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ロンドンから徒然に

ポターとナトキン

2009-07-23 | 文学
 ほんの数ブロックの違いで雰囲気ががらりと変わることはよくある話です。うちの近くのThe Boltonsと呼ばれる地域なんて、市内には珍しく豪奢な一戸建てが中心で、(滅多に売りに出ることもないですが)10億円を軽く越すような値段が付いているのを一度見たことがあります。

 そこから少しだけまた離れた通りに、今度は背の低い可愛い建物が並ぶmews風な通りがあるのですが、そこの一角にアガサ・クリスティが住んでいたという家があります。
 作品を読んでいると、石造りのそれこそお化けでも出てきそうな古い屋敷に住んでいたようなイメージを受けるので、ちょっと意外な気もします。



 The Boltons周辺にはもうひとり著名な作家が住んでいました。ピーター・ラビットで有名なビアトリクス・ポターです。晩年はご存じのように湖水地方に移り住んだのですが、それ以前の(生まれ年の1866年から)1913年までをここで過ごしています。
 それこそどんな家なのか見たい気がしますが、残念ながらここは壊されてしまって、現在は跡地に学校があります。



 昔ピーター・ラビットに関連した出版物の企画に関わったことがあって、その縁で彼女の書いた原画をヴィクトリア&アルバート博物館の倉庫で何枚も見せてもらったことがあります。普段は目にすることのできない素晴らしい精密な絵を見て、その観察眼の鋭さに驚いたものです。

 ところで先日ブログにも書いたブロンプトン墓地ですが、ここからは歩いてもすぐに行ける距離です。実はポターはこの墓地を頻繁に訪れ、墓石にある名前から彼女の動物のキャラクターを命名したと言われています。その中にはPeter Rabbett(Rabbitじゃないですよ)というのもあったというのですが、これは本当かどうか分かりません。

 この墓地にはリスがたくさんいます。そこで思い出すのはピーター・ラビットのシリーズ第2弾『リスのナトキンのおはなしThe Tale of Squirrel Nutkin』です。
 で、この写真を見て下さい。Nutkins(sが付いていますが)と書かれています。どうやらこの墓石がリスのナトキンの名前の元になったみたいですよ。



 こういう風に墓石を探すのも楽しいかもしれませんが、何しろ広い土地なので、さてお目当ての名前を探し出せる確率はどのくらい?