植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

書は真似に始まる 文字は歴史を作る

2020年07月02日 | 書道
先日ヤフオクで書道手本、書籍、拓本などを合わせて9千円ほど落札したことにちょっと触れました。

 毎日お稽古しているうちにマンネリ化するし、書技を磨き、名筆や古典を学ぶ上では新たな質が高い手本が欠かせません。
 書道の基本は「臨書」であります。まねて書く、ということですね。書道を学んで美しい字を書くということは、自己流では出来ません。何十億人という人が認めた普遍的な書体・字姿に倣うというのが王道です。真似して先人の名筆の通りに書けるようになったら大したもんです。立派な書道家でしょうね。

 臨書は、オリジナルの書に忠実に筆を運び、寸分たがわぬような技術を身に着けることをいいます。専門的には、形臨という文字・字形を出来るだけの再現することから、その運筆の意図や精神性などをくみ取って書く意臨、更に身に付いた書風や運筆を自分の作品に自在に投影するという背臨(はいりん)と呼ばれる段階まであるようです。恐らくワタシの力量では形臨の域を出ることは無かろうと思いますが。

 書聖あるいは「二王」(七男、王献之と合わせて)と呼ばれた1700年前の書道家が「王羲之」であります。この方が現在までに繋がる書道の芸術性の礎を築いたようです。(詳しく研究したわけではありません)。この人の臨書をすることが最もポピュラーで、書の上達の基礎されてきたのです。ワタシの師である藤原先生から出された課題も多くが王羲之の書でした。蘭亭序、集字聖教序、十七帖を未だ地道に臨書しております。

 当時、まだ製紙技術・生産力は低く、紙そのものが大変貴重で高価であったと言います。コピー機もカメラもなし。原本が書かれると、その弟子や書家が、真似して書き残すということになりますね。何しろ紙ですから、燃えたりかびたり破れたりしますから、とてもそのオリジナルが現在まで残るというのは奇跡なのです。永い歳月の中で原本は失われ、模写したものの中で出来のいいものが現在まで残ってきたということだそうです。
 
 そこで、中国人は後世に残すために石に彫ることにしたのです。多分その時代の王侯貴族が貴重な書や模倣した書写を入手し、石工に命じて彫らせたのでありますな。現存している名書、名筆のほとんどがこの石碑なのであります。屋外写生じゃあるまいし周りに集まって模写するわけにはいきませんね。書道を学ぶ人は、コピー機が無いので、臨書するために、拓本を取るようになったのです。今ワタシたちが手にする書の手本の多くが黒地に白い文字でありますが、これはすべて拓本の写真コピーなのです。

 今回のヤフオクで、9枚の拓本が入っていました。ワタシ、書道の原拓本を手にするのは初めてです。最初の印象は、白い絵の具を黒い紙に塗り付けたのかと思いました。しかしよく観察すると、厚手の和紙で、白抜き文字の部分は陥没して版画のようになっています。YouTubeで拓本の取り方を調べたら、まさにその通りに作られたように見えました。
まだ、内容を調べていませんが、なかなか鮮やかな隷書体文字、素晴らしい拓本で、このまま作品として額に入れておきたいようなものです。
杜甫の漢詩、1mほどの高さがある堂々とした拓本です。これはぜひ作品として書いてみたいものであります。この下に何百年もの間残ってきた、石碑があったんですよ。

 そうしてこれが書聖、王羲之の「蘭亭序」であります。思ったより小さく半紙2枚あわせたものに満たない大きさです。世界最高峰の書と謳われるこの蘭亭序は、彼が酔っ払って書いたそうです。家に帰って酔いがさめ90回以上書きなおしたのですが、最初のものを凌ぐものは書けなかったとか。

 その真跡は、王羲之の書をこよなく愛した中国の太宗が、自分のお墓に一緒に埋葬させて失われたそうです。現存する蘭亭序は弟子や書家が書き写したもので、数十はあるようですが、世界一の書は、実はご本人の真筆では無いのですね。
 誤った思い込み、自分勝手で自己の利益だけのために、歴史的な芸術品、書道の神髄といわれるかけがえのない人類の宝物を失わせたのでありますな。

 中國ってそういう国なんでしょうか。始皇帝の焚書坑儒然り、毛沢東の文化大革命然りであります。敦煌で偶然発見された膨大な文書・古文書・経本も、中国人は無関心で放置し、イギリス人が持ち帰り、大英博物館に収蔵することになったのも似たようなものです。
 国内の言論を封殺し、台湾・香港の優れた経済・闊達な文化や歴史を抹殺しようとする習さんも、似たようなものに見えますね。

 今ある世界の歴史や文化のほとんどが、残された文字のお陰なのです。

 公文書を勝手に廃棄したり改竄したりするのは、わが国の文化・歴史を捻じ曲げ毀損するとんでもない不法行為、後世に残る愚挙悪行であります。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 妨害運転 と 営業妨害 | トップ | コロナが教えるもの その3 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

書道」カテゴリの最新記事