7月5日 読売新聞「編集手帳」
かつて覇権を競った米ソの指導者、
ケネディとフルシチョフは年齢が20歳以上も違った。
その2人が登場する小話を立川談志さんがはなしのマクラに使ったことがある。
「ケネディだかフルシチョフだかが、
体力で優劣を決めようてえんでマラソンをした。
当然、
若いからケネディが勝った。
翌日のソ連機関紙がこう書いたそうだ。
同志フルシチョフは健闘の末2位に食い込んだが、
ケネディはビリから2番目であったと」
勝利が当然視されたという点では東京都知事選も同じだろう。
現職の小池百合子氏が再選を決めた。
コロナ対策が主な争点となった。
有権者にすれば誰に命を預けるかの選択である。
折しも東京では投票日に向け感染者が増え緊迫の度を強めた。
陣頭指揮を執る姿が連日報道される現職に対し、
新人は不利だったろう。
五輪、
市場移転、
子育て対策…
この危機のなか1期目の信任への論戦が十分できたかと問えば、
それも心もとない。
小池さんにはビリから何番目か、
という謙虚さで再選を受け止めていただきたい。
4年前とは打って変わり、
祝福や歓喜の声が響かない静かな開票日となった。