10月27日 NHK海外ネットワーク
水の都ベネチア。
古い建物と水が調和した美しい町並みは世界中の人々を魅了し続けている。
しかし美しい景観に欠かせない水は人々の悩みのタネにもなってきた。
昔からこの地域を襲ってきた“アクア・アルタ”と呼ばれる高潮の被害が近年さらに深刻になっている。
被害は特に11月~2月までの冬の時期に集中している。
アドリア海の一番奥にあるベネチア。
冬の時期ここにはシロッコと呼ばれる季節風が吹きつけ波が押し寄せやすくなる。
このため大潮や気圧の変化が重なると高潮が発生するのである。
有名な観光名所 サン・マルコ広場も水浸しのありさま。
市街地が浸水する回数はこの20年で2倍に増えている。
高潮の被害増加の背景には地球温暖化による海面の上昇がある。
さらに地下水のくみ上げによる地盤沈下。
こうした地盤沈下で傾いてしまった建物が中心部にはいくつもある。
ベネチアでは海面上昇と地盤沈下で海水面が年に4ミリずつ高くなっているというデータもある。
ボートで物資を運ぶ仕事をしているフランチェスコ・ガダルピさんはアパートの1階に暮らしている。
浸水の被害を防ぐため15年前運河沿いの入り口を15センチかさ上げした。
さらに水門も設置したがその水門まで超えて水が入ってくるようになった。
(フランチェスコ・ガダルピさん)
「1m50センチぐらい。
ここを超えて水が入ってきた。
自分ではき出すしかない。」
部屋中水浸しになって家具を買い替えざるを得なくなったこともあり
今ではなるべく高いところに家具を置いて浸水に備えている。
(フランチェスコ・ガダルビさん)
「いろいろお金がかかるけど仕方ない。
ここで生まれ育ってこれからも暮らしつづけたいと思っているので。」
度重なる浸水で市街地の建物は大きなダメージを受けている。
浸水を繰り返す地域の空き家の壁は指で触っただけで剥がれ落ちてしまう。
こうした建物の被害に追い打ちをかけているのが観光客の増加。
格安航空会社の路線拡大などでベネチアの人口とほぼ同じ6万人が1日に訪れるとされている。
問題はこうした観光客が乗る船の波。
浸水で傷んだ建物の基礎に波が横からあたることでさらにダメージが加わる。
観光客の増加で波が当たる回数が大幅に増え被害がより深刻になっている。
建物の修理やメンテナンスには多額の費用がかかる。
こうした負担に古くからの住民の中にはベネチアを離れる人もいる。
ベネチアで生まれ育った女性は建物の修繕費など経済的な負担が原因で故郷を離れた。
(ベネチアを離れた女性)
「自ら望んだわけではなくそうするしかなかった。
ベネチアは旅行者のためだけの街に変わってしまった。」
観光客が年々増える一方でこの地に暮らす人の数は10年で10%も減った。
こうした事態を打開しようとイタリア政府はある者の建設を進めてきた。
それが海上に浮きあがる防潮堤である。
旧約聖書の中で海を2つに分けて人々を救った預言者モーゼにちなんで“モーゼ計画”と呼ばれている。
防潮堤のブロックは高潮の流れ込みを防ぐためアドリア海に通じる3つの入り江に設置される。
その長さは合わせて1,6キロに及ぶ。
普段は海底に沈んでいるこのブロックが
高潮が発生すると中に空気が送り込まれ浮力で海上に立ち上がってくるという仕組みである。
空気を入れすべてのブロックが立ち上がるまでにかかる時間は30分。
イタリア政府は3メートルの海面上昇までせき止められるとしている。
日本円で約7,400億円をかけ3年後の完成を目指している。
しかし多額の税金が投入されていることや環境への影響が心配されるとして反対の声も出ているこのプロジェクト。
市民の間には慎重な意見もある。
「上手くいくかもしれないけど機能するかはわからない。」
「高いお金と時間をかけているので良い方向に進むよう願っている。」
長年悩まされてきた高潮への対策の切り札となるのか。
新たな発想で作られた防潮堤に期待が集まっている。
水の都ベネチア。
古い建物と水が調和した美しい町並みは世界中の人々を魅了し続けている。
しかし美しい景観に欠かせない水は人々の悩みのタネにもなってきた。
昔からこの地域を襲ってきた“アクア・アルタ”と呼ばれる高潮の被害が近年さらに深刻になっている。
被害は特に11月~2月までの冬の時期に集中している。
アドリア海の一番奥にあるベネチア。
冬の時期ここにはシロッコと呼ばれる季節風が吹きつけ波が押し寄せやすくなる。
このため大潮や気圧の変化が重なると高潮が発生するのである。
有名な観光名所 サン・マルコ広場も水浸しのありさま。
市街地が浸水する回数はこの20年で2倍に増えている。
高潮の被害増加の背景には地球温暖化による海面の上昇がある。
さらに地下水のくみ上げによる地盤沈下。
こうした地盤沈下で傾いてしまった建物が中心部にはいくつもある。
ベネチアでは海面上昇と地盤沈下で海水面が年に4ミリずつ高くなっているというデータもある。
ボートで物資を運ぶ仕事をしているフランチェスコ・ガダルピさんはアパートの1階に暮らしている。
浸水の被害を防ぐため15年前運河沿いの入り口を15センチかさ上げした。
さらに水門も設置したがその水門まで超えて水が入ってくるようになった。
(フランチェスコ・ガダルピさん)
「1m50センチぐらい。
ここを超えて水が入ってきた。
自分ではき出すしかない。」
部屋中水浸しになって家具を買い替えざるを得なくなったこともあり
今ではなるべく高いところに家具を置いて浸水に備えている。
(フランチェスコ・ガダルビさん)
「いろいろお金がかかるけど仕方ない。
ここで生まれ育ってこれからも暮らしつづけたいと思っているので。」
度重なる浸水で市街地の建物は大きなダメージを受けている。
浸水を繰り返す地域の空き家の壁は指で触っただけで剥がれ落ちてしまう。
こうした建物の被害に追い打ちをかけているのが観光客の増加。
格安航空会社の路線拡大などでベネチアの人口とほぼ同じ6万人が1日に訪れるとされている。
問題はこうした観光客が乗る船の波。
浸水で傷んだ建物の基礎に波が横からあたることでさらにダメージが加わる。
観光客の増加で波が当たる回数が大幅に増え被害がより深刻になっている。
建物の修理やメンテナンスには多額の費用がかかる。
こうした負担に古くからの住民の中にはベネチアを離れる人もいる。
ベネチアで生まれ育った女性は建物の修繕費など経済的な負担が原因で故郷を離れた。
(ベネチアを離れた女性)
「自ら望んだわけではなくそうするしかなかった。
ベネチアは旅行者のためだけの街に変わってしまった。」
観光客が年々増える一方でこの地に暮らす人の数は10年で10%も減った。
こうした事態を打開しようとイタリア政府はある者の建設を進めてきた。
それが海上に浮きあがる防潮堤である。
旧約聖書の中で海を2つに分けて人々を救った預言者モーゼにちなんで“モーゼ計画”と呼ばれている。
防潮堤のブロックは高潮の流れ込みを防ぐためアドリア海に通じる3つの入り江に設置される。
その長さは合わせて1,6キロに及ぶ。
普段は海底に沈んでいるこのブロックが
高潮が発生すると中に空気が送り込まれ浮力で海上に立ち上がってくるという仕組みである。
空気を入れすべてのブロックが立ち上がるまでにかかる時間は30分。
イタリア政府は3メートルの海面上昇までせき止められるとしている。
日本円で約7,400億円をかけ3年後の完成を目指している。
しかし多額の税金が投入されていることや環境への影響が心配されるとして反対の声も出ているこのプロジェクト。
市民の間には慎重な意見もある。
「上手くいくかもしれないけど機能するかはわからない。」
「高いお金と時間をかけているので良い方向に進むよう願っている。」
長年悩まされてきた高潮への対策の切り札となるのか。
新たな発想で作られた防潮堤に期待が集まっている。