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ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

外来生物による繁殖機会の不平等

2009-03-25 21:39:31 | 遺伝的多様性
 交雑するほど近縁な外来生物が侵入した場合、在来生物と外来生物のあいだに繁殖をめぐる競争が起きることがあります。その結果、次世代に受け継がれる遺伝子に偏りが生じることがあります。これは、在来の遺伝子が消える場合もあり、遺伝的多様性が失われることを意味します。
 たとえば、絶滅危惧種シナイモツゴとモツゴのあいだでは、シナイモツゴのメスとモツゴのオスはよく交雑するのに対し、シナイモツゴのオスとモツゴのメスでは交雑がほとんど起こりません。さらに、シナイモツゴとモツゴのオスでは、モツゴの方が配偶者を獲得しやすいようです。これは、シナイモツゴのオスには遺伝子を残す機会が少ないことを意味します。遺伝子を残す機会が少ないということは、シナイモツゴのオスが持つ遺伝子は消滅しやすいということです。ですから、モツゴがシナイモツゴの生息地に持ち込まれるということは、じょじょにシナイモツゴの集団が持っていた遺伝的多様性を減らしていくということになります。

交雑問題とはなにか

2009-03-22 18:26:48 | 遺伝的多様性
 遺伝的多様性という言葉をご存知でしょうか?生物多様性を構成する3つの多様性の1つであると理解されている方はいると思います。
 では、遺伝的多様性を守るためになぜ外来生物と在来生物の交雑は問題視されているのでしょうか?外来生物と近親交配を回避するために他所から近縁の個体をもってくることの間にはどういった違いがあるのでしょうか?これらの質問にしっかり答えられるひとはあまりいないと思います。だからこそ、池田清彦のいい加減な生物多様性論モドキに流されるひとがいるのでしょう。ここでは、上記の疑問にできるかぎり答えていこうと思います。事実誤認などに関するつっこみも歓迎。
 まず、このブログで扱う交雑問題とはなにかを定義しておきます。交雑問題とは、“外来生物と在来生物との交雑に関連して起きる生物多様性を低下させる現象”としておきます。では、そういった生物多様性を低下させる現象にはどういったものがあるのでしょうか。
僕の知る限りでは、このような現象が知られています。
・異系交配弱勢
・配偶者をめぐる競争
・外来の遺伝子による在来の遺伝子の駆逐
・不妊化
・遺伝子のバランスの破壊(ただし、こちらは理論のみ)
交雑問題のカテゴリーでは、こういった現象の具体例の紹介などをしていきます。これが、遺伝的多様性について考えるきっかけになればさいわいです。