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人通りの絶えたさびしい街の景色をもう忘れた?

2020-07-27 07:00:00 | 編集手帳

7月3日 読売新聞「編集手帳」


 閑古鳥はカッコウの古名で、
鳴き声がさびしく聞こえるためその名がついた。
<うき我をさびしがらせよかんこ鳥>と芭蕉も詠んでいる。
憂鬱(ゆううつ)な私をもっとさびしがらせよ、
とはどんな心境だろう。
教科書的な解釈とは異なる感想を、
詩人の谷川俊太郎さんが随筆に書いている。
芭蕉はカッコウの声に救いを求めたのかもしれないと。
古語「さびし」が<もとの活気ある、
望ましい状態を求める気持ちでいる意>を含むためという。
(「聞きなれた歌」)

もとの活気に戻ろうと踏み出したところに、
ショックなニュースだろう。
東京の日ごとの感染者数が100人を超えた。

感染が拡大しつつある。
小池百合子知事が記者会見で語気を強めた言葉を拾うと、
20代、
30代、
夜の街、
パーティー、
接待を伴う…
若い世代を中心に行動を慎めば、
まだ局面を変えられるということだろう。
飲んで騒いで飛沫(ひまつ)を交換する前に、
人通りの絶えたさびしい街の景色を思い出してもらいたい。

きまじめに自粛要請に従った人は隅々に及び、
小さな居酒屋のご主人などが泣く泣く閑古鳥の声を聞いたのはつい最近のことである。
もう忘れた?

 

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