ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

親孝行したい時に親はなし、になる前に手を打て

2008-07-02 21:45:26 | Weblog
 最近、私の母が長期入院を余儀なくされた為、実家には父が一人で暮らしているのですが、父は料理が出来ないので私が休みの日に実家に行き、1週間分の料理を作ってくる、という「セントラルキッチン男」と化しています。
 父を気遣い、近所の人が食事の心配をして声を掛けてくれると

「大丈夫、大丈夫。うち、専属の料理人いるから。」

 と、笑いながら言っていた、という話が漏れ聞こえてきた時は少しイライラ来ましたが、ある意味、本当の事なのでしょうがないでしょう。
 一人で食事をするのは寂しいだろうと思い、おかずくらいはバリエーションを豊富にし、食べる楽しみを持ってもらおうと毎回6~8品くらい作っていくのですが、意外な父の食べ物の好き嫌いを発見することが出来、「親の心子知らず」ならぬ「親の好み子知らず」だな、と思ってしまった次第です。
 和物が中心のメニュー組みをしているのですが、最近、カレー(特にバーモントカレーの甘口)に好感触を感じましたから2週間に一度、カレーを組むようにしております。(母に言ったら「あれっ?知らなかったの?」と一蹴されてしまいました)
 では、6~8品とは何を作っているのか?今週の月曜日(お店が定休日)に作ったものを思い出してみましょう。

・豚モツ煮込み(豚モツが安かったから。大根も冷蔵庫に眠っていたのを思い出して。)

・鰊、山独活、麩の煮物(アメリカ産ソフト鰊が安売りしていた。山独活は下処理されているもの。短時間で出来、且つ、田舎臭いので受ける、と直感した。)

・カレイの煮付け(魚の煮付けが好物なのは知っているので毎回組んでいる。今回はカレイが安売りしていた。一切れ99円。3切れ購入)

・キノコのソテー醤油風味(エリンギとシメジがなぜか安売りしていた。他にエノキと椎茸も購入。キノコ物は火を入れると日持ちするので便利)

・中華くらげともやしの和え物(軽くボイルしたもやしに塩コショウし、中華くらげ(市販物)とごま油で和えるだけ、簡単)

・胡瓜とほぐし魚の梅肉和え(なぜか胡瓜と梅干が冷蔵庫にあった。前回、焼き魚を焼いていった(温めて食べろ、と指示)物が残っていたため再利用)

・烏賊とサトイモの煮付け(スルメ烏賊が2ハイで250円とお得だった。サトイモと大根(また登場)と一緒に煮付けると美味しい。勿論、仕上げに烏賊ワタを入れる)

 と、このようなラインナップでした。
 これを2時間くらいで作り上げなければならないので、ほぼ、仕事モードが入ってしまいます。(母の見舞いや自宅に帰ってやる事があるので時間がない時は本当に時間がない)
 前に一度、実家の台所でガンガン作っている時、父から「お前、そんなに頑張らなくても・・・」と言われた事があるのですが、「ウルセー!俺の仕事に口出すな!」とブチ切れてしまいました。すでに私の中では仕事になっているようです。
 その証拠に、買い物している段階から頭の中で仕込みの段取りをしながら(もう仕込みになっている)買い物金額を3500円以内に納める事を計算しつつ(前回は3800円くらいで300円オーバー。別に制限はないのだが買い物術としては重要)、「豚モツはラグー(仏語で煮込みを指す)だな。」「烏賊とサトイモのキュイッソン(仏語で煮汁を指す)は少ない方がいいからしっかりレデュイール(煮詰める事)しなければ。という事は、最初から薄味で行って、最終的に味が決まるようにすればいいのか。」などをブツブツ言いながら買い物しているわけです。(すれ違う奥様方が気味悪そうに見るので、最近は口に出さないように心がけています)
 前々回あたりは作っている最中に、「待てよ。うちのオヤジのためだけに作るんだったたら日曜日寝ないで大量に仕込みして、月曜日のみ営業の惣菜屋(昼)兼居酒屋(夜)をしてみたらどうか?」などと無謀なビジネス展開を考えてしまいました。どう考えても疲れが取れないシフトでしょう。無謀すぎ。

 これからしばらく続くであろう、この「自宅惣菜男」。ビシッと作れるようにワークマンでエプロンまで買ってきてしまいました。

 しかし、第3者的に見るとヒゲ面でジーパンとTシャツの男が軽快にヨークベニマルあたりで買い物している姿や、ジーパンTシャツの上から黒いエプロンを付けてガンガン料理しているヒゲ面は、ちょっと怖いかもしれませんね。

 でも一応、本人は親孝行しているつもりなんですけどねぇ。



 
コメント (5)
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