ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

聞いているだけで覚えれるのならば、読んでいるだけで覚えれる、という事もあるのか

2011-01-29 22:49:09 | Weblog
 最近、聞いているだけで覚える英会話教材「スピードラーニング」が人気のようですが、先日、車でラジオを聞いているとその「スピードラーニング」のラジオショッピングが流れておりました。
 運転しながら何気なく聞いていたのですが、「スピードラーニング」の営業の方と思しき男性の話が自分の体験談に移行した時、物凄い疑問に駆られる事となったのです。
 話はこんな感じでした。

「このスピードラーニングは、音楽のように聴いているだけで英語を覚えるという画期的な教材なんです。」

「えぇ!?聴いているだけでですか?」

「そうなんです。因みに、私もこのスピードラーニングを聴いていたので海外に行った時にとても役に立ちました。」

「エェ!?じゃあ、現地で英語を喋れた、っていうんですか?」

「そうなんです。新婚旅行で海外に行った時、とある綺麗な教会を見に行ったのですが、そこのすぐそばに素敵なレストランがあったんです。私は予約をしていなかったのですがそのレストランへ入ってみたのです。」

「大丈夫だったんですか?」

「すると、ウエイターの方がやって来て、『予約のお客様ですか?』と聞かれたのです。」

「もちろん、英語で、ですよね?」

「そうです。しかし、私はスピードラーニングを聴いていたお陰で彼が何を言っているかハッキリと聞き取れました。」

「そうですか・・・」

「そこで私は『予約はしていませんが席はありますか?』と口をついて英語で出たのです。すると、ウエイターさんが『只今、お席をご用意します。』と英語で返してきたのですが、私は全て理解できました。そこで私はすぐに英語でこう言ったんです、『お願いします。』と。」

「えぇ!?それはスゴイですね。」

「そうなんです。そうしてそのレストランで私たち夫婦は楽しい食事が出来たんです。それはスピードラーニングを聴いていたからだ、と実感しました。」

 と、このような内容です。
 教材が素晴しいのは判ります、ネイティブな英語を毎日聞いていれば英語の持つイントネーションに慣れますから聞き取れるようになるでしょう。聞き取れれば単語を繋げて話を返せば会話は成立します、それも理解できます。
 しかし、この営業と思しき方の説明の中で全く英語、しかも単語すら出てこないのはかなり疑問です。
 「口をついて英語が出たんです、『予約はしていませんが席はありますか?』とね。」のような話は全て日本語じゃないですか!
 「アイ・ドント・メイク・リザベーション、ドゥ・ユウ・ハブ・テーブル・ナウ?『予約はしていませんが席はありますか?』とね。」という説明の方が説得力がある、というものです。
 私はその会話を聞いていてこう思ったのです、この営業の人は、アニメ「ルパン三世」の「ルパン・ザ・サード!」も聞き取れるか疑問だな、とね。

 さて、話は変わりますが、前回のランチの前菜にお出ししたのは「野菜のテリーヌ ズワイ蟹と菊ワタ添え」でありました。
 通常、テリーヌ型に入れて冷やし固めるのですが、その前日、何か考えるところがあったのでしょうね、ケーキのような盛り付けで行きたいな、とフッと思ったのです。
 つまり、断面を見せるような四角形ではなく、長方形で横長に立てれるようなテリーヌをイメージしたのです。何となくケーキのようではないですか、その形。
 まずは流し缶を用意し、ラップを敷きます。キャベツをボイルして自然に冷まし、冷ましている間にブロッコリー、インゲンもボイルし色止めしておきます。(色止め、とはボイルした野菜を氷で冷やす事)
 豚足のキュイッソン(豚足を煮た汁。ガッチリ天然のゼラチン質が出ていますから補強のゼラチンが要りません)を沸騰させてアクを取り、塩で味を決め、ノイリー・プラッド(フランスのベルモット酒)で香りをつけ冷まします。
 ラップを敷いた流し缶にキャベツ、インゲン、ブロッコリー、豚足のキュイッソンを入れ、上からキャベツを被せて上から重石をしながら冷やし固めると出来上がります。
 完成品はこちら。



 「どの辺がケーキなんだ!」そうお怒りになる方がいらっしゃるかも知れませが、まぁ、まぁ、イメージ、イメージ、イメージですよ。

 春らしくていいかな、と。まだ遠そうですがね。

 スピードラーニングのように当ブログを読まれている方も自然と料理が作れるようになって欲しい、という思いも込めて説明の後に写真を持ってきたのですよ。

 強引な〆ですがね。











  
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時の流れは早い、そんな事を思う時、言葉を短縮していないか

2011-01-27 21:55:52 | Weblog


 「新年」という言葉も何処かに去ってしまい、気が付くと1年の12分の1が消化しようとしている今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 「いつから1日が短く感じるようになったのだろうか?」と自問自答していると、何処からともなく「そんな事考えてるからでしょ。」と返ってきそうでありますが、歳を追うごとに1日が、いや、1年が短くなっているような、いや、そう感じているような自分がいます。
 そんなに時間の流れが早く感じるからでしょうか?言葉を縮めて、略して喋る場合が多々あります。
 例えば、「フォワグラのソテー トリュフのリゾット添え」ならば「フォワ・リゾ」、「山形牛のロティ」ならば「ヤマギュウ」のように。
 仕事中も、ソースをバターで繋ぐ作業「モンテ・オー・ブール」通称「バターモンテ」すら「バタモン」などと頭の中で呟く時がありますから気をつけなければなりません。
 
 昔働いていたレストランで、「鶏肉のソテー カレークリーム風味のフィットチーネ添え」のオーダーが入った時、「トリソー、カークーフィッチー」と一人で呟いていた人がおりましたが、略しているのかすら判らない用語は周りの人間を不愉快にするだけであります、芸能界の業界用語にもなっていないですしね。
 「メンラー(ラーメン)」「バーソー(蕎麦)」のように言葉を並べ替えて言うのが所謂「業界用語」だと思われますが、その法則で言ったら「ワイン」は「インワー」となり「昨日はワイン飲んで熱燗飲んで大変だったよ。」の文章は、「昨日さー、インワーみーのー、かんあつみーのーでへんたい、へんたい。」になるでしょう、どう考えても周りから誤解を受けてしまいますな。
 洋食では、トマトを不揃いながらも角切りにする作業を「トマト・コンカッセ」と言いますが、大抵は昔からの慣例で「トマコン」と言う事になっております。
 パセリのみじん切りは「パセポン」と言ったものですが正式名称は未だに判明しておりません、フランス語で言うと「ペルシ・アッシェ」で「ペルアシ」なんですがね。
 中学を卒業したての15歳の時、私は某料亭に修行に出されましたが、魚の名前や専門用語が解らず戸惑った経験があります。
 「勘八(カンパチ)」。これを持って来いと言われても2週間前まで中学生だった少年が、魚のブリの一種、などと解るわけがありません。でも、持って行きましたよ、解らないなりに、「トンカチ」を。大笑いされた後、殴られましたけどね。
 「燗冷まし」。これは「料理酒」の事ですが、お燗をつけた酒が残った場合、それを流用していた悪しき名残がこの名前になったらしいのですが、そんな事を知っている15歳はいません。でも、持って行きましたよ、「栓抜き」をね。第六感が働いたんですけどね、外れて殴られましたよ、お約束通り。
 今、思い出すと結構、頂いたものですな、鉄拳制裁。こんな事を思い出しているから時の流れが益々早くなるのでしょうか、前向きに行かなければなりませんな。

 さて、話は変わりますが、冒頭の写真は「クエの頭」を割っているシーンでありますが、お察しの通り、クエの頭だけで売られてはいませんから本体がメインなわけです。
 それほど大きいようには見えないかもしれませんが、写真の包丁の刃渡りは32センチで、それに対しての頭ですから魚体は結構大きいのです。
 「クエ(ハタ科)」は鱗が頑丈でエカイエ(鱗を引くこと)するより「漉き(すき)引き」という鱗と皮の間に包丁を入れて鱗だけ漉いていきます。
 日本料理では「尼鯛」などの鱗もこの技法で漉いていきますが、最近は鱗を付けたまま焼いたり揚げたりする調理も一般化してきました。でも、「クエ」の鱗は厳しいでしょう。
 当店では、主にポワレ(フライパンで焼く調理法)してお出ししますが、皮を剥いで少量のヒュメ・ド・ポワソンと共にブレゼ(蒸し焼き状態で調理する事)してもいいのではないか、はたまた、アンクルート(パイ包み焼き)というのも面白いかも、と色々考えさせます。(よく魚屋さんが持ってきてくれるんですがいつもポワレだったような気が・・・)

 「身の調理法は判った、頭はどうすんだ?」そのように疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 賄いではもったいなくて食べれません、1本、結構なお値段しますからね。

 ヒュメ・ド・ポワソンにしました。

 アラのポワレにアラのソース、というのもいいでしょ。

 オーダーの際には「ラーアー、レーポワ」とでも言っていただきましょうかね。











 

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君はどう攻める、バレンタインデーを

2011-01-26 21:20:21 | Weblog
 先週、とある女性のお客様がいらした時「バレンタインデー」の話になりました。
 その方曰く

「去年、トリュフチョコを作ろうとしたら大失敗に終わったのですがなぜですか?」

 との事でしたが、作っている所を見ているわけではないので「なぜですか?」と疑問を投げかけられても「なぜでしょうねぇ。」としか答えられません、それ以外言葉が無いでしょう。
 話をするうちに「トリュフチョコの作り方を教えて欲しい。」という方向に変わってきました。
 私は当初「ブログに載せていますので、それでも読んで頂ければ・・・」というネガティブな意見を述べるに過ぎませんでしたが、その方の真剣さ、それを上回る「今年こそはゲットしたい!」という思いの強さを感じる事が出来、「じゃあ、やりますか。」と当店初のデセール教室を開催しようか、と考えたのです。
 しかし、マンツーマンのプライベートレッスンでは限界があります、というのは、ある程度の量を作らなければその真価を発揮できませんし、どうせなら「ガトーショコラ」「トリュフチョコレート」の2種類くらい用意し「男」という牙城を切り崩す作戦で行った方が良いのではないか、との思いもあったのです。
 そして、またいつものように「4人集まれば」という制約を付けて開催する事にしたのですが、その方があと3人集めれるか判りませんし、もしかするとこの話自体を忘れている可能性があります。という事で、この場をお借りして「バレンタインデーチョコレート作り教室」の人員を募集します。(おぉ!言い切ってしまった)
 日時は、何と「バレンタインデー」の前日、「2月13日」の日曜日、夕方6時からです。
 ガトーショコラ2分の1ホール、トリュフチョコレート数個付きでラッピングまでのコースになり、参加費用はおひとり様2625円(税込み)となります。
 4名様集まった時点で締め切りとさせていただきますが、厨房が狭い、少人数での作業性重視、という理由ですのでご理解ください。(集まったらの話ですがね)
 今回、「今年こそは!」という切実な願いが叶いますように、勝手ながら、どのような方向から攻め、どのように制圧するか、というのを共に作戦を立てようではありませんか!私的には「カカオの狼作戦」と名づけて粛々と作戦を遂行できますよう緻密に計画できれば、と思っております。
 例えば、男性が30代半ばの会社員、趣味は映画鑑賞、バツなし独身でお酒はたしなむ程度、な方でしたら「ガトーショコラ8分の1ポーション、トリュフチョコ6個」の他に「スパークリングワイン」と「苺」も用意してショコラ、フレーズ(苺)、そして「泡物」の相性の良さをアピール、そして「どうせなら一緒に飲みませんか」を提案し、暗に「プリティー・ウーマン」を演出、彼が「もしかして、これって・・・プリティー・・・」などと気付いた頃にはほろ酔い気分な訳ですよ、そこで「映画が好きだ、って聞いたから・・・」とちょっとはにかみながら伝えたら彼の制空権は制圧です、いや、制海権すら掌握した、と思ってもいいでしょう。
 そこで「その場合、手作りチョコである意味があるのか?」などと冷静に考えてはいけません、作る工程を踏んでいる人間は強いのです、念を入れて作業をした人間は強いのですよ、既製品には無い精神的な強さがある、と私は思います。
 「本命にあげたら残りはどうするの?」そういう意見もあるでしょう、あるでしょうとも、その場合、ガトーショコラなどは16分の1にカットし、彼の周りの男性に「義理チョコ」として渡し、うまく行くように計らえ、と一言付け加え取り込んでしまえば良いのです、ある意味「撒き餌」的な使い方ですな。
 
 日曜日の夕方からですから、人員が集まる可能性は低いと考えられますが、一応、募集してみた次第です。

 応募は電話で、締め切りは1週間前の2月6日(日)とさせていただきます。

 全く人が集まらない場合は、即刻中止となり、営業終了後、一人で飲みに出てしまう事になりますな、寂しさ紛らすこの酒を、誰が名づけた夢追い酒と。

 まぁ、ネタ的なものですからね。













  
 
 
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雪下ろしはプランとギャンブリングが同居する作業である

2011-01-25 23:33:43 | Weblog
 昨日の定休日は実家に帰って、この季節ならでは、と言いますか、今季がそうだったから、と言いますか、実家の「雪下ろし」をしてきました。
 最近、山形の新聞を騒がせている「高齢者の雪下ろし作業中の転落死亡事故」の記事を目にすると人事のように思えず、早速、実家に「バス」で帰ったのです。
 公共交通機関を使用したのには2つ、理由があります。まずひとつ目、私は友人、後輩と共に「宝くじの会」というものを結成しており(私を入れて3人だけの会なんですけどね)、年末ジャンボ宝くじの答えあわせを兼ねての新年会が雪下ろし前日の夜、執り行われるからです。(西銀座チャンスセンターの7番窓口に4時間も並んで買ってきてもらったのですが、残念ながらかすりもしませんでしたな)
 事実、その日の夜、マネージャーも参加して4人で、瓶ビール2本、スパークリングワイン2本、白ワイン5本飲み干しました。車の運転は勿論の事、雪下ろしさえも危ぶまれる感じであったでしょう。
 ふたつ目は、雪下ろしの作業の後、車を運転するなど考えたくなかったからです、それほど重労働を覚悟しなければならないのですよ、雪下ろしは。
 東京や横浜で仕事している時、雪下ろしの話をすると「え~!してみたい!」とはしゃぐ方が数人いましたが、舐めてはいけません、転落して死亡するほどの作業なのですぜ、「白い魔人」の雪を甘く見てはいけないのです、白き殺人者はいつその牙をこちらに向けるか判らないのですよ。(ちょっと大げさ)
 雪下ろしビギナーにその作業をさせると無鉄砲に雪をかき、無駄に体力だけ消耗し、息切れの激しさの割には全く進んでいない、という事になります。
 それではイカン!それではイカンのですよ。雪下ろしは人生のようなもの、計画的に雪を地面に落としていく、という「着実性」と、屋根のギリギリまで身を乗り出して雪を落とす、という「ギャンブル性」が同居した深い作業なのです。
 今回の作業は「車庫」「一階の屋根」「二階の屋根」と3つのエリアに分けられ、順に難易度が高くなるコースであります。
 「車庫」や「一階の屋根」くらいでしたら仮に落ちても雪のクッションに守られ笑い事で済みますが、「二階の屋根」から下の雪に頭から落ち、上半身が雪に埋もれ足二本だけ突き出ている「犬神家の一族」冬バージョンになってしまったら確実に死ぬでしょう、いや、死にます。そんな死と隣り合わせの雪下ろし、何か物凄い事をしているようで溜まりませんぜ。
 雪を下ろす際は、スコップの幅の大きさの立方体を作り投げ捨て、その隣にも立方体を作り投げ捨て、という作業を繰り返します。
 1段終わらせたらその下の段も、その下の段を終わらせたら今度は次の段に取り掛かります。
 余談ですが、その時、口ずさむのはなぜ「与作」だったり「祭り」だったり北島三郎先生の曲になってしまうのでしょうか?
 まぁ、それはいいとして、取り掛かる事「3時間」、ほぼ雪撤廃を完了する事が出来ましたが、大変でした、積もるだけ積もったな、というところで腰の高さまでありましたからその恐ろしさが判るというものです。
 仏壇に手を合わせ、そそくさと実家を後にしてバスに乗り、帰宅したのですが、車中では予想通り寝てしまいました。
 
 バスで山形市内に着いてすぐ向ったのは「サイゼリア」、ワインを体内に注入しないと取れないでしょう、疲れが。

 そして今日、身体の節々が痛いのはお約束ですな、イテテテ・・・
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艶やかな黒、それはチョコレートを意味するのではないか

2011-01-21 22:43:41 | Weblog
 1月も後半に入ると、もう2月の事を考えなくてはならない雰囲気になってきますが、2月と言うと「チョコレート」的な事が頭から離れなくなるなるのは、何も私だけではなく、飲食店、特に洋食系のお店なら全般的にではないでしょうか。
 「クリスマス」に次ぐ恋愛イベント「バレンタインデー」は、「クリスマス」ほど恋愛モードが全開ではなく、程よくラブ度が効いている日であります。
 チョコレートを渡し愛を告白する、というのがトラディショナルな「バレンタインデー」なのでしょうが、最近では「男子系」が手作りチョコレートを女性に渡す、という傾向も見られるそうです。
 しかし、だからといって愛を告白するか、というとそうでない場合もあるらしく、「これ、食べてね」的なノリで渡し、評価を得る、といった所なのでしょうか?私には判りません、その行為が。
 弁当も自分で作る男子「弁当男子」にも見られる「バランスの取れた食事を実現する為に自分で弁当を作る。」という行動は、なかなか出来る事ではないため頭が下がりますが、チョコレートを自分で作る、という事も余程好きでなければ出来ません。
 そういった「男子系」の人が増えると「立川談志」師匠のような無頼な「談志系」が絶滅の危機に瀕しているのではないか、と心配してしまいますが、無頼な人が作る「チョコレート」というのも怖いものがあります。
 どうしますか?弁当箱のようなものをぶっきらぼうに手渡され蓋を開けたら弁当箱内全て「チョコレート」でホワイトチョコレートのガナッシュ(チョコレートにクリームを加えたもの)で「みなまで言わすな、お前が好きだ」という字が躍っていたら。
 それで「グッ」と来る女性は皆無でしょう、いや、逆にいたらトレビアンなカップルの誕生でしょうからそれはそれで良いのですが、普通はいません。
 しかし、今回は敢えて「男子系」でなくとも時代を先取りして男性がチョコレートを作り、プレゼントしたい時の為に、男、藤原が男性諸君のために「逆バレンタインで行こうではないか」と題して男性の手作りチョコレートを提唱したいと思います。
 まず、一般的に男性が「手作りチョコレート」と聞くと「ケッ!そんな軟弱な事出来るか!」「男がそんな事できるか!」となると思いますが、チョコレート作りというのはシンプルながらその工程は数字で管理しなければならず、「蕎麦作り」にも匹敵するほど難易度の高い作業であります。
 そして、道具。ボール、デジタル温度計、シリコンゴムヘラ、など家庭用ではなくこの際、プロ用のものを購入し自宅台所を「ショコラのアトリエ」という位置づけにして本格的にチョコレートと向き合おうではないですか。
 チョコレートには色々種類がありますが、男ならビターの「クーベルチュール」と呼ばれるチョコレートを使用する事をお勧めします。
 「クーベルチュール」はカカオマスに糖分やカカオバターを添加したもので、一般のチョコレートよりカカオバター含有量が高くなっています。
 そのチョコレートで「ガナッシュ」と呼ばれる加工チョコレートを作り、クーベルチュールを適温に溶かしたものを纏わせ皮膜を作り、ココアパウダーを塗したものが「トリュフチョコレート」です、どうですか、やり甲斐があるとは思いませんか!男性諸君よ!
 最初に「ガナッシュ」を作ります。
 「ガナッシュ」はクーベルチュールと生クリームを同量用意します。200グラムのクーベルチュールなら200ccの生クリームという事ですな。
 生クリームは乳脂肪分35%くらいがお勧めで、それ以上乳脂肪分が高いとくどくなるのですよ。
 生クリームを沸騰させ、それをクーベルチュール(板状のものを購入した場合、包丁でスライスして、コイン状の場合、そのままボールに入れておいてください)に加えて溶かしますが、その際、一気に加える事をしてはいけません、生クリームを3分の1くらい加え、一旦クーベルチュールを分離させ、残りを加えで乳化させていきます、仏語で「エマルジョン」です。覚えれない場合は「エマニュエル婦人」とでも覚えておきましょう。
 それをバットにあけ、室温に冷ましておきます。次に「クーベルチュール」の「テンパリング」という作業です。
 「クーベルチュール」は、カカオバターの含有量が多いため温度管理をしっかりしないと艶が出ませんし舌触りにも影響を及ぼします。ですから、クーベルチュールを溶かし、溶かしたクーベルチュールを結晶点の温度まで下げ、作業しやすい温度に又上げる、という工程を踏みます。
 クーベルチュール(先ほどと同じ状態)を入れたボールの下をお湯を張った鍋で湯煎状態にし溶かしていきます。
 この時、デジタル温度計で温度を測り、ゴムヘラで混ぜながら溶かし、45度から50度まで温度をつけます。
 この後、パティスリーならば大理石にクーベルチュールを流して温度を下げる、という作業をしますが、流石にそこまでは出来ませんから湯煎から外し、クーベルチュールを足して温度を28度まで下げます。
 温度が下がったら30度まで温度を上げて、事前に丸く形を整えていたガナッシュをくぐらせます。それを網に乗せて余分なチョコレートを切り、ココアパウダーを塗して出来上がりです。
 
 箱に詰めるのが面倒だし恥ずかしい、という男性ならば透明なセロファンの袋につめて口をモールで閉じる、という手もあります。

 独身男性なら

「毎年貰ってるから、今年は俺が作った。」

 と言えば彼女が喜ぶかもしれませんし、既婚者ならトリュフチョコを冷蔵庫に入れておき、驚かせる、という手もあります。

 それを見た奥さんは、

「もしかして、これって・・・」

 驚く事でしょう。

「そうだよ、柄にも無いだろ、判ってんだ、判ってんだけどこういうのでしか表現できないんだよ、俺・・・」

「っていう事は・・・」

「そう、俺が作ったんだ・・・」

「じゃあ・・・」

「食べてくれよ、それしか言えないな。俺なりに頑張ったんだぜ・・・」

「じゃなくて!台所!洗い物までしてないんでしょ!ほら!どうすんのよ!こんなに散らかして!頑張るなら最後まで頑張りなさいよ!」

「俺なりの・・・頑張りで・・・食べて、ね。」

「さっき友達とゴディバのチョコ食べてきたからいらない。自分で食べなさいよ。」

「ビターなバレンタインだぜ・・・」

 こんな風にならない為に洗い物までキッチリしましょう、ね。男性諸君!










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料理に於ける愛情とは何か、それは神のみぞ知る

2011-01-20 22:45:03 | Weblog
 時として頂くご質問の中で「休みの日は家で料理を作るのか?」と「料理に必要なのは愛情ですか?」というのが一番多いように思われます。
 世間一般では「料理人は家で料理をしない。」という定説があるようですが、そんな事は無いと思います。料理人も家では料理くらいするでしょう、いや、すると思いますよ・・・しますよね、同業の皆さん。
 前に記事にもしましたが、仕事が終わるのが夜中だったりするものですから家族との時間が取れない事の「自戒」として、私は休日に料理を作ったりします。(勿論、何か用事(この場合、飲み会を指す)がある時は出来ませんが)
 特に「凝った料理を作る」というものではなく、ごく普通の夕飯を作るのですが、業務用に慣れている男の性、と申しましょうか、単位がデカくないと作る気になれないのですな。
 例えば「餃子」。餃子を作る場合、「仕込む」という言葉を用いてしまうくらいスイッチが入ってしまいます。
 豚挽肉を購入する時は「1キロから」という単位で買い、一人で黙々とファルス(仏語ですが詰め物の具の事です)を練り、淡々と皮で包み、すぐに冷凍、1回で約150個くらい仕込み、120個を冷凍する、という家族的にははた迷惑な事をしているわけですが
、私的には、

「餃子を作ろうか。→どうせ作るなら多めに。→多めに作ると残るかな?→残ったら冷凍し、家族がいつでも食べれるようすればいいじゃん。→残るのが前提だったら残るであろう分を予想して先に冷凍する?→その方が鮮度が良いうちに冷凍でき、後で調理しても美味しさ長持ちでしょ。→だったら大量に仕込んじゃう?→大量ってどれくらいよ?→挽肉1キロからでしょ、普通。→1キロ、行っちゃうか?→行っちゃえ、行っちゃえ!→でも、野菜も入れるともっと多くなるぜ。→大丈夫、大丈夫!イケ、イケ!→だったら、200個くらい目標にして包むか!→急げ急げ!時間がないぞ!→ウィ!」

 と、こういう思考が働くわけです。
 この時、どういうわけか、「悩む自分」と「煽る自分」がいたりするわけで、ハンバーグの時も、

「ハンバーグを作ろうか→どうせ作るなら多めに→多めに作ると残るかな?→バカだな、弁当とかに転用できるだろ。→なるほどね、だったらそれを前提として小さいのも作っとけばいいんだ。→ついでに俵型のも作ってリソレ(表面を焼き固める)して冷凍すればいいだろ。→おっ!それって冷凍のままキャベツで巻いて煮込めばロールキャベツ?→キャベツで包まなくてもそのままデミグラスソースで煮込んで煮込みハンバーグにも出来るぜ。→いいね!じゃあ、大量に仕込んじゃう?→大量ってどれくらいよ?→挽肉1キロからでしょ、普通。→1キロ、行っちゃう?→行っちゃえ、行っちゃえ!→でも、原価的に、どうよ。→バカだな、工夫して安く出来るだろ!→じゃあ、その辺も考えながら買い物に行くか。→急げ急げ!時間がないぞ!→ウィ!」

 と、このような流れになるわけです。
 まぁ、どうでもいい事ですけど・・・休みの日はこんな事も考えながら台所に立つ、という事ですよ。

 さて、前者の話が長くなりましたが、「料理に必要なのは愛情ですか?」という質問ですが、確かに必要ですな、「愛情」は。
 しかし、この場合、「愛情」の定義が曖昧なわけで、ただ「何となく入れてますよ、愛情」的なものでは全く意味がないと思われます。
 では、料理における愛情とは何か?これが一番難しかったりするわけです。
 家庭料理の場合、肉の一番美味しいと思われる部分を自分の子供に取り分けてあげたり、野菜を食べ易いように手間を掛けて調理したり、というある意味、母親の「自己犠牲」的な、その時は判らなくてもボディーブローのように後から効いて来るものを「料理における愛情」というのかもしれません。
 料理店の場合、お客様の「食べたいもの」を考え、そして、食材を集め、それを、家庭では再現できないような一品に作り上げ、喜んでもらえるような、そのために妥協しない精神、というのが「料理における愛情」なのかもしれません。

 それをもっと言葉に出来れば今以上になれるのでしょうが、残念ながら、私は模索している最中であります。

 「愛」や「ラブ」といった言葉が氾濫している昨今、「ラブ、注入!」などという言葉を信用してはいけません。

 もっと最終兵器的に使いなさい!

 私なんか使った事ないんですから、ここ最近は、その言葉。











 
 
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根気よく炒める事があの列車に乗らなくて済む事だと思う

2011-01-19 23:06:15 | Weblog
 雪国にとっては景色が白いのは出口の見えないトンネルのようなもの、そんな感覚に襲われそうになる今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 こんなくらい書き出しをすると、「店がヒマなのか?」などのお声を頂きそうですが、まぁ、それも一部にはありますが、今日の新聞に芥川賞を取った西村賢太氏の記事が載っておりまして、それを読んでしまった事が起因しているかもしれません。
 氏の芥川賞受賞作品「苦役列車」は、タイトルだけで落ちてしまいそうな気分になりますが、内容がまた暗い。
 友達もいない、恋人もいない、定職もない男の、世の中に対しての嫉妬に満ちた内容は、中上健二氏の短編小説「十九歳の地図」を髣髴させるものがありました、これもまた読んでいて辛くなりますぜ。
 「苦役(くえき。苦しい労働。懲役)」の「列車」、どんだけつらい列車なのか、どんな所へ向おうとする列車なのか、フッと思うだけで陰鬱な雰囲気に包まれそうであります。
 男を構成する3大要素が「友達」「恋人又は妻及び家族」「仕事」であると仮定した時、その3つとも手に出来ない、又は手放した人間が「苦役列車」に乗る事になるのか、と段々暗い方向へと考えが進み、自分は大丈夫なのか?と心配になってしまいます。
 今、それが揃っているからといって安心してはいけません、いつ、その3つを失うか、判らない世の中ですからね。
 何らかの揉め事で友達を失ってしまったら「苦役」へのイエローカードは1枚手にしてしまう事になりますから安心できません。
 仮に、会社を退職後、熟年離婚、という過程を踏み、気がついたら将棋を指す友達すらいなかった、となると一気に「苦役レッドカード」を突きつけられ、「苦役エクスプレス」に乗っていた、という事も考えられます、恐ろしいぜ、「苦役列車」。どうせなら各駅停車の「鈍行」でお願いしたいものです。
 そんな事にならないように、皆さん、仲良くしましょうね。

 さて、話は変わりますが、今日のビッグな仕込みは「オニオングラタンスープ」の「玉葱グラッセ」でありました。
 スライスした玉葱を飴色になるまで炒める作業は根気を必要とし、天から試されているのではないか、と勘違いする時すらあります。
 当店の場合、一回の仕込みで10個の玉葱(大きいものをチョイス)を使用しますから、鍋も一番大きいものを必要とします。
 玉葱を10個もスライスすると包丁を持つ手の筋肉が付きますし、大きな鍋を駆使して炒める時も腕にそれなりの負担がかかり筋肉が付くものです。
 この作業をしながら足の筋肉を鍛える「レッグマジックX」を使用したら全身運動になるのではないか、と常々思っておりますが、機械を使い足を横に動かしながら炒め物をしている姿は危ない人です、一応、想像するだけに留めておきたいものです。
 玉葱を炒める際は、玉葱の風味以外欲しくないですからオリーブオイルなどではなく、サラダ油を使用します。
 当店では、オリーブオイル、サラダ油、ヒマワリ油、自家製ラードと調理でオイルの種類を使い分けていますが、理由は長くなりますから今度説明しましょう。
 スライスした玉葱を炒め水分を飛ばすと糖分が出てそれを弱火で根気よく炒めるとカラメリゼされる事になります。
 よく「カラメル化するのと焦げはどう違うのか?」という質問を頂く事がありますが、「カラメル化」は、糖分に加熱して「飴状」にする事で、その状態を超えると「炭化」、つまり「焦げ」となるわけです、前者は「甘みの中に微かな苦味と酸味があるもの」で後者は「苦味の中に嫌味と焦げ味がある」と言うと判りづらいですか?もっと判りやすく言うと後者は「ただの失敗作」です。

 飴色に炒めた玉葱にフォン(だし汁)を加え、更に煮詰め、味を調え器に注ぎ、スライスしたパンの上にチーズを乗せたもので蓋をしてオーブンで焼き目を付ければ「オニオングラタンスープ」の完成です。

 寒い日の夜食などにもってこいでしょう。

 このスープは「飴色の玉葱」「フォン又はコンソメ」「チーズ」が無ければ成立しない料理です。

 その3つとも揃わない場合は・・・

 「苦役列車」に乗ってもらいますか。









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基本的な仕事の積み重ねが料理になる、というのを知る

2011-01-18 20:52:45 | Weblog
 シンシンと降り積もる雪が街の喧騒のクッションとなり、雪国特有の静けさを醸し出している今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 山形市内はそれほどでもありませんが、新庄、置賜では1メートルを超える積雪だそうで、昨年末の雪の無さを心配して損した、くらいの勢いではあります。
 さて、先日も書きましたが、一昨日は村山市の「たも山」という地区で料理教室がありましてお邪魔しました。
 「キッシュ・ロレーヌ」と「ロースト・ポーク」を作りながらそれにまつわる話、例えば「キッシュとはドイツ語でケーキを意味するクーヘンが語源」や「豚の塊肉を調理する場合は肩ロースが適している」などを説明しながらの進行でしたが、参加者の殆どが不惑の年齢をとうに越された主婦の方々でしたので、キッシュの生地を叩いて延ばす場合、「旦那さんの顔を思い浮かべて叩くとうまく延ばせる。」や、ベーコンと玉葱を炒める際、オーバーアクションで炒め「顔がブサイクですから炒める時くらいカッコ良くしないと。」などのお約束なネタも混ぜ込みながらの講習となったのでした。
 事前にキッシュの生地「パート・ブリゼ」とタルト型は用意して行きましたので、パートの作り方を簡単に説明し、生地延ばし、生地を型に敷く「フォンサージュ」、生地を休ませている間に豚肉に塩をしてフライパンで表面を焼き固める「リソレ」、肉を休ませて5分焼いて5分休ませる、という私的解釈によるローストなど、前菜「キッシュ」、主菜「豚肉のロースト」という作業を工程を分割しながら同時進行でこなしていきました。
 焼き上げたキッシュを冷ましている間に豚肉の付け合わせ(じゃがいものヴィネガー風味、人参のグラッセ、ほうれん草のソテー)をし、全て同時に仕上げ、試食、歓談の後、参加者全員にお見送りしていただきながら会場を後にした次第でした。
 参加していただいた方々、市役所の皆さん、そして、主催してくださった方々、有難うございました、楽しい一日でした。またお声掛けくだされば、今度は「先日断酒」で伺いますのでよろしくお願いいたします。
 村山市を電車で後にして、天童市で下車した我々(私とマネージャー)は、すぐにタクシーをゲットしとあるレストランへ向かいました。
 その時、午後3時20分、そのレストランは午後3時にランチ営業が終わりでしたが強制入店し、ワインをねだり、「懇談会」という名の強制飲み会を決行したのです。(普通、無しですよ。今回はレストラン店主様の寛容な計らいにより実現できたのです)
 その後ももう一軒お邪魔し、帰宅しましたが、お世話様でした、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。
 今回初めて「料理教室」での仕事(講習)をしてみて、基本的な事(まな板に対しての立ち位置、玉葱などをどこまで炒めるか、など)の積み重ねが重要である、と再確認したものでした。
 味がぼやける、味が決まらない、などは必ず何処かに原因があるわけで、そこを探ると大抵、基本的な作業のミスが要因となっている事が少なくありません。
 自分の仕事も再確認し、驕る(おごる)事無く、実直に仕事をすべきだな、と考えさせられました。正に「教える事が教えられる事である」というものでしょう。

 機会があれば当店でもやりたい、と思いましたが、

 需要がないんですな。

 とりあえず、ブログで作り方を説明している時もありますから、それでよし、という事で。










 
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お知らせ

2011-01-16 14:16:45 | Weblog
 お知らせで申し訳ありませんが、本日はランチ、ディナーともお休みとさせていただきます。
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説明の多い料理店、というのは楽しいかもしれない

2011-01-15 21:43:46 | Weblog
 先日、本屋さんへ料理本を見に行った所、料理本を見る前にとんでもない物を見つけてしまいました。
 私は一旦、それを見なかった事にしてその場を走り去りましたが、どうしてもそれが頭から離れずにいました、いましたところ、マネージャーがその話を振ってきたのです。
 数日後、私は本屋さんへ行き、他の本には目もくれずすぐ目的のそのコーナーに行き、それを手にしてレジへ向かったのです。
 レジへ向かう道すがらチラッと中身を見てしまいましたが、見て尚、危険だな、と思ってしまったのです。
 興味の無い人には全く興味が無いでしょう、女性ウケは全くありません、でもいいんです、もう、一度それを手にしてしまうとどういう事が待ち受けているのかも心しています、家族の反対に遭うかもしれません、でも決めたんです!買いますぜ!隔週発売の「男はつらいよ」DVDマガジン!
 月に2回発売するから、といっても映画「男はつらいよ」は50作品近くあるためかなりの長期戦を要する事は大決定です。
 うちの奥さんからは「何が良いのか判らない。」「毎回、同じ内容ではないか。」など反「トラジラー(寅次郎ファンをこう呼ぼうではないですか!)」な意見をブチかましてくれましたが、いいじゃないですか!男はつらいんです。
 どんな作品でも勝手に恋をし、そして勘違いをし、そして毎回、妹「さくら」や葛飾柴又「とらや」の人たちを引っ掻き回す。しかも、恋が成就したためしがありません、いいんです、寅さんは独身主義なんです、ワイルドな草食系なんですよ。
 今、あの人が現実に存在していて飲みに行った際、カウンターで隣り合わせになってしまったら、邪険にしてはいけません、話を聞いてあげましょう。
 「おお!聞いてくれるか、青年よ!」などと言いながら自分の話ししかしないでしょう、我が道を行ってるぜ!寅さん!
 「自分の話しかしない男なんてサイテー!」そんな事を仰る女性の方がいらっしゃるかもしれません、しかし、人は皆、自分の話ししかしないものですよ、他人の話しかしない人の方が信用なりませんぜ。
 そんな素晴しいDVDを見ていると、話口調までうつってしまいそうです。
 仮に、そんな寅次郎なフレンチのサービスの人がいたらどうでしょうか。
 
 何気なしにフランス料理店に入ってきたカップルを出迎える主人。その声は温和だが何かクセがあります。

「あいよ、いらっしゃい。」

「あの・・2人なんですけど・・・」

「席なんて一杯あるよ。椅子なんて~のは座る為にあるもんだよ、おふたりさん。」

「は、はい・・・」

 適当なテーブルを見つけ着席する2人

「今日は何が食べて~んだい、おちよちゃん。」

「私、ルミですけど・・・」

「お~、そうかいルミちゃんて~のかい、そりゃ、悪かったな。おい!源公!早く水持ってきやがれってんだ!」

「・・・・・・」

「今日は何かい?記念日か何かかい?」

「えぇ、彼女の誕生日なんです。」

「お~、そうかい、ルミちゃんの誕生日かい。で、何食べるんだい?」

「すみません、この“小鳩のローストサラダ仕立て モモ肉のクリスティヤン添え ノワゼット風味のソース”っていうのはどういう料理なんですか?」

「これかい?これはな、鳩の子供がパタパタ、パタパタって飛んでるのを猟師が捕まえるわけよ。それをこうやって一つ一つ羽をむしるわけだ、ほうちょうい~っぽん、さらしにまい~て~♪ってな。」

「そこからの・・・説明ですか・・・」

「細かい事は気にするもんじゃね~よ、青年。それでな、小鳩の首を落とすわけよ、これがまた切なくてな!涙、涙の物語なわけだ、ハトさん用意はいいかい?待っとくれよ番頭さん、おいらの首は落としてもお前の垢は落とせね~、風呂入って出直してきな!ってなもんだよ。」

「早く・・・料理の説明を・・・・」

「判ってるよ、判ってるって。いいかい、これからが山場だ、小鳩の足の股の部分にスルリと包丁を滑らして、ググイと手で返すと関節が見えてくる、この関節にスッと包丁の先を入れてやる、痛さも感じさせぬこの仕事、チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姉ちゃん立ちションベン、結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りは・・・」

「もういいですよ!」

 
 こんな事になりそうではないですか。

 でも、そんなお店があったら楽しいとは思いませんか?

 えっ?思いません、そりゃそうですよね。

 








 
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