ゴルバチョフさん亡くなる 安倍元総理と同じく国葬かと思ったら

「巨星墜つ」と言うのでしょうか。

ゴルバチョフさんが亡くなりました。御年91歳で大往生であります。半年ほど前にこの人の現在を紹介するドキュメンタリーをテレビで観て「ロシア人としては長命な人だ。政治の世界から身を引いて穏やかな老後を過ごしているのだ。」と感じました。その風貌は、額に地図のようなシミがあって聡明そうで柔和なゴルバチョフさんの現職時代とはだいぶ様子が変わって、漫画のキャラに出て来るような小太りの妖怪のようなお爺さんでした。

ワタシの知る限り、20世紀で最も偉大な功績を残した最高の国家指導者であったと思うのです。他にすぐ思い浮かぶのはケネディさんや毛沢東・ガンジーさん位ですが、世界の地図を武力や戦争に寄らず塗り替え、東西冷戦を終結させたその功績は、抜きんでていて誰しも否定できないでしょう。

ソビエト連邦であった時代、フルシチョフ・ブレジネフと共産主義の書記長がアメリカと争い、東西陣営の緊張を高めていた時代に、共産党の中で頭角を現し要職に登っていったとはいえ、幸運であったのです。アンドロポフさんとチェルネンコさんが相次いで任期途中で死亡したため、まだ若いゴルバチョフさんが実質の最高指導者に抜擢されました。

そして、ゴルバチョフさんは積極的な民主化と西側陣営との融和を推し進め、ソ連の多くの民族が支配する自治区の国家の独立を容認しました。鉄のカーテンといわれた秘密主義や言論統制を打破したグラスノスチ、社会主義経済を見直すペレストロイカで、大きく改革をすすめました。この結果、東側の領袖であったソビエト連邦は瓦解の道を歩みだし、対立の象徴であった東西ドイツの壁を取り払うという想像もできなかったような新たな国家ロシアが誕生することになります。

ノーベル平和賞を貰ったのは当然でありましょう。今までの軍国主義的な共産主義国であれば、いまだに核ミサイルをお互いにちらつかせ、宇宙開発競争、オリンピック、経済・貿易 すべてにわたって対立をしてきたはずが、国際会議で米露の首脳などが笑顔で記念撮影が出来るようになったのです。

問題は、ゴルバチョフさん、マルクス・レーニン主義を真っ向から否定したために、伝統的勢力による民族主義的な反対活動が高まり副首相の軍事クーデターが起きました。それを救ったのが戦車に載って陣頭指揮を執ったのがエリツィンさんで、ロシアの初代大統領に就任しました。残念ながらこの方は、市場経済への急激な移行よって国民経済の混乱を招き多くの貧困者を生んだようです。その責任を取らせるかの如く次々に首相を交代させ、５，６人目に指名したのがプーチン（現大統領）となったのです。エリツィンさんはウオッカの飲み過ぎで、早い段階から体を壊し10年間の最高指導者の立場を譲ることになったのです。エリツィンさんは、2007年に76歳で亡くなり国葬となりました。

そして、今世紀最悪の政治家（もう決定です）を生み出すことになりました。

さて、そこで国葬。国民の目から逸らすためにロシアでは、ゴルバチョフさんを国葬にするでしょうか？。いやいやウクライナ情勢ではいささか形勢を損ね、それどころではないでしょう。お金はともかく、海外からの弔問客が来ませんよ。プーチンさんの政治や戦争を批判していましたし。

プーチンは、エリツインさんの在職中の罪をすべて生涯にわたって刑事訴追から免責するという大統領令にサインし、更にその後すべての大統領経験者にも適用すると改定しました。エリツインさんとゴルバチョフさんを国葬にするなら、すべて自分の為であります。どこかの韓国では、必ずといっていいほど前大統領が逮捕され訴追されるのとはえらい違いです。

ロシアでは、議会も憲法もあったものではありません。大統領令がすべてに優先されるのです。

日本に目を移すと、安倍元総理が国葬になることが「閣議決定」されました。これはロシアの大統領令と大差ないのです。憲法解釈や法律の運用から、予備費の使い道、政府見解にいたるまで閣議決定で事足りるので国会は意味をなさなくなりつつあります。実際自民党の圧倒的支配なのですから、国会では与党の政策がすべて可決される仕組みとなっています。

安倍さんにどれだけの血税が使われるか、ということがさかんに焦点になって議論されております。ワタシはそれよりも、この国民を愚弄し、好き勝手に権勢で日本の政治と官僚を操った人物が、天皇と同じ扱いを受けるほどの功績や人格であったかを考えるべきだと思います。戦後の日本の国葬は、進駐軍と渡り合って戦後日本の礎を作った吉田茂さん、あと貞明皇后と昭和天皇の三人しかいません。香淳皇后（昭和天皇のお妃）ですら国葬で無いのです。

なぜ、安倍さんを「天皇陛下」なみの扱いにするのか、まともな日本人なら誰もそれを肯ずることが出来ません。プーチンが今やっていることと大差がないと思うのです。だったらゴルバチョフさんは「地球葬」でよかろうと思いますな。