植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

悲しいかな 篆刻・書道は滅びの道へ

2021年04月13日 | 篆刻
流石のワタシも、そろそろ篆刻用の印材集めも休止であります。篆刻に打ち込んで4か月、彫りやすい印材、彫りやデザインの素晴らしい印影、希少な種類の石、名工名人による持ち手の飾り彫り(紐)と側款の細工などを求めてヤフオクで集めたのです。数えておりませんが、おそらく千個はあるようです。毎日一個彫っても3年分です。一個100円見当として、10万円くらいは使った計算になります。
 実際、ほとんどが新品でも100円~500円程度で市販されている普及品(青田石・寿山石)か物故された書道家さんが使っていたような自用印であります。すでに彫られているものは姓名印・雅号印に限らず大小、千差万別ですが、ほとんどが印面を削って再利用いたします。

 自分で彫っていて沢山持っても一番使い道が無いのが実は自分の姓名印・雅号印であることに気づきました。作品を作らなければ印は押しません。落款印は一つの作品に三つ押すのがいいとされてます。これを三顆 と呼びます。これが3,4セットあれば事足ります。つまり姓名印と雅号印合わせて10個も要らないのです。沢山彫っても気に入るものしか使いません。
 
 よほどの名人(書道家や篆刻家)が彫ったか、著名な書家の篆刻印でない限り、誰も欲しがりませんからいずれ廃棄の道を辿るのです。
自分用のものならいずれ彫る必要が無くなりますから、そうなると、人の印を彫るということが主体となります。これが篆刻を仕事にするかどうかという境界線になりますね。

 ワタシの経験で言えば、篆刻印は、普段の生活には全く不要で、買おうとも作ろうとも思いませんが、貰うと妙にうれしい、といった程度のものです。今の日本では書道や日本画、茶道・華道などもゆっくりですが廃れつつあります。書道人口はここ十数年ほどで300万人から600万人ほどで推移し平均400万人ほどだったようですが、その調査方法や基準が変わって連続性がありません。1昨年のレジャー白書の統計では200万人まで落ち込んでいるようです。成人のだいたい40人に一人の割合になります。市場規模という観点では1996年ころを頂点に、ほぼ一貫して下落しています。

 景気指標(株価・土地価格・平均年収)などと同じカーブ、つまりバブルがはじけて、収入が減り、預金が減り、資産が目減りした結果、趣味にお金を使う余裕がどんどん減っていったのです。

 加えて、パソコン・スマホ等の普及で手書きという習慣や機会が急速に落ち込みました。ものを書かないのだから書道は不要になります。父兄も自分の子供に習字をやらせようとしなくなります。そろばん塾が姿を消しつつあるのと同じ理由です。大人は生活するのがいっぱいで、余暇を趣味に使おうなどという余裕もお金も少ないし、書道世代ともいうべき昭和前半の高齢者は徐々に死に絶えます。

 つまり、篆刻も書道も滅びゆく文化であり市場規模はどんどん縮小して「商売」にならなくなったのです。経産省や文科省がこうした余暇の活用と伝統文化の保護に本気で取り組んでいるとは思えません。漢字検定に高い検定料を徴収するのがその象徴です。
 レジャー白書も昭和の終わりころに作られた団体が組織を変えたり他団体に引き継がれたりしながら細々と申し訳程度に発表しているだけなのです。わずか3千人のサンプル調査なのですよ。ワタシほど熱心に書道・篆刻に打ち込んでいても、誰一人有名な書道家篆刻家の名も顔も浮かびません。

 ヤフオクで、篆刻印の入札は「田黄石」「鶏血石」などの希少品か、数百年前に作られたような時代物の印などには一つ数万円から数十万円ほどの高値がついています。それ以外は十パひとからげの安物扱い(ワタシ専門)の出品で沢山混じって数千円程度のものです。投資対象にもなりません。

 ワタシも練習用の印材は売るほどあり、ちょっと珍しいもののコレクションも少し増えました。本来は経済を回し、伝統文化振興のために私財をなげうってでも、書・篆刻のオークションに参加すべきなのでしょうが・・・・

 現在ワタシの所蔵・保有する夥しい篆刻用の印材・印床・印泥なども、ワタシがそのうちどうにかなったら、若いものにとってはただのガラクタ、廃棄物業者に引き取られ、まとめてなんぼのオークションに出されるのがオチであります。

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