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香港 急増 “脱出”を選ぶ人たち

2020-07-20 07:01:47 | 報道/ニュース

6月23日 NHKBS1「国際報道2020」


マレーシア北部のペナン島。
香港の人たちの引退後の移住先として人気だったが
ここにきて現役世代の移住も増えている。
去年 妻とともに移住したチャウさん(50)。
チャウさんは移住した後も香港のニュースを欠かさずチェック。
若者たちの抗議活動の行方を常に気にかけてきた。
(チャウさん)
「学生は自分の将来のために言いたいことも言えないのか。」
中国政府が進める「香港国家安全維持法」が制定されれば
一国二制度は崩壊し香港の自由は完全に失われると感じている。
(チャウさん)
「あす香港で何が起こるのかさえ誰にも分からず
 今の状況は非常に危険です。
 このままでは取り返しのつかないことになるし
 私たちにできることは何もありません。」
チャウさんは香港で飲食店や食品卸の会社を20年ほど経営してきた。
今でも自分の飲食店のロゴの絵を部屋に飾るほど
香港への愛着は深いという。
それでも“中国の影響力が増し続ける香港に未来はない“と
移住を決意したのである。
(チャウさん)
「いまの香港に安心感は全くありません。
 かつての香港にはもっと活気があり
 多くのチャンスがあって
 やりたいことは何でもできました。
 もう私が知っている香港ではないので帰りたいとは思いません。」
(妻 ジェシカさん)
「かつての香港は中華圏と西洋の文化がうまく融合していましたが
 今はもうその雰囲気はありません。」
マレーシアへの移住を希望する人のビザの申請を代行する会社では
いま香港の人たちからの依頼が相次いでいる。
去年の申請件数は少なくても2,000件。
一昨年の10倍にものぼっている。
10年間の長期滞在ビザの取得には
日本円で約2,500万円の住宅購入などが条件となっているため
申請するのは比較的裕福な人たちに限られている。
(ビザ申請代行業者)
「マレーシアの食習慣は香港とほぼ同じで
 生活に慣れるのは簡単です。
 香港の人は
 次の世代が良い未来を築けるなら
 香港から離れてもよいと考えています。」
生まれ故郷に見切りをつけ
マレーシアで新たな1歩を踏み出したチャウさん。
この場所で日本食の店を開こうと考えている。
新型コロナウィルスの影響で探せなかった店舗もようやく見つかり
今年秋の開業を目指している。
異国の地で新たな人生を築き上げていく覚悟である。
(チャウさん)
「マレーシアで生計を立てられるようになれば十分です。
 何かできることがあれば
 心のよりどころになります。」

(台湾 蔡英文総統)
「台湾は香港の人々へ必要な人道的支援を提供し続けます。」
政権をあげて受け入れを強化しようとしている台湾。
台湾当局によると
仕事や留学などを理由に香港から台湾にわたってきた人は
去年 約5,800人。
一昨年より40%以上増えている。
7月には香港から移住する人専用の相談窓口を設置。
仕事に就くための手続きの相談や
生活費の補助などを行うほか
香港に拠点を置く企業の移転を支援するとしている。
(台湾 蔡英文総統)
「去年の抗議デモ以降
 自由と民主主義を追い求める香港の人々の粘り強さを
 多くの台湾の人々が目にし
 共感している。」
さらに香港出身者が香港を脱出してきた人を支える動きも出ている。
今年4月にオープンした飲食店。
連日多くの人でにぎわっている。
店の名前は「保護傘」。
香港出身の経営者が“香港の人たちを守る傘になりたい”と名付けた。
従業員のほとんどが香港から来た人である。
長期滞在に必要な資格が得られるように
働く場所を提供しているのである。
店内では香港での抗議デモの様子が流れ
デモの詳細を伝える本なども売られている。
壁一面にはデモの写真とともに応援メッセージが。
抗議活動に共感する台湾の人たちも数多く書き込んでいる。
“香港に栄光あれ”
“香港人頑張れ”
台湾の同じ自由を香港にも
という思いがあるからである。
店に来ていた香港出身者は香港の状況をどう見ているのか話してくれた。
(去年 香港から移住)
「デモに参加したこともありますが
 だんだん希望がなくなっていきました。」
(香港からの長期滞在者)
「香港の状況はもっと悪化するんじゃないかとすごく心配です。」
台湾当局は
香港で抗議活動に参加し安全が脅かされている人たちの支援に力を入れる
としている。
(台湾 大陸委員会)
「香港の人たちの自由と民主を求める決意を指示します。
 台湾に来た香港の人には必要なサービスや支援を提供します。」

マレーシアや台湾の他
カナダやヨーロッパも人気がある。
日本への移住を紹介するセミナーも開かれている。
移住の他に
イギリス政府が発行する“BNQ(海外のイギリス国民)“と呼ばれるパスポートにも関心が集まっている。
これは1997年以前のイギリスの植民地時代に生まれた香港の人が取得できるもので
いざという時の保険として持っておきたいと考える申請者が急増している。
ただ移住には相応の資金が必要であるし
異なる環境で一から生活を成り立たせる覚悟も必要で
多くの人にとってはハードルが高いのも実情である。
香港選出の全人代委員は
「中国返還時も不安がって移住者した人は沢山いたが
 今は戻ってきて香港で自由に活動している。
 移住したいならすればいい。」
と話していた。
その一方で
香港の国際金融センターとしての地位を支える人たちが相次いで香港を去る事態は
香港政府も中国政府も決して望んではいないはずで
だからこそ取り締まりの対象となるのはごく少数だと強調している。
ただ中国が香港を直接コントロールできるようにするこの法律の存在自体が
香港のビジネスをビジネスを支える人たちにとって大きな不安を生むのは確かである。
ある金融アナリストは
「長期的に見て
 この法律が香港の経済に影響を及ぼすことになるだろう」と話していた。
法律が今後どのように運用されるのか
香港の将来を大きく左右すると言える。

 

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