ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

物事の順序をどう捉えるか

2008-07-04 12:12:36 | Weblog
 前に当ブログで、「米の粉のパンを探して食べたい」旨の記事を書いたのですが、それを読んだアルバイト長、中村嬢が村山市にそのお店がある、という情報を頼りにお米の粉で作るパンを売る店「お米のパン家」さんへ赴き、買ってきてくれました。
 その時は「米粉のクロワッサン」を買ってきてくれたのですが、先に食べた感想から言わせて頂きますと、普通のクロワッサンの「サクサク」した食感よりも、サクッとした後に「モチモチ」した食感が残り不思議な感じがしました。
 味は、「モチモチ」した食感の中から最初、バターの香り(本当はマーガリンを使用していますが、何となくバターっぽい)がし、生地の甘さと程よい塩味の対比の奥に若干ですが、米独特の甘さを感じる事が出来ます。(かなり微妙ですので集中して味わうことをお勧めします)
 意識して食べなければ「モチモチ度」の高いパンだな、と思い、米粉を使用しているのが分からないほどの完成度でした。
 私は今回、クロワッサン(プレーン)だけしか食べませんでしたが素直に「美味しい」と感じた次第です。
 グルテンのない米粉をどうやって結着し、そして焼き上がりをどう解決したのか疑問でしたが、袋に記載してある原材料を見て納得しました。そこに行き着くまで相当、試行錯誤された事でしょう、何回も焼き直ししたことでしょう、どうやってつなぐか、どのような配分にするか。
 もう一度言いますが、私は小麦粉なしでどうやって?というその疑問が胸に痞えて(つかえ)おりました。答えは「グルテン」を混ぜ込む事で収束したのですね。そのまんまだったのか、と声に出してしまいましたが、安堵と共に美味しく頂く事ができました。興味のある方は是非、お店を探して召し上がってみては如何でしょうか。
 クロワッサンも「プレーン」の他に、「メープル」「チョコレート」「ゴマ」とあるそうですのでチョイスできるのも女性の方にはうれしいというものでしょう。
 しかし、初めて食べる方は「プレーン」からお願いします。だってそうでしょう、米粉のクロワッサンを初めて食べるのに、「チョコレート」や「メープル」からではイカンでしょう、「プレーン」を攻めてからでないと。

 数年前、うちの元アルバイト長「ノッチ」さんに、

「某デパートで大フランス展をやっているから、そこから『カヌレ(ボルドーの伝統菓子)』を買ってきて。」

 とお願いしたら、私とマネージャーの分は「プレーン」だったのですが、本人のは「チョコレート」でした。

「何でチョコレート?」

「えっ?何でですか?」

「いやいや、食べた事あるのかなぁ、と思って、カヌレを。」

「えっ?ないですよ。初めて食べるんですけど。「チョコレート」美味しそうでしたから。」

「ちょっと、ちょっと、待って!初めて食べるんだったら「プレーン」からでしょ。「プレーン」の味も知らないのに、飛び越えて「チョコレート」?」

「いいじゃないですか!「チョコレート」食べたかったんですよ!」

「分かった!百歩譲って、「チョコレート」が魅力的だったとしよう。だったら、どっちも買うわけでしょ、味を比べるために。」

「別にいいじゃないですか!」

「いやいや、ノッチさん。「牛乳」飲んだ事のないヤツが「コーヒー牛乳」飲むか?順序としては「牛乳」も好きだけど「コーヒー牛乳」の方が好き、だろ?」

「関係ない話ですよ!」

「いやいや、たとえ話は大切ですよ。」

「もういい加減食べさせてくださいよ!」

 そんなやり取りがあったのを思い出しました。

 やはり、「プレーン」からですよね?




 
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労使関係は中東情勢のようなものか

2008-07-03 18:09:24 | Weblog
 今日、新聞の地域欄を見ましたところ、山形市の駅前にある居酒屋さんに勤めていた元料理長が会社(その居酒屋さんを経営している会社)に対し、残業未払い金500万円を請求する提訴をおこし、その結果、会社側に150万円の支払い命令が出た、との記事が載っておりました。(会社側も元料理長を提訴している)
 記事を読む限り、人事の問題やアルバイトの人たちの教育、年中無休における従業員のシフトなどの問題などが起因となり、その結果、自分の休みを返上しなければならなくなる、という負の連鎖があったのではないか?と推測されるのです。
 会社側もそれに対して対価報酬を支払えば問題はなかったのでしょうが、やはり、管理者としての責任、という言葉で封印しようとしていたのでしょうか。
 
 私の立場としては、経営側、料理長側、どちらにも属しているものですから、どちらか一方に肩入れするように記事を見たわけではなく、どちらにも肩入れする、という気持ちで記事を読ませていただきましたが、なかなか難しい問題だ、としか言いようがありませんでした。
 仮に元料理長が「契約以上のことをさせられた。」と主張しても、会社側は「いや、料理長という立場上、やらねばならぬ事だってあるだろう。」と返答するだろうし、「休みがなかった。」と言えば、「あなたの管理能力がそうさせたのではないか。」と言い返すはずです。それでは言い分が平行線のままで、決着がつかないでしょう。
 私もかつては雇われ料理長だった事がありますから、「休みがない」「この金額では対価報酬ではない」というような局面に遭遇したことはありますが、昔は「総上がり(スタッフを引き連れて辞める事)」という言葉をちらつかせて待遇向上に務めたこともありました。(実際、スタッフを引き連れて辞める事は無理なのですが、一応、ね。)
 私たちの商売の場合、「長時間労働」「休みを返上しなければならない可能性」「低賃金」というのを我慢する理由としては、勿論「料理人だからやらなければいけない時もある」という精神論もありますが、「この辛い時期を乗り越えれば、その後、この腕を高く買ってくれる店があるかもしれない」や「この後、独立に際しそのくらいの苦労はやっておいて損なし」という、一筋の希望がそこにはあると思われます。(私だけの考えだったら、すみません)
 だからといって「休むな」「もっと働け」と言っているわけではありませんし、会社資本のチェーン店と街場のレストランを一緒に考えているわけでもありません。
 もっと労使両者がお互いに歩み寄る姿勢が大事なのではないか、という事です。例えば、料理人なら「独立した時のシュミレーションと考えてある程度は我慢するか。」と思い、会社側は「頑張っているから給料考えなきゃね。」と思うことが大切でしょう。(会社では規定があるから実際は難しいのかもしれませんが・・・)
 
 という問題を提起しておきながら、話はまったく変わりますが、あの、若手料理人の会「みしゅらん会」(何度も書きますが、実際はそんなに若くない)の会合が先日、「ラトリエ・ドゥ・シャルロット」さん(当ブログに何度か登場する店)で行われまして、新たに4人の方が入会する事となりました。
 その中のひとつ「ワインバー エノテーカ」さんが今月の13日(日)、5周年ワインパーティーを「メトロポリタン山形」さんで行います。
 受付が17:30からで、開宴が18:00からとなっております。会費は8000円という事です。
 ボンボン、良いワイン(高いワイン)を抜くような発言をしておりましたから、ワタクシも参加させていただく事にいたしました。(勿論、それ目当て)
 もしこれをご覧の方で、参加したい、という方がいらっしゃいましたら、ご一報くださればチケットをお取りいたします。(当日券があるかどうかは未確認ですので、どうか前売りで)
 今回は、ワイン初心者を対象とした「ワインセミナー」も企画している、との事でしたから、興味のある方は参加してみては如何でしょうか。

 会費8000円という金額がビミョーかもしれませんが、800円のグラスワインを10杯飲むと思って、いや、4000円のワイン(ボトル)を2本飲むと思って、いや、5000円のワイン(ボトル)2本飲むようなつもりで、いや、全てのワインを飲み干すくらいの覚悟で参加しましょう、いや、参加します。(うるさい!)




 
 
 
 
 
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親孝行したい時に親はなし、になる前に手を打て

2008-07-02 21:45:26 | Weblog
 最近、私の母が長期入院を余儀なくされた為、実家には父が一人で暮らしているのですが、父は料理が出来ないので私が休みの日に実家に行き、1週間分の料理を作ってくる、という「セントラルキッチン男」と化しています。
 父を気遣い、近所の人が食事の心配をして声を掛けてくれると

「大丈夫、大丈夫。うち、専属の料理人いるから。」

 と、笑いながら言っていた、という話が漏れ聞こえてきた時は少しイライラ来ましたが、ある意味、本当の事なのでしょうがないでしょう。
 一人で食事をするのは寂しいだろうと思い、おかずくらいはバリエーションを豊富にし、食べる楽しみを持ってもらおうと毎回6~8品くらい作っていくのですが、意外な父の食べ物の好き嫌いを発見することが出来、「親の心子知らず」ならぬ「親の好み子知らず」だな、と思ってしまった次第です。
 和物が中心のメニュー組みをしているのですが、最近、カレー(特にバーモントカレーの甘口)に好感触を感じましたから2週間に一度、カレーを組むようにしております。(母に言ったら「あれっ?知らなかったの?」と一蹴されてしまいました)
 では、6~8品とは何を作っているのか?今週の月曜日(お店が定休日)に作ったものを思い出してみましょう。

・豚モツ煮込み(豚モツが安かったから。大根も冷蔵庫に眠っていたのを思い出して。)

・鰊、山独活、麩の煮物(アメリカ産ソフト鰊が安売りしていた。山独活は下処理されているもの。短時間で出来、且つ、田舎臭いので受ける、と直感した。)

・カレイの煮付け(魚の煮付けが好物なのは知っているので毎回組んでいる。今回はカレイが安売りしていた。一切れ99円。3切れ購入)

・キノコのソテー醤油風味(エリンギとシメジがなぜか安売りしていた。他にエノキと椎茸も購入。キノコ物は火を入れると日持ちするので便利)

・中華くらげともやしの和え物(軽くボイルしたもやしに塩コショウし、中華くらげ(市販物)とごま油で和えるだけ、簡単)

・胡瓜とほぐし魚の梅肉和え(なぜか胡瓜と梅干が冷蔵庫にあった。前回、焼き魚を焼いていった(温めて食べろ、と指示)物が残っていたため再利用)

・烏賊とサトイモの煮付け(スルメ烏賊が2ハイで250円とお得だった。サトイモと大根(また登場)と一緒に煮付けると美味しい。勿論、仕上げに烏賊ワタを入れる)

 と、このようなラインナップでした。
 これを2時間くらいで作り上げなければならないので、ほぼ、仕事モードが入ってしまいます。(母の見舞いや自宅に帰ってやる事があるので時間がない時は本当に時間がない)
 前に一度、実家の台所でガンガン作っている時、父から「お前、そんなに頑張らなくても・・・」と言われた事があるのですが、「ウルセー!俺の仕事に口出すな!」とブチ切れてしまいました。すでに私の中では仕事になっているようです。
 その証拠に、買い物している段階から頭の中で仕込みの段取りをしながら(もう仕込みになっている)買い物金額を3500円以内に納める事を計算しつつ(前回は3800円くらいで300円オーバー。別に制限はないのだが買い物術としては重要)、「豚モツはラグー(仏語で煮込みを指す)だな。」「烏賊とサトイモのキュイッソン(仏語で煮汁を指す)は少ない方がいいからしっかりレデュイール(煮詰める事)しなければ。という事は、最初から薄味で行って、最終的に味が決まるようにすればいいのか。」などをブツブツ言いながら買い物しているわけです。(すれ違う奥様方が気味悪そうに見るので、最近は口に出さないように心がけています)
 前々回あたりは作っている最中に、「待てよ。うちのオヤジのためだけに作るんだったたら日曜日寝ないで大量に仕込みして、月曜日のみ営業の惣菜屋(昼)兼居酒屋(夜)をしてみたらどうか?」などと無謀なビジネス展開を考えてしまいました。どう考えても疲れが取れないシフトでしょう。無謀すぎ。

 これからしばらく続くであろう、この「自宅惣菜男」。ビシッと作れるようにワークマンでエプロンまで買ってきてしまいました。

 しかし、第3者的に見るとヒゲ面でジーパンとTシャツの男が軽快にヨークベニマルあたりで買い物している姿や、ジーパンTシャツの上から黒いエプロンを付けてガンガン料理しているヒゲ面は、ちょっと怖いかもしれませんね。

 でも一応、本人は親孝行しているつもりなんですけどねぇ。



 
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