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ノーベル賞受賞 今宵はワインを・・・

2015-10-10 08:00:00 | 編集手帳

10月6日 編集手帳

 

 小紙の先輩記者に、
俳人の前川紅楼(こうろう)さんがいる。
昨年いただいた句集『火喰鳥』(文學の森刊)に好きな一句がある。
〈夜学教師いつも力みて白墨折る〉。
白墨を握る指先からほとばしる熱血が目に見えるようである。

のちの学究ぶりから想像するに、
その人も一句の先生と同じく、
白墨を折るほどの情熱家であったにちがいない。
北里大学特別栄誉教授の大村智さん(80)は、
夜間高校の教壇に立ちながら大学院に通った苦労人である。

寄生虫病の新しい治療法を発見した業績により、
今年のノーベル生理学・医学賞に選ばれた。

大学院を出たあとも、
受賞へ直線コースを歩んだわけではない。
助手の職を得た山梨大学ではワイン醸造の研究に取り組み、
そこで微生物の魅力 に引き込まれたという。
人徳だろう。
夜学の窓に映るともしびといい、
甲州の葡萄(ぶどう)畑といい、
人生の回り道に沿う風景はどれも美しい。

ワインですか? 
承知しました。
病み上がりでグラスに緩めの封印をした小欄だが、
ノーメル…もとい、
ノーベル賞の快挙となれば日本人として知らん顔はできない。
今宵(こよい)は飲まざらめやも。
酔わざらめやも。

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