ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

寒い日のひとり酒。その時に飲む酒は何か、そして音楽は何か、

2021-01-26 17:17:43 | Weblog
 鼻から息を吸い込むと鼻の奥がツーンとした爽快感とも冷刺激とも言えぬ独特な感覚に見舞われ、口から吐く息は思ったよりも白く煙り、夜空を見上げるといつもより綺麗に見える星空に「あぁ、大気が乾燥していて透明度が上がっているのだろうか・・・」と夜の帰宅途中に何となく得したような気持ちにさせられるそんな今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 寒いです、とにかく。外はもちろんの事、家の廊下や風呂場はともかく厨房までもやけに寒いです。そんな寒い厨房なのにTシャツ一枚にエプロンで仕込みをしているので(勿論ですが、下はパンツ等を履いてます。営業時間になる前にコックコートを着ます)業者さんらが品物を持って来てくれると驚きを隠しながらも「元気ですね」や「若いですね」と声を掛けてくれるのですが、実際、元気も若さもありません、ただこの格好の方が仕込みするのに都合が良いからそうしているだけで魚の下処理をしている時は寒さに打ち震えながら涙目で作業をしているのです。(ちょっとだけ大げさですがあながち間違いではありません)
 時々、「暑い夏と寒い冬、どっちが好き?」などと訳の分からない二者択一の質問をしてくる御仁がいらっしゃいますが、ハッキリ言いましょう、どっちもイヤです。敢えて言うなら「それを聞いて誰がどんな得をするのか?」逆にそう問いたいものです。
 しかし私もいい歳の大人、例え話に逆ギレするようなそんな人間ではありません。そんな時はこう答えます。

「そうですねぇ、私は8月の真夏生まれですから、どちらかと言うと寒い冬の方が許せるかも知れません。」

 全く答えになっておらず、ややもすれば「何言ってんの・・・」と呆れられるでしょう。しかしながら真夏生まれだからといって暑さに強いわけではなく、全身汗だくでいるよりは「お〜、寒い寒い・・・」と言っている方がまだ許せるのかな、と思っただけであります。だからと言って極寒が好きなわけではありません、全く。
 ただちょっとだけ冬の寒さを許せるとしたら寒い日に飲む燗酒がやけに旨く感じることでしょうか。(その反対は暑い日に飲むキンキンに冷えた生ビールが挙げられます)
 燗酒を熱めに注文しお猪口に注いで口に近づけただけで冬感は爆発的に増し、ちょっと飲んでみて「熱っ!」と独り言のように呟いた時の風情は完全にドラマの一場面の様相を呈します、何のドラマか知りませんが。(無責任)
 その時のつまみは「炙った烏賊」だったり「烏賊の塩辛」だったり渋い烏賊関係でもいいのですが、焼き魚や煮魚でもいいと思うのですよ、「舟唄」じゃないんですから。
 私的には「お浸し」のような野菜ものと燗酒が抜群なマリアージュだと思っております。日本酒には野菜というのが私の持論です。
 まぁ、日本酒のつまみは考えればキリがありませんが、ではそのシチュエーション(寒い日に燗酒を飲む、というシチュエーション)にはどんな音楽が合うでしょうか?
 勿論「無音」というのもアリなのでしょうがこの場合は「ひとり酒」であるのが絶対条件です。(突然ひとり酒縛り)そんな中で「無音」でひとり燗酒を煽るような飲み方をしてしまってはイヤな出来事しか思い出さずすぐにベロベロに酔っ払ってしまいます、気をつけたいものですな・・・
 寒い日、しかも夜、一人で燗酒を飲んでいる、そんなシチュエーションには演歌しか合わないのは誰しもが分かっている事なのですが、もっと変化球的な音楽は合わないのでしょうか?
 考えるにそのシチュエーション(もうお分かりですよね)に「演歌が合う」と思ってしまうのは日本人の根底に刷り込まれたサブリミナル効果のようなもので、まさにドラマなどで観た場面とその時の音楽が一体となって潜在意識にブチ込まれているからだと思うわけで、それらがワンセットという意識が日本人にはあるわけです。
 そこに変化をもたらしたい、そんな自分勝手な事を私は考えたのですが、だからと言ってそこに無理矢理サンバなどを持って来ても違和感しかないわけです。そこで「寒い日」「夜」「燗酒」「ひとり酒」「塩味の濃いつまみ」に合う音楽、しかも「演歌以外の音楽」を考えた時に必要な要素は「悲しさ」だと私は考えました。(これは完全に私個人の考えですのでご了承ください)
 先に述べました「サンバ」に違和感を覚えてしまうのはそこに「悲しさ」が存在しないからだと思うのです。やけに明るく「コンコンココンコンコンココン!」と乾いたようなリズム、「ピーピーピーピ、ピーピーピピー!」甲高いホイッスル、日本酒には合いませんな、「寒い日」と「夜」のキーワードにも合っていません。
 クラシック音楽という手もありますが曲によっては荘厳すぎて酒を飲みながら自戒してしまうではないですか、それでは。しかも、クラシック音楽だったらやっぱりワインでしょう、そういう時は当店でお願いします。(軽く宣伝)
 
 では何が?
 
 私個人の考えですが(ずっと言ってます)「アルゼンチンタンゴ」なんてどうでしょうか?

 ちょっと悲しみを帯びたマイナーなメロディー、なぜか心に染みるアコーディオンオルガンの扇情的なソロ、哀愁のある女性ボーカリストのボーカルヴィブラート、ひとり酒にはもってこいの音楽だと思うのですが、ねぇ。

 ただ、やっぱりこれもワインの方がよろしいのかな、と。

 ここまで考えながら文章を書いていたのですが、燗酒飲む時に演歌以外の音楽を探す事自体意味があるのかな?と思い始めている自分もいるわけですよ。(コラ!)

 「寒い日」「夜」「燗酒」「ひとり酒」というシチュエーションには「演歌」が最強、という事ですな・・・

 散々書いといてこうなっちゃいました・・・すみません、くだらない話で。

 とりあえずこんなブログですが、今年もよろしくお願いします、という事で。

 気が向いたら更新しようと思いますので。





 
 
コメント
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