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キンモクセイが香る、ギンナンがにおう秋

2015-10-17 07:24:11 | 編集手帳

10月11日 編集手帳

 

 終戦の8年後、
1953年に大相撲のテレビ中継は始まった。
「それからですね、
 土曜日曜が必ず『満員御礼』になったのは」。
昭和の名横綱、
初代若乃花の花田勝治さんが述懐している。

それ以前は「よく入ったときで半分そこそこ」だったという。
『昭和史が面白い』(半藤一利編著、文芸春秋)から引いた。
戦前のラジオ放送開始のときも観客が急増したと、
こちらは往年の名解説者、
元関脇出羽錦の奈良崎忠雄さんが同じ本で語っている。

観戦の疑似体験が実体験への渇望を呼び覚ましたのだろう。
書物や映画でふれた風物を求めて旅に出る人もいる。
そうかと思えばパソコンやスマホを眺めるばかりの若者もいる。
昔ながらの媒体に比べ、
実体験に誘(いざな)う働きがインター ネットは強くないのかもしれない。

先週の日曜ときょうの本紙に作家の椎名誠さんが登場している(一部地域を除く)。
先週の記事で、
ネットやテレビではわか らないものがあると話していた。
「それは、
 においなんですよ」

少し外に出るとわかる。
キンモクセイが香る。
ギンナンがにおう。
現実の世界でしか味わえな い秋が確かにある。

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