ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

調理に必要なのは想像力を超えた「妄想」だろう

2011-05-31 23:03:01 | Weblog
 肌寒さがぶり返してきたかのような5月最後の日、明日から衣替え、と言われても説得力のない今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 今までですと「明日から衣替え」という言葉を聞いただけで「そうだよな、それくらい暖かくなってきたもな・・・」と漠然と思ってきたものですが、どうですか、この肌寒さ、ここから一気に来るんじゃないでしょうな、暑さが。
 日々、電力不足懸念の情報が流されておりますが、もう、あれだけ無尽蔵に出来るようなアトミックなエネルギーに依存していたら、自然エネルギーに切り替え、と言われても代替エネルギー施設がどれだけ必要なのか、と思ってしまいます。
 私的には、太陽光パネルを張り巡らせたメガフロートを何艘も作り、日本の周りに停留させておくと太陽光エネルギーを思いっきり摂取でき、且つ、海面温度の上昇を防ぐ、まさに自然に優しいエネルギー計画ではないか、と考えられますが、建設費用の事を試算すると財政には優しくない計画でしょうな。
 余談ですが、「鉄腕アトム」の名前は「アトミック(原子力)」から来ているそうですが、老朽化したアトム暴走、などの想定はしなくて良いのか?と何となく思ってしまった次第です。
 
 さて、話は変わりますが、先日、山形牛ランプ肉の話を載せたところ、当ブログを全く読んだ事のない、いや、読む意思がない常連の方や遠方からいらした方から注文を頂きました。
 暗に「山形牛ランプ肉あるから来てね。」という情報をブログに流したのですが、読んでいない方からの注文、すれ違いの純情ですな。
 有り難い事に皆様に喜ばれましたからホッと胸を撫で下ろす事ができましたが、特に県外からいらした方(クラシック音楽関係の方)は山形牛に興味を持たれたようですので、県産畜産物のPRをする事に成功しました。(結構、大げさ)
 先日書きましたように、元々、精肉屋さんが生食用に仕入れたものですから物には絶対の自信はあったのですが、いまだに緊張するものであります、肉を焼く時は。
 これ以上火を入れると焼き過ぎて硬くなりそうだがこれ以上火を入れないと生っぽい印象になる可能性がある、どうする?俺?という刹那的な気持ちになりながらの作業は、友達以上恋人未満、などという曖昧さ所ではありません、当然ですけどね。
 因みに、昔、国生さゆりが「コレ以上アレ未満」という歌を歌っていましたね、どうでもいい余談ですが。
 それはさておき、人それぞれでしょうが、肉を焼いている時(この場合、肉の種類は全般的に)の焼き加減を見るのは金串を指して中の温かさを計る、というのが一般的なようですが、私はそれをしません。
 理由としましては簡単です、肉汁が流れる原因を作るからであります。
 私のイメージですが、肉を焼く、という事は、肉の表面は焼き固められ肉の中の繊維との間の水分が温められ肉に火が入り始める、というイメージであります、あくまでも私のイメージですがね。
 その「温められた水分」というのが所謂(いわゆる)「肉汁」になるわけですから、肉の繊維と繊維の間を駆け巡っている温かい水分、つまり、肉汁を含んでいる所に金串を指してしまえばそこから肉汁が流出する事は容易に想像できます。
 肉汁が流出してしまえば租借した時に多く感じるのは水分よりも繊維、そうなると肉の食感がパサついた感じになるはずです。
 そうならないために金串を指さないのですが、では、どうやって肉の火の入りを確かめるのか?これも一般的ですが、触って確かめるしかないのです。
 「触診」ではないですが、触ってみて中がどういう状態になっているかイメージするのです。
 この柔らかさだったらまだ繊維が縮んでいないな、ここまで硬くなれば繊維が縮み、中の水分が温められているのではないだろうか、といったように、中ではこういう事が起こっているのではないか、というのを仮定して調理を進めていきます。
 今、肉の内部はこれくらいの暖かさだろう、内部の水分が温まりグルグル動き回っているのではないか、フライパンの接地面が過度に火が入っているかも知れない、焼いて休ませているが食事の進み具合でもう一度オーブンに入れ温めるがこの一度で火は入り過ぎないだろうか。
 肉を焼く、という事は肉に気を使い子供のように可愛がり、その成長を見守る、というのとほぼ同じのような気がします。
 
 そして、提供する段階になりナイフを入れる時、こう思うのです。

 頼む!断面の綺麗な笑顔を見せてくれ!

 毎回、そのような緊張感を持って望む肉焼き、忙しい時は胃が痛くなりますが、断面の笑顔を見た時はそれまでの事が帳消しになるくらい嬉しいものです。







 ここまで読まれてお気づきになられたと思いますが、肉焼きには、良く言えば「イメージ」「想像」、悪く言えば「妄想」が必要なのです。
  
 いや、肉焼きに限らず、調理全般には「妄想」が必要でしょう。

 「妄想」、私的にはそれほど苦労するものではありません。

 なぜかって?このブログも相当入っていますからな、「妄想」が。
















 


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「馬鹿」と「バカ」の違いは何か、それを考えたい

2011-05-30 11:00:50 | Weblog
 私事で何ですが、昨年「不惑の歳」に突入し、今年、いや、まもなく「バカボンのパパ」と同じ年齢になろうとしております。(アニメーション「元祖天才バカボン」のエンディング曲で年齢を開示していた)
 「天才バカボン」と言えば、初代のテレビ版のオープニング曲の歌詞「西から昇ったお日様が、東へ沈む・・・」というフレーズが有名でありますが、それを真に受けて学校のテストなどに引用し思いっきり間違った同級生がいた事を思い出してしまいます、彼は今、何をしているのでしょうか?今でも西から日が昇ると思い込んでいると本物ですな。
 「天才バカボン」のオープニング曲は更に続くと「これでいいのだ」を連発しますが、最後に「天才一家だ、バ~カ、ボンボン!」で〆られます。
 子供の頃は聞こえたものを、歌詞が間違ってるにも拘らず、聞こえたとおりに歌う、又は思い込む、という恐れを知らない時代でありますから今、思い出すと笑えたりするものです。
 「巨人の星」のオープニングに出てくるグランド均し(ならし)の「ローラー」を「重いコンダラ」だと思った人は相当数いらっしゃると思いますが、「ルパン三世」のCM前の一言も「ルパン・ザ・サード」だと聞き取れなかった方も多いと漏れ聞きます。
 「天才バカボン」のオープニング曲の「日の出が西、日の入りが東」というのを真に受けた私の同級生は最後の「天才一家だ、バ~カ、ボンボン!」のフレーズを「天才以下だ、バ~カ、ボンボン!」だと思っていたそうです。
 「天才以下」を全て「バカ」とカテゴライズしてしまう、というかなり危険な思想がそこには見え隠れしますが、それを聞いた時、失礼ながら腹を抱えて笑い転げてしまいました、俺もまだ未熟だぜ。
 しかし、改めて「バカ」を考えてみると意外に深い、と言いますか、大げさに言うとそこに真理があるようにも感じます。
 「バカ」を辞書で調べると

「馬鹿 莫迦 おろかな・こと(人)、つまらないこと、役に立たないこと」(デイリーコンサイス国語辞典より引用)

 と載っていますが、散々な言われようですな、「バカ」は。
 事の大小はあるでしょうが「おろかなこと(人)」は確かに「バカ」かもしれませんが、大きすぎるとただの「犯罪(者)」になってしまい「バカ」の範疇ではなくなると考えられます。
 「つまらないこと」が「バカ」かどうかは疑問でありますが、そういう人だっているわけですから大きな目で見てあげる事が必要でしょう。
 「役に立たないこと」は・・・確かに「バカ」かもしれませんね。しかし、最初から「役に立つ」人がいるのか?その辺の疑問はクリアしておりません。
  
 そう考えると、「バカ」が悪いものにも思えなくなりますが、得をする人間にも勿論、思えません。
 その定義で行くならば、料理の世界に入った当初、私は「バカ」にカテゴライズされる人間だったように思うのです。
 仕事に真意が判らず適当にこなしていただけの「おろかもの」で、中学を出たばかりで知識がないのはご愛嬌ですが時間を有効に使えなかった「つまらないヤツ」、鍋洗いしか与えられない事を理由に仕事全体の流れを見ようとしなかった「役に立たないヤツ」、確かにそんなものでした。
 しかし、それは誰でもそうであって、最初から「バカ」ではない「天才的」なヤツなどいないのが一般的です。
 幸い、私の場合、理解のある先輩方がいらっしゃいましたから鉄拳制裁で矯正して頂きましたが、今も若干、残ってはいるんでしょうね、私の中に「バカ」が。
 「お前はバカなんだからもっと勉強しなさい。」「お前はバカなんだからもっと本を読みなさい。」「お前はバカなんだから人より努力しなさい。」というお言葉はよく頂いたセリフでありますが、今もその言葉は守っているつもりです。

 なぜ、そんなセンチメンタルな事を書いたかと言いますと、実は、先日、修行時代の仲間の方がご来店くださいましてそんな話になったのです。

 不惑の歳に突入し、誰も「お前はバカなんだから・・・・・しなさい。」と言ってくれる人がいなくなった現在。昔、言われた言葉を思い出して更に勉強しなければならないな、と気持ちが引き締まる思いでありました。

 「バカ」は意外に良いのかもしれません。

 上に目指す事ができますからね。

 それより、悪魔の原子記号の集合体を操る事ができず、事故当初の「言った」「言わない」の押し問答を繰り返している人間の方が勉強のできる辞書的な「馬鹿」なのかもしれませんな。
 




















コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初めて当ブログを読まれる方へ。長いですよ、文章が

2011-05-27 14:45:55 | Weblog
 今年度、会社や学校に入った人達の冠からそろそろ「新入社員」又は「新入生」という名称が消えつつある今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 今年は静寂の中で新人歓迎会が執り行われたと思われますが、酒宴の席で真面目な話ばかりする人は敬遠されがちになり、バカな話ばかりする人は本当にそういう人だと思われますから会話というのは難しいものです。
 そんな時、ちょっとだけ知識があるようなクイズ形式の話題で話の流れを変えると新鮮さが生まれるのではないか、と考えられます。
 しかも、その問題に答える人が珍回答をしてくれるとその場の盛り上がり方は右肩上がりになるでしょう。
 その問題は、ちょっとだけ聞いた事がありそうで意外に答えが出てこないものがベターだと考えられますが、私の経験則で行きますと「各国の首都当てクイズ」みたいなものだと年齢問わず楽しめるようであります。
 判りやすい所から始めると徐々に盛り上がると思うのですが、稀に初っ端からつまずいてしまう事もありますから出題者はアジア系から攻めたほうがいいでしょう。
 例えば、「中国の首都は?」という出題で深く考え込んでしまう人はそれほどいないと思われますから近隣諸国から出題する事をお勧めしますが、昔、同じシチュエーションで「上海!」と何の迷いも無く答えられた事がありましたから人は判らないものです。
 「中国の首都は?」「北京!」、「タイの首都は?」「バンコク!」、「韓国の首都は?」「ソウル!」などの日本でも知名度のある国から行くと良いのですが、知っていると思って「カンボジアの首都は?」や「ネパールの首都は?」など最初から自分の興味のある所を言ってしまうと盛り上がりませんから気をつけたいところです。
 因みに、「ビエンチャン」と「カトマンドゥ」ですね、上記の答えは。

 「各国首都当てクイズ」よりももっと知識がありそうな質問は、「正式名称当てクイズ」になるのですが、これは上級者向きでありますが、答えによっては盛り上がれるクイズでになるのです。
 例えば質問はこうなります。
 
「『WHO』は『世界保健機構』、最近話題の『IMF』は『国際通貨基金』、では『NATO』は何でしょう!」

 興味がないと全く盛り上がれないクイズでありますが、ここで

「エ~ッ?!『NATO』?ネバネバするヤツ?」

 などと誰かが答えてくれると、「それは、大豆発酵食品だろ!」とツッ込む事ができ楽しいのですが、逆に

「北大西洋条約機構の略ですよね。」

 と真面目に答えられると微妙な空気になるわけです。

「車に搭載されている機能で『ABS』というものがありますが、さて、何でしょう!」

 これも正しく答えてくれない方が盛り上がる。

「『ABS』?『オート・ブレーキ・サービス』?」

 くらいの、よく考えると大変な事になるようなものを提示してもらった方が盛り上がるでしょう、しかし、

「違うよ、『アンチロック・ブレーキ・システム』の略だろ。」

 などと水を差すヤツがいると一瞬にして場が盛り下がります。

 やはり、「新入社員及び新人」改め「若者」は、気を使って間違えるくらいの方が世の中うまく渡れる、という事でしょうな。
 こういった酒宴の席で世渡りを覚える、というのも習得していただきたい社会人の技であります。

 さて、話は変わりますが、先日、山形情報誌「ゼロ・ニィ・サン」の取材がありました。
 今回号は「七日町特集」だそうで、有り難い事に当店も掲載していただけるようですが、沢山の飲食店さんが載るそうですので是非、ご購読していただければ幸いです。
 当店の料理写真は「前菜」と「メイン」の2皿ですが、当ブログでも載せた事のある料理が写真として掲載される予定ですので、「同じ料理か!」などとご指摘なさらないようよろしくお願いいたします。
 確か、今日発売だと思いましたので、この記事をお読みになられた方で当ブログのマニアな方がおられましたら早速、各書店、コンビニへダッシュされる事をお勧めいたします。
 
 ただひとつ心配な事があるとすれば、店舗情報には当店ホームページのURLも掲載されますのでその流れでこのブログに辿り着いて読んでみたら「何なんだ?!このブログ?」などと失望されない事を祈るばかりであります。
 
 当ブログの読後感は賛否両論でありまして、「まぁ、面白いかな。」となる方と「こんなに読めるか!」「回りくどくて全部読めない。」とストレートに仰る方に二分されます。

 その昔、広い読者層開拓のため文章を短めにしようと画策し、実行した事がありましたが、3日くらいしか持ちませんでした。

 キーボードを打っていると止まらなくなるんですな、ロマンチックぐらいに。

 それ以来、「どうせ止まらないなら長くしてしまえ!」という気持ちが芽生え、ブログ開設当初の4~5倍の長さになってしまい現在に至ります。

 ん~、もしかすると、これが一番のストレス解消かも。


















 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

訳アリ肉を取るのには男気が必要だ。そう、それは無償の愛のように

2011-05-26 15:28:35 | Weblog
 先日、とある店から玉葱を注文された青果業者が新玉葱を持って行ったところ「普通の玉葱に取り替えろ!」と恫喝された、という話を記事にしましたが、飲食店裏話的な内容だったためかコメント、その他で微妙に反応がありました。
 中には「恫喝したのは何処の店だったのか?」などの詮索も入りましたが、残念ながらどちらの方なのかは当方では判っておりません、業者の方も「あるお店」としか言いませんでしたし。
 青果、精肉、鮮魚関係の業者の方は季節などで物の内容が若干変わってしまう商売なので大変だな、と思うのですが、世の中の事件や情報の影響も受けやすいところもあるのがもっと大変であります。
 鮮魚でしたら津波被害で魚介及び魚介加工ものが、青果でしたらアノ放射能の心配が、そして、精肉は「ユッケ」が、それぞれ違う形、見えない形で何らかの影響を及ぼしているのであります。
 当店の電話ではなく、私個人の携帯の電話が鳴ったのは土曜日の夕方、仕込みの最中でした。
 電話の発信者は取引している精肉店専務(意外に若い)からでしたが、私個人の携帯に、しかも、どこか不安げな声での挨拶から何らかの頼み事ではないか、と私は察したのです。
 少し遠回しな言い方で会話は始まったのですが、ストレートに解釈すると話の内容は「肉を買って欲しい。」というものでした。
 聞いてみると「ランプ肉の塊を取ってもらえないだろうか。」という事でしたが、肉がダブついている、を示唆する内容で、しかも、「ロース」や「フィレ」ではなくなぜ「ランプ」なのかは話を全て聞かなくても大体想像がつきました。
 賢明な方なら、いや、賢明な方でなくてもお判りでしょうが、先日起きました、焼肉店に於ける生肉提供後食中毒に関する業務上過失致死疑惑事件が発端となっているのであります、事件名称を略すと「焼肉えびす」でしょうな。
 精肉店専務氏が説明したのはこうであります。

「保健所の、生肉提供店及び生肉提供しているであろう店舗に緊急立ち入り検査を行った結果、店側が生肉提供を自粛するようになった。イチボ、ランプ、内モモを生肉用として卸していたが、イチボは高級店で需要があるらしく今でも卸している。しかし、ランプ、内モモを使用していた店が自粛するようになり注文が激減した。ランプ、内モモを焼肉で使用する店はほとんどなく、ローストして使用する店もあまり無い。ですから、お付き合いいただけないでしょうか。因みに、肉は山形牛の4番です。」

 というものでした。

 当店はこちらの精肉業者さんから山形牛を取っておりましたから何も問題は無いのですが、ランプ肉、と限定してきたのには理由があるのです。
 通常、塊肉は卸の段階で「ランプだけ」では流通していませんし、「ランプ」という名称ではデカイ単位では流通していません。
 ランプとイチボと言う部位はワンセットになっており、名称も「ランイチ」という名で流通しております。
 私達店側は「ランプが欲しい」と言えばランプの塊肉を取る事ができますが、「ランイチ」を崩して「ランプだけ」となると手間賃なども発生して料金的に割高になるのです。
 ですから当店では「ランイチ」の状態で取っているのですが、他店舗では敬遠されているようです。
 それは、「ランイチ」が7~8キロという大きな単位であるため商売上リスクがある、というのがひとつ、もうひとつはランプとイチボを分割するのに技術が必要、という理由があるからであります。
 分割の技術はやり込んで肉の構造を理解すればそれほど難しいものではないのですが、やはり商売上リスクでしょう、値段も値段ですからね。(当店もリスクを抱えながら営業して大変なのをご理解ください)
 話を戻しますが、イチボを生肉として提供している高級店さんが「イチボ」を注文する→精肉店さんが卸業者さんから「ランイチ」を取る→「イチボ」が売れる→「ランプ」の注文が激減→「ランプ」残る→また「イチボ」の注文が入る→精肉店さん、また「ランイチ」を取る→「イチボ」が売れる→「ランプ」は残る・・・というバッドスパイラルが構築されてしまうわけです。

 生食の肉には絶対の安全など無い、という話を聞いた事がありますが、その言葉を理解し衛生に細心の注意を払っていた生肉提供店まで今回の事件に巻き込まれたような気がしました。

 そして、連鎖的に店舗に肉を卸していた業者の方も被害を貰った形になったのではないでしょうか。

 電話で話をしているうちに精肉店専務氏は「来週、直接説明しにいきます。」と言い残し電話を切り、昨日、来て更に話をしたのですが、私は言いましたよ、「売れなかったら全部、引き取る覚悟はありますよ。」と。

 欲しい肉を捜してもらったり、集金を待ってもらったりした時もある仲ですからここで男気を見せないでフランス料理も何もないでしょう、肉メインなのに。

 という事で、山形牛ランプ肉常備しておりますので如何でしょうか。

 投売りは牛に失礼なので致しませんが、何らかのサービスはさせていただきます。

 団体様なら量でサービスして、カップルのお客様ならソースにトリュフでも効かせて、1人のお客様には・・・サービス・スマイル、という事で、如何でしょうか?

 えっ?スマイルはいらない?

 じゃあ、サービス・トーク、でお待ちいたしております。
















  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

店内の即席冷却システムを考えてみる

2011-05-24 22:04:37 | Weblog
 陽射しが心地良く、風が爽やかに駆け抜けていくような5月になりましたが、もう、梅雨が差し迫っているような今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 冬の寒さからやっと脱却できたと思ったら、梅雨入りしている所があるそうで、気持ちの良い天気は続かないのか、とちょっとブルーになってしまいます。
 梅雨入り、という事は、その後には「夏」が待ち受けているわけですが、「夏の節電」が叫ばれている、いや、節電しないヤツは非国民、くらいの勢いがある昨今、レストランではどのような対策を打ち出せば良いのでしょうか。
 「一部電気を消して営業」というのが判り易いのかも知れませんが、「電球切れてますよ。」などとお客様に指摘される恐れがありますから張り紙をしなければなりません。
 しかし、「電気を消して営業しているレストラン」というものほど物悲しげで寂しさ混じりの飲食店はありません。
 レストランというのは何かしらの収穫(この場合「明日への活力」や「口説き成功」などを指す)がなければ行った意味のない所ですから、そこで悲哀を吸収してしまっては消化不良をおこす、というものでしょう。
 「クーラーの温度設定」というのも大事でしょう。しかし、ある程度は涼しくなければせっかくのお洒落が台無しになります。
 どうしますか?卸したてのシャツが汗でビシャビシャになったら。どうしますか?近年稀になく決まったメイクが汗でドロドロ溶け出したりしたら。
 そうならないようにクーラーの温度設定により暑くなっても汗が引くようなサービスをしたいものです。
 例えば・・・そうですね、これはどうですか?

「すみません、暑いんですけど、ここ。」

「申し訳ございません、只今、当局の指導によりクーラーの温度設定を決められておりましてこれ以上、涼しくする事が出来かねる状態でございます。

「じゃあさ、料理来るまで何かないの?涼しくするもの。団扇(うちわ)とかさ。」

「少々お待ちください。」

「お待たせいたしました。こちらをどうぞ。」

「何?この茶碗。アチッ!スゲー熱いんだけど。」

「お客様、粗茶でございます。」

「何でこんな時、クソ熱いお茶なんだよ!」

「昔から、暑い時には熱い物、臭い物には臭い物、と言いましてですね、どうですか?汗がお引きになられたのではないでしょうか?」

「なるか!他に何かないのか!」

「少々お待ちくださいませ。」

「何なんだよ、まったく。」

「お客様、失礼致します。」

「はいはい、イテッ!何すんだよ!」

「警策打ち(*)でございます。心頭滅却すれば火もまた涼し、と言いまして、警策は文殊菩薩の手の代わりとされておりまして・・・」

「知るか!いきなり肩打ちするなよ!他にないのか!」

「少々お待ちくださいませ。」

「失礼な店だぜ、まったく。」

「お客様、こちらはいかがでしょうか。氷水で足をお冷やしください。」

「おぉ!これはいいだろ、冷たくて。いいね、いいね。」

「先ほどまで、あちらの方がご使用になられておられたものですが・・・」

「ふーん、あのおじさんが?」

「えぇ、水虫だそうですが・・・」

「バカヤロウ!それを早く言えよ!」

 
 こんな、気分まで冷却してしまうのはどうだろうか、といつもの如く考えた次第です。

(*)警画策励(けいかくさくれい)打ちの略。座禅修行中、気持ちに迷いなどが生じると肩を叩かれるアレです。

 レストラン、いや、飲食店全体が節電について真剣に考えなくてはいけないのでしょうが、どうせ考えるなら、楽しく、考えたいものですな。

 当店なら、そうですね、冷たいおしぼりをご用意する、という案がありますな。

「おしぼり、用意してないのか!お前の所では!」

 そのように憤慨なさる方がいらっしゃるかもしれませんが、当店では布のナフキンをご用意しておりますので平時はおしぼりをご用意いたしておりません。

 だって、レストランで食事する時、おしぼりで顔を拭きたくなったらどうするんですか?

 それ防止策です。
























 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自分の内面を自己申告する時、考えなければならない

2011-05-18 22:12:59 | Weblog
 よく、大変な仕事に従事する人や長時間労働などをする人を「M気質な人」などと言ったり、お酒も飲むけど甘いものも好きな人を「両刀使い」などの表現を使う方がいらっしゃいますが、そんなにそっち系の話しに持って行きたいのでしょうか。
 強い口調で言う人を「S(エス)」、我慢強い人を「M(エム)」と簡単に仕分けしてしまうのは表面しか見ていない事ではないか、と私は思うのです。
 強い口調で、自分を攻めてもらう方向に持っていこうとする人がいるかもしれません、我慢強いサディスティックな人だっているかもしれません、人間の内面というのはそれほど単純ではないでしょう。
 因みに、何度かこのブログにも載せましたが、「S(エス)」つまり「サド」又は「サディズム」は「相手を痛めつけて快感を得る事」となっておりますが、語源はフランスの作家で伯爵の「マルキ・ド・サド」氏が由来ですが、その反意語である「M(エム)」つまり「マゾ」又は「マゾヒズム」はオーストリアの作家「マゾッホ」氏が由来になっているようです、昔のヨーロッパの作家・・・走りすぎですぜ。
 「S」だろうが「M」だろうが個人の自由ですからそれは良いのですが、信用ならないのは誰も聞いていないのに勝手に自己申告してしまう人です。
 その場合、大抵「俺は“ドS”だから」と宣言する方が多いのですが、何をもってして「ドS」なのか、大いなる疑問に駆られる事となります。
 しかも、ただの「S」ではなく「ドS」ですからかなりのものなんでしょうな、そのサディズム具合は。
 しかし、自己申告、というのは自分でそう思っているだけであって本当にそうなのかは他人が評価しなければ認められないものです。
 仮に「俺は本当に“ドS”だ!」と宣言しても「マルキ・ド・サド」を知らない時点で「ただの乱暴者」に格下げになるはずです、似て非なるものですな。
 それに似たものを痛感したのが、先日、逮捕されました「内田裕也」氏でしょう。彼の場合、自己申告していたのは「ロック」であります。
 今まで「ロック」を連発しておりましたから「もしかして・・・」と危惧していた所はありましたが、納得させるだけの内田氏の「ロック」な代表曲を聞いた事は皆無であります。
 内田氏の代表的なものと言えば、スーツを着て河(ハドソンリバー?)か海(ドーバー?)を泳いだシーンと「十戒のモスキート」「コミック雑誌なんかいらない」「水のないプール」といった映画での好演であります。
 演技的に「ロック」なのかどうかは判りかねますが、私は内田氏主演の映画は好きでありました、内容も悪くなかったと思います。
 しかし、今回、ストーカーで逮捕される、という行為は全く「ロック」ではないでしょう、ただの犯罪です。
 以前、某俳優さんも歌手デビューしてライブを行った時、「俺はロックだ!」と叫びドン引きされたのは記憶に新しい所ではありますが、それも踏まえると自身を広い意味での「もの」に「成り切った」と宣言するのは危険だ、という事が判ります。

 例えば「俺はフランス料理の料理人だ!」と叫ぶのと「俺はフレンチだ!」と叫ぶのでは宣言している内容が全く変わってきますから気をつけたいところです。

 年齢的に若いなら何かに成り切って宣言するのもまだ許せますが、ある一定の年齢に達したらその辺を理解するのが「大人」ではないでしょうか。

 「ドS」や「ロック」を宣言するより、自分の仕事を胸張って宣言できるように頑張る方が「カッコいい」のではないか、と私は思います。

 因みに、日本で本当の意味で「ロック」な人は「矢沢永吉」氏と「シーナ&ロケッツ」だと思うのですが、如何でしょうか?










 

 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

精神的に追い込まれている時こそ複雑な仕事をするのだ、という声が聞こえる

2011-05-17 21:48:40 | Weblog
 「暖かい」を通り越して「暑い」に移行していくと思われる気温ですが、電力の事を思えば「あまり暑くならないで・・・」と祈り、作物の事を思えば「日よ、照っておくれ・・・」と祈らずにはいられない今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 夏の節電を考えれば「冷夏」が良いのでしょうが、作物(野菜や米)の事を考えれば普通に暑い方が良いわけですから、生活と食料の狭間で悩んでしまうというものです。
 「雪国」のイメージが強い山形ですが、いざ夏になると信じられないくらい蒸し暑くなる気候を発揮し、寒暖の差を嫌と言うほど見せ付けてくれるダブルフェイスな県なのであります。
 雪に悩まされ、暑さにも悩まされ、というのであれば、冬の間、県内の雪をかき集めて圧縮冷凍保存し、それを夏に冷気として活用する自然循環型の冷気システムを開発すると憎らしく思える雪も有効活用できるのではないか、と私は思います。
 そのシステムを構築した暁には、すぐさまパテントを取り、雪とそのシステムそのものを県外に売る、という夏期の次世代クーラー開発県構想など考えられますが、そんなシステムが出来れば、の話ですがね。
 
 さて、話は変わりますが、先週はブログを全く更新できませんでした。
 毎回、いや、毎日のように当ブログをお読みくださっている文章好きな方には遅ればせながら謝罪しなければならないでしょうな、申し訳ありませんでした。
 「このままフェードアウトするのではないか。」と不安に駆られた方がどれだけいらっしゃるのかは不明ですが、まだ(ブログを)続ける意志を本人は持っておりますから温かい目で見守って頂ければ幸いです。
 今までも更新できなかった事はありましたが、「1週間丸々」更新しなかった、というのは「ブログ休止宣言」以外でしたら無かったように記憶しております。
 では、なぜ出来なかったか?それは・・・えっ?!興味ないですか?いや、一応、ここまで引っ張ったので書かせてください、ネタも無い事ですし。
 ご予約様で埋まっていたから、という同業者から恨まれそうな理由もあるのですが、私の奥さんが入院したから、というかなり個人的な理由でもあったのです。
 「自分の配偶者が入院したからブログを自粛したのか!」そんな先読みしすぎな方がいらっしゃると世の中楽しくなるのかもしれませんが、入院そのものはまだ良い(いや、本当は良くないですよ)、それに付随する事に問題があるわけです。
 飲んだ話以外、プライベートな話をするのは如何なものか、とも思いますが、私には子供がおりまして、その「身の回りの世話」という一大事が降りかかってきたわけです。
 仕事重視で生きてきたわけで、それは今でも変わりませんが、それ以上に

 子供達の食事を作らなければなりません、その後、洗い物もしなければなりません。
 入院者の服も含めて洗濯もしなければなりません、その後、服を干して畳まなければなりません。
 家の掃除もしなければなりません、その後、猫の世話もしなければなりません。

 朝食作りから始まって学校に送り出してからすぐ店に来て仕込みをし、ひと段落してから帰宅し、掃除、洗濯、夕食の準備をし、すぐ店に戻りまた仕込みをし、子供を迎えに行って、店に戻り更なる仕込みを経て営業開始、閉店後帰宅して服を畳みながらワインを飲んで就寝、という一日の生活は、午前6時起床、午前3時半就寝という過酷なものです。(現在も続行中)
 毎日、午前12時を過ぎると睡魔に襲われるのですが、曇りが掛かっている頭を叩きつつ2日後のご予約様の前菜を模索するのでした。
 
(疲れている時だからこそ、複雑な仕事をするのだ)

 薄れゆく意識の中、何処からともなくそんな声が聞こえます。
 複雑な仕事・・・絵画で例えるならば、直線的な手法で描くのではなく、「スーラ」のような「点」を集めた手法で描く、そんな仕事。
 という事で、久々に仕込んでみました、「野菜のテリーヌ」。
 野菜の断面を想像しつつ型に詰め込む作業は「これくらいで、いいですかね。」のような中途半端は許されません。
 野菜の精霊達よ!我に力を与えたもう!くらいの勢いが無ければ完成できないのです、眠いから尚更に。
 という事で今、当店でお出ししている「野菜のテリーヌ」がこれです。



 テリーヌの両端にあるのは「蛍烏賊のマリネ」と「蝦蛄とスモークした桜鱒のクーリ」であります、そちらの方がガルニチュール(付け合せ)的になっておりますな。
 ソースは「ビーツ」と「ほうれん草」で、これまた野菜。健康的でしょ、作っている人間は不健康的なんですけどね。
 
 一人暮らしが長かったので家事全般に関しては「問題なし」と自任していた私でしたが、不得意な分野(服を畳む、フロ掃除など)がある事が判明、現在、調整しながらの運転であります。

 それよりも仕事をしながらの家事、大変ですぜ。

 世の働くお母さん方、心中お察しします。

 休みの日、洗濯をしながら夕食を作っている時、思いました。

 「働くお母さんのための簡単料理教室」でもやろうか、と。

 しかし、すぐに撤回しました。

 だって、その手の本、結構、売ってますもんね。











 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雨の日は誰の曲の調べなのか、そんな日曜日

2011-05-08 02:01:03 | Weblog
 日曜日は雨の予報ですが、午前2時過ぎ現在、既に降っております。なんだか的中しすぎじゃないですか、と思わずにはいられない今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 私の統計的に、日曜日の天気が物凄く良いとランチの来客数が低下しますが、雨が降りすぎても来客数が伸びない、というビミョーに天気に左右されてしまう傾向が見られます。(ハズれる事、しばしば)
 危うい曇りくらいが人のランチ心をくすぐるのかどうか判りませんが、その天気になっていただければ嬉しいものですな。
 さて、ランチメニューの紹介であります。


        5月8日(日)ランチメニュー

        "前菜"

・自家製スモークサーモンとエイヒレのサラダ仕立て シェリーヴィネガー風味

         又は

・鶏の「もも肉」「レバー」「ハツ」を3種の調理法で


        "本日のスープ"

・蕪のポタージュ


        "メイン"

・本日のお魚のポワレ 春キャベツのブレゼ ソース・クルヴェット

         又は

・ジゴ(子羊もも肉)のロースト ピーマンのソテー ジュ・ド・ヴィアンド


        "本日のデセール"

・クレーム・カラメル


 以上になります。

 軽快にキーボードを叩き、メニューを書き終えたいと頑張っているのですが、どうも自宅のPCの調子が悪く悪戦苦闘を強いられております。

 バックライトの不具合らしいのですが、頼みますよ。

 スカッと書いて睡眠へ移行したいものです。









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食材の持ち味を大切にする、の真意は何か

2011-05-07 22:49:22 | Weblog
 野菜と認識されているものは料理には欠かせないアイテムでありまして、葉物の野菜ならそのまま生で出して「サラダ」に、根菜類でしたら煮出して「フォン(だし汁の意)」に、その他、ソテーしてガルニテュール(付け合せ)などに、又は焼いて主素材に、と形が見える見えないは別として何処かに潜んでいるものであります。
 勿論、上記の話はフランス料理に限定していますが、イタリア料理でしたらグリルしてオリーブオイルと共に、日本料理でしたらお浸しや煮物に、中華料理でしたら油通ししてから更に炒める、などの技法があります。(判りやすいところだけピックアップしました。まだまだありますよ、野菜の活用法は)
 
 先日、いつものように玉葱を1ケース注文したところ、いつものように青果業者さんが重い箱を持ってきてくれて厨房に運び入れてくれたのですが、その後、意外な事を口にしたのです。
 申し訳なさそうに、そして、人の顔色を伺うように、

「シェフ、これ新玉葱なんですけど・・・いいですか?」

 今、季節的に出回っている「玉葱」「じゃがいも」「にんにく」は冠に「新」が付くものばかりであります。
 「新玉葱」「新じゃがいも」「新にんにく」、それと、今、季節的に厨房で動き回っているものは「新人」というのもありますな。
 話を進めましょう。確かに「玉葱」と注文して「新玉葱」が来るとは思っても見ませんでしたが、まぁ、そういう季節ですからね、仕方が無いでしょう。
 
「別に、いいですよ。だってそれしかないんでしょ。」

 と言うと、青果業者配送の人は(助かった・・・)という顔をして

「有難うございます。」

 と胸を撫で下ろしたのです。
 しかし、なぜ「新玉葱」でそれほど神経質にならなければならないのか、疑問に思った私は質問してみました。
 すると、このような回答が来たのです。

「新玉葱は水分が多いからイヤだ、って他所の店で怒られたんですよ・・・」

 話をよく聞くとこういう状況だったそうです。
 玉葱を注文したら新玉葱が来た事にご立腹したその店の店主は、青果業者配送の人を怒鳴りつけ「取り替えろ!」と恫喝したそうな。
 青果業者配送の人が訳を聞くと「水分が多くて不味い、取り替えろ!」の一点張りだったそうな。
 そのような店が何店舗かあった、という話を聞いて「そうですか・・・新玉葱だからね、しょうがないよね。」としか言えなかった私ですが、新じゃがいもでも同様のクレームが出たそうです。
 古い玉葱があるのか聞いてみたところ「少しはありますが芽が出ているものですから・・・」と暗い顔をしました。
 そうなのです。「玉葱」と注文が来て、新玉葱を持っていけば「水分が多いからイヤだ!」と言われ、古い玉葱を持っていけば「おい!芽が出てるぞ!この玉葱!」と怒られる状況にあるのです。
 青果業者配送の方が帰って玉葱の箱を所定の位置に運んでいる時、私はこんな事を思ったのです。

「それが・・・料理、いや、食材に対する拘り(こだわり)なのだろうか?」

 と。

 確かに、「新玉葱」「新じゃがいも」「新にんにく」は水分含有量が多いため味がボヤけてしまう、という欠点がありますが、水分が多いため辛味が少なく、スライスして水に晒すとシャキシャキしてサラダで食べても美味しいのです。
 水分があり若干糖度も高いので低温でローストすると水分が飛んで甘みが強調され、しかも、柔らかい「オニョン・ロティ(玉葱のロースト)」が出来るのです。
 大量に生産しているとは言っても、野菜ですから季節によって違う顔を見せたりするのは当然の事ではないでしょうか。
 なぜ、野菜の状態に料理を合わせようとしないのか、野菜の方がこちらに歩み寄って来るとでも本気で考えているのだろうか、そのような事が頭の中を駆け巡ったのです。
 「絶対、古い玉葱でなければ納得しない!」というのならば、普通にスーパーに売っていますから、それを買えばいいだけの事で、業者さんを恫喝するのは如何なものか、しかも、持ってきてくれてるんでしょ。
 新玉葱が腐っているのならば「ふざけるな!取り替えろ!」になるのも判りますが、「新玉葱?取り替えろ!」は新玉葱に対して失礼です。
 料理とはそんなに不自由なものなのか?そう私は思うのです。
 水分が多いならそれなりの調理をする、産地が違って味が変わっているようだったらそこを軸に料理も修正する、素材の欠点と思える所は本当に欠点なのか考え抜く。
 自分の発想力不足、経験不足、技量の無さ、などを食材のせいにしていいのでしょうか。
 食材を使いこなすのは料理人です。固定の食材でなければ調理できない、というであれば職務放棄に近いのではないか、それは「拘り」とは言わないでしょう。

 新玉葱は他県産のものでしたが、それも使いこなせないようでは「地産地消」どころの話ではありません。
 もう一度言いますが、このところ言われている「地産地消」は、使う側が食材に対して謙虚にならなければならない行為なのです。決して「ファッション」ではないのです。まして「使ってやっている」という気持ちであれば料理すら破綻してしまうでしょう。

 そんな事を、思ってしまったのですが、どうなんですかね?

 勿論、私の考えている事が全てではないのは判ります、反論もあるでしょう。

 でも、たまにはこんな記事でもいいではないですか。

 いち料理人として。














 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どうだろうか、食べたつもりで料理の写真を見る、というのは

2011-05-06 23:30:48 | Weblog
 心躍るような陽気に包まれながら大型連休が終わろうとしている中、仕事が始まる事に対して憂鬱な気分に苛まれている方もいるのではないか、と思われる今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 最大で10連休、という方もいらっしゃると聞きましたが、よく考えてみるとひと月の1/3を休みで消化するわけですからすんなり職場復帰できるのか心配になってしまいます。(大きなお世話)
 皆様に於かれましては有意義な連休だった事と存じますが、連休中、ずっと飲んでいて連休が明けようとしているのに具合が悪い、などという「ゴールデンウィークデカダンス(大型連休中に退廃的、享楽的な生活をする人)」な方はいらっしゃらないでしょうな。
 私の同級生で当ブログの読者でもある40絡みの男性は、「観桜会」などと称して飲み会を集い、場所取りをしながら朝の7時から飲んでいた、というかなり「デカダンス」な行動を取っていたそうであります。
 私も休みの日はお昼から飲んだりする事はありますが、さすがに朝の7時からは臨戦態勢にはなれません、朝の7時まで飲んだ、というのはあっても。
 基本的に人間の体には「早起きをして酒を飲む」という、健康的なんだか不健康的なんだかよく判らない機能は備わっていないと考えられますからもっとご自愛された方がよろしいかと思われます。
 「色々、悩んでいるんだ!それを酒にぶつけているのさ!」そのようにお思いかもしれませんが、ひとつご進言しますと、悩むのは良いでしょう、人は皆悩んでいるのですから。それを酒にぶつけるのも良いでしょう、そんな時もあるでしょう、酒なんて寂しさ紛らす合法的なアディクトみたいなものですよ。
 しかし、朝の7時から飲み始めるのは如何なものか。夜中から飲み始めて朝の7時になってしまった、というパターンとは確実に一線を画しておりますから、来年の観桜会はお昼からがよろしいかと思います。
 「じゃあ、場所取りはどうするのだ?」そのように言い寄ってくるかもしれませんが、場所取りはするべきでしょう、それはするべきです。しかし、そこで飲まずに卓上コンロでも持って行き、つまみでも作っていなさい、そうすれば時間潰しにもなるでしょう、匂いに釣られて鳥達がやって来るでしょう、陽気に誘われてフリースタイルな生活様式を持っている変な人もやって来るでしょう、まともではないですが友達が出来るはずです、是非、ご再考の程を。
 
 さて、話は変わりますが、当然、この連休中は有り難い事に仕事三昧で過ごさせていただいたのですが、店と自宅の往復しか生活リズムが無かったわけであります。
 時として「何かプライベートな写真でも撮ってブログに新風を吹く込もうか・・・」などと余計な事を思ったりするのですが、全く撮れる気配がありません。
 デジカメを新調したのにも関らずその体たらくでありますから、仕方無しに料理の写真を撮ってみたゴールデンウィークでありました。
 連休以前に撮った写真も重ねて、ほんの一部でありますが食べたつもりの「写真だけコース料理」というのをしてみようかと、ネタ無しなこの状況を打破すべく思ってみたわけであります。
 料理解説付きでいきますので、食べた事のある方は「あぁ、これね。」と思っていただき、まだ「マチルダベイ」未体験な方は「こういうのね。」と思っていただければ幸いであります。(この順序でお出しした、というものではなく、アミューズ、前菜、魚料理、肉料理の写真を集めてみました的なものです。予めご了承ください)

 まずは「アミューズ」。常には「キッシュ・ロレーヌ」をお出ししているのですが、違うものもお出しする時があります。それがこれ、



 今回のは「牛蒡のピュレとベーコンのクリスティアン コンソメジュレ添え」であります。カクテルグラスの淵に乗っているのはバトネ(棒状)にカットしてトーストしたパン・ド・カンパーニュ(市販です。流石にこれは作るのに時間が掛かる)であります。
 パンにつけながら食べるも良し、パンをかじりながらスプーンで食べるも良し、楽しみ方は自由です。
 普通にカクテルだと勘違いしてグラスに口を付けて飲もうとするのはアウトでありますからご理解ください。

 前菜の写真はホームページのブログにも載せたものですが、一応、こちらでも載せようかと思いまして引っ張り出してきた次第です。



 「蛍烏賊のタブレ ルッコラのサラダ添え イカ墨のソース」でありますが、この料理のポイントはソースを皿に流す時、どれだけ「榊 莫山(さかきばくざん)先生」に成り切れるか、というところでしょう。
 勢いよく筆を(正確にはブラシ)を振り下ろす時、「よかいち、よかいち」などと言いながら描くとイイ感じになるはずです。

 次にポワソン、魚料理でありますが、やはり震災の影響で日本海のものが多く入荷しています。
 その中でも「黒ソイ」という岩礁魚は流通量が多いのではないでしょうか。今回の魚料理も黒ソイを使った料理であります。



 「黒ソイのブレゼ 黒オリーブとアンチョビのソース」が料理名ですが、経験則で黒ソイは焼くより蒸し焼きのようにして加熱した方がより美味しいと私は思っております。
 理由としましては、皮の薄さがそうさせるのか、フィレ(切り身)で焼くとですね、 バリッと行かないんですな、フニャっとする、と言いますか、ジュ(ジュースの事。この場合、肉汁ならぬ魚肉汁)が出まくりなんです。ですから、私は岩礁魚の場合、調理法を考えるのですよ。

 最後、ヴィアンド、肉料理です。
 「蝦夷鹿のロティ」の写真は何度か載せましたが、今回は馴染みやすい「豚肉」で行きましょう。
 


 豚(庄内もち豚)の塊肉を自分なりの「ロティール論」で焼くとこのように仕上がる、という写真でもありますが、火を通しすぎてはならない、さりとて、生な部分があるのはもっといけない、という制約の元でジュ(もうお判りですよね)を肉の中に閉じ込めてロゼ色にロティール(ロースト)するのはなかなか難しいものです。
 写真見る限り生っぽくも見えますが、完全に火が入っている状態であります。これ以上火を入れるとパサつき、これ以下だと火入れ不足のギリギリでしょう、肉を切る時の緊張感が堪りませんな。

 以上、料理写真で食べたつもり、でありましたが、出来れば写真だけではなく、本物もご賞味いただきたいと思います。

 ただし、同じものが出てくるとは限りませんのであしからず。

 当店の開店時間は夕方の5時半からでありますが、来年のゴールデンウィークは、どうでしょう、朝の7時から店先で待ってみる、というのは。

 その場合、店先で料理を作るのは禁止であります。

 店先にブルーシートを敷いて飲んでいるのは・・・・

 止めた方がいいですよ。









 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする