植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

人生いろいろ 書道紙もいろいろ

2020年12月06日 | 書道
ゴルフのスコアは金で買うものだ、というのがワタシらシニアゴルファーの口癖になっています。腕はともかくも、だんだん筋力やパワーが衰えてくると、道具(ドライバー、アイアン)にお金をかけて、少しでも遠くに、そして曲がりが少なく、というのが人情ですね。

 書道は、そうはいきません。ワタシの師匠藤原先生の口癖は「あー、お金が欲しいわー」じゃなかった、「筆も紙も値段じゃないのよ」でした。高い筆が必ずしもうまく書けたり上達が早かったりするわけではありません。紙も然りで、あくまで書く人に合った筆、書く文字・書体に適した紙を使い、さらには墨の濃さもあわせなくてはなりません。

 昔島倉千代子さんが「人生いろいろ、男もいろいろ」と歌いました。小泉元総理は、自分の年金掛け金未納を質問されて「人生いろいろ、会社もいろいろ」と答弁しました。歯切れがよく周りを黙らせる迫力がありました。小泉さんは、北朝鮮問題の突破口を開き、郵政民営化を実施、様々な規制緩和(功罪は半ばしますが)と抜群の行動力やメッセージ力を発揮しました。この方のリーダーシップは、今の政権にはありません。

書道でも、筆も色々、半紙もいろいろなのです。

 上級者や、書道家はそうした組み合わせや最善のパターンを頭と体で覚え込んでいるのでしょう。書道家、書家(書人)、あるいは能筆家と呼ばれました。書芸の技に抜きんでていて、かつ高い素養や教養を備える専門家を指します。条幅などの作品を書くときに、それなりの値段の上質な半切を使うはずなんです。(これは、ウチの先生には当てはまらないかもしれませんが。)恐らく一枚100円以上する手漉きの半切を使います。中国の20年以上経過した「紅星牌」にいたっては、千円以上するそうです。それで、何十枚も書いて気に入ったものに落款をいれるのでしょう。

 昔の熟練の書家さんは、起筆する所からちょっと右(か下)に、一滴墨を落としたのだそうです。それで、滲み方をみて墨の濃さを計り、運筆の速度、あるいは止めやはらいの時間、力加減を判断するんですね。これだと無駄がなく、いきなり本番の一本勝負も可能となります。まだ手漉きの紙が貴重品であった時代はそれが常識だったんだろうと想像します。
 
 ワタシは、このブログでもさんざん説明していますが、半紙はほんとうに千差万別で、原料、厚み、手触り、年数などによって全く別物になります。運筆、かすれ、滲み、墨色などが異なります。漢字用手漉き紙の場合、傾向的には薄ければ薄いほど、滲みが多くなります。繊維が粗い半紙は、墨の吸い込みが悪く薄い字になります。表面の摩擦が大きいと筆先が突っかかりますし、滑らかすぎると筆が滑り穂先が勝手に動いて良い字が書けません。

 そして、その紙との相性に筆の性質が関係してきます。毛の種類で言えば、細く柔らかい羊毛(山羊)、しなやかでやや太めの鼬やタヌキ、硬めの馬、さらに硬い鹿、などが単用または組み合わせて(兼毫)使われます。それぞれの種類でも、品種やとれる部位で、かなりその書き味が変わってきます。例えば鼬毛でも、ヨーロッパのコリンスキー種というのが最高級と言われて、細く長いのが特徴です。勿論羊毛筆もピンからキリまで(品質により価格差は数十倍にもなります)で、当然書き味や出来栄えも変わりますね。

 筆と紙が揃って初めて良い字が書ける、これがワタシら中級者の現実です。藤原先生が「値段ではない」というのは、書の名人たるものは、どんな筆でも上手く書ける。安い機械漉きの紙でも、広告紙の裏、包装紙でもちゃんと書けるようにならなければならない、という教えであります。

 しかし・・・ やはりシニアの書道家見習い、前座としては、やはり金で買うのもありかな、と思ってしまうのです。

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