HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

ボラットとブルーノ

2009-07-13 | 映画・演劇
 モキュメンタリーという言葉があります。英語で綴ればMockumentaryですが、これmockとdocumentaryの混成語です。
 つまり基本になる事柄は嘘なのに、あくまで“事実”を追ったドキュメンタリーとして、インタビュー等を混ぜながら構成していく手法を言います。古くはラジオドラマ『宇宙戦争』が有名ですし、比較的最近ではホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などが印象に残っていると思います。
 このふたつを見ただけでも分かるようにジャンルは多岐に渡りますが、コメディとしては何と言っても『ボラットBorat』を挙げるべきでしょう。

 この映画、邦題はやけに長くて『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』。カザフスタン人TVレポーターであるボラットがアメリカに渡って起きるドタバタをドキュメンタリーにするという体裁を取っているのですが、イギリスとアメリカで大ヒットし、ゴールデン・グローブ賞のミュージカル/コメディ部門で主演男優賞まで取っています。

 と言っても、日本では興行的に失敗だったみたいですね。キャンペーンのコピーに「バカには理解不可能なバカです」というのがありましたが、確かにこの笑いが通用するのには 、社会背景の知識と共に“強靱な神経”が必要とされそうです。

 何しろ、カザフスタンを男尊女卑と反ユダヤ主義の貧しい国として描き、アメリカに渡ってからも、フェミニズム、知的障害、国歌などを徹底的に揶揄します。あちこちから実際に訴訟を起こされていると話も聞きます。
 しかし、それでも見ていて不愉快にならないのはどうしてだろうと考えてみたら、これって昔ビートたけしが老人や弱者をこきおろしながらも、その裏にある社会に対する皮肉や弱者への愛情を浮かび上がらせたのと同じ感じなんですね。



 この金曜日から、その『ボラット』の続編『ブルーノbrüno』が始まりました。
 話的には前作と繋がりはないのですが、主演のサシャ・バロン・コーエンのもうひとつの持ちキャラクターである“オーストリア出身のゲイのファッション評論家”ブルーノが、世界各国を飛び回っての大立ち回りです。
 早速観に行ってきました。もう上映中笑いが絶えることがなく、終演後に拍手が起きるなんて現象はこちらに来て初めて経験しました。

 でも、やっぱり日本でのヒットは難しいだろうなぁ。というか、あれってあのまま上映できないんじゃないかな(意味深ですね・笑)