホンザルが住宅街に出没して一騒動起こっているんですけど。ご自分が関わっているニホンザルを見ても特殊な条件がいとも簡単に満たされてしまうのがわかりませんか?
と言うか、この人も再導入の話なのにMVPS(最小存続可能集団サイズ)についてまったく触れないというのは何なんでしょうね?オオカミ再導入に肯定的な人は、なぜかここにあまり触れたがらない気がします。生息できるといっても、個体数が一定以上維持されなければ中長期的には消滅するわけで、本当に重要なのは個体数が一定以上維持できるか?ではないのですか?基本的に言っていることが「餌になるシカやイノシシがたくさんいるから大丈夫だろう」で止まっていて、獣害問題の肝であるゾーニング(住み分け)や個体群管理にまで話が進まないです。
本当にオオカミ再導入に関する本などを見てもMVPないしMVPSという単語が全く出てこないのが不思議です。今の保全生態学でそれ抜きで再導入を語るとかちょっと信じがたいんですが。
もう一つの本「ツキノワグマ」大井徹著は良書でしたので、これとは別にレビューを書きます。

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2 コメント

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Unknown (釣船草)
2010-10-18 07:12:28
またまた失礼します。
「野生化狼」の存続に関して、敢えて下卑た疑念を予防的に呈しておくならば、「狼ブリーダー」の産業化がその裏にありはしないか、と言うことになります。
あらゆる可能性、でなくとも考え安い可能性の思考を欠くというのは、意図的にスルーしている線が濃厚ですね。
野生化集団の行動や繁殖について、その推進派の想像力が狭いままであるわけないですから。
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う~ん (梨(管理人))
2010-10-19 12:29:49
釣船草さんいらっしゃいませ。

>「野生化狼」の存続に関して、敢えて下卑た疑念を予防的に呈しておくならば、「狼ブリーダー」の産業化がその裏にありはしないか、と言うことになります。

ちょっと僕にはよくわからないです。
要は、再導入には大量の個体が必要だから、それを飼育、管理する人間がいる。そこで「狼ブリーダー」の登場ということですか?
どうでしょうね?かなりの額が投入されているコウノトリやトキでも実際に飼育に関わっている職員は十人いなかったと思いますし、それほど需要があるとは僕には思えないのですが。
オオカミ再導入だったら動物園の飼育員を引き抜いてくればそれで済む気もしますが。
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