通勤する電車の中。
朝から大きな声で話す女子高生の話し声に耳を傾けることが日課だ。
「昨日、バイトで店長に怒られたんだけど~。ちょーむかつくー。」
「テスト勉強やった?ありえないんだけど、ワタシ、ケータイで2時間話し終えたあとに寝ちゃってさー。全然勉強してないんだけどー。」
「てゆーか、痩せないんだけど!!!3日間ほとんど食べてないのに!!!」
ひどい言葉遣いだけれど、無邪気に友人と語りあう彼女たちの会話を聞くのはとても楽しい。たまに一人で笑ってしまう時がある。
それともう一つの日課がある。
それは、いつも同じ車両に乗る女の子の歌声を聞くことだ。
彼女は今日、「歌えバンバン」を歌っていた。
車内に響き渡るほどの大きな声で、手をたたきながら元気良く歌う彼女を見て、
「朝からうるせーんだよ。マジ迷惑。」と言って違う車両に行ってしまう高校生もいれば、何にも聞こえていないかのように無表情な人など、それぞれいる。
そんな人々の反応にはおかまいなく、彼女はほぼ毎日「のど自慢」をする。
その歌がとても上手だ。まず声がとてもきれい。そして音程が合っている。何より、歌に感情がこもっているため、すごく心に届くのだ。
俺が電車通勤を始めて少したった頃から、ほぼ毎日一緒の車両に彼女と乗り合わせているから、今では彼女の歌声が無いと、一日が始まった気にならない。
名前も知らないけれど、君の歌声には日々感謝しているよ。
何かあったら相談してくれよ。・・・。って俺に相談することなんて有り得ないか。
ガク