小学生、中学生の頃、「読書感想文」というものがありましたが、自分が読んだ本の感想を文章にして提出しなければならない事が私的に納得いかず、中学生の頃は提出を拒否するほどでありました。
みんなで同じ本を読んでのディスカッション的なものなら理解できましたが、自分が本を読んで自分しか判らない内容を理解してもらうにはストーリーを最初から説明する必要がありますから、「オレのストーリーを主軸にした感想文を読むより、同じ本を読んで個々で感想を持ち、胸にしまった方が良いのではないか?」というのが当時の私の考えでした。
それでも宿題として出されるわけですから先生から催促されたのですが、頑なに「読書感想は人に披露する物ではない」という考えを崩さず、先生を困らせておりました。
しかし、時が経ち、物事を理解できるようになると「感想」というのが非常に大事で、そして、自分の仕事に結着している、と考えるようになったのです。
食事をしたらその料理の感想を、ワインを飲んだらそのワインに対する感想を、新聞を読んで国内外の情勢を知ったらその感想を、食材を前にしたらその食材の感想を、そして、それを料理したらその感想を、嬉しい事があればその感想を、悲しい事が続けばそっとその感想を、心の中で想い、そして、時としてそれを言葉に出さなければならないのが世の中だ、と知ったのです。(だいぶ大げさですな)
そんな「読書感想文」の事を思ったのは、昨夜帰宅したら何気にテーブルに置いてあった本「走れ!メロス」をこれまた何気に読んでしまったからでした。
短編小説ですからすぐに読み終わったのですが、読み終わってから「今なら書ける気がするな、読書感想文・・・」そう思ったのです。
私もいい歳ですから、「読書感想文」などといっても文章内容がいつもの調子になるのは必至だと思われますが、何十年ぶりに読んだ「走れ!メロス」は面白く、感想を語るにはもってこいの題材でありました。
では、公開読書感想文、行ってみましょうか!
「走れ!メロス」を読んで
マチルダベイ 藤原
「メロスは激怒していた。」という一節で始まる「走れ!メロス」は、卓越した文章でダメ男を表現させたら日本一、と思われる太宰治先生の短編小説であります。
ダメ男指数が非常に高い先生の作品「人間失格」の書き出しも「私は、その男の写真を三葉、見たことがある」という回顧している始まりである事からも先生の書き出しに対するこだわりが見られる、というものでしょう。
なぜメロスは激怒していたのか?この一節でそう思わせ、そして、ここから本題に入っていく文章手法は見る者に期待感を持たせるのではないでしょうか。
メロスは田舎育ちの牧人であり、妹の結婚式が近いため、その装飾品や食料などを購入する為にシラクスの市にやって来て、そしてその後、そこに住む友人「セリヌンティウス」に合う事にしていた。
しかし、2年ぶりにメロスが目にしたのは活気のない市、ひと気のない町でした。意外と乱暴なメロスは通りすがりの若者をとっ捕まえて問いただそうとすると逃げられてしまいます。
そこで今度は老人をとっ捕まえて問いただします、乱暴すぎだろ、メロスよ。
すると、老人が口にしたのは「王様が人を殺す」という事でした。何気にベラベラ喋ってメロスに情報を与える老人は、「王様は妹や皇后、甥っ子、家臣なども信用できなくて殺している」と思いっきりな情報を与えます。
「人を信用できないんです、王様は・・・」と老人は続けましたが、大丈夫か、老人、そんなにベラベラ喋って。密告されて捕まる可能性だってあるんだぞ。
その話に怒ったメロスは冒頭の「激怒」へと変化していくのです。「何たる事か!暴君ディオニスよ!オレが一言言ってやろうではないか!」元来メロスは正義心の強い男だったようで妹の結婚式の事は頭から離れてしまい国王ディオニスの元へ直訴しに行きます。
王の下へ行くと勿論、ボディーチェックをされるのですが、メロス、何の為にそれを持っていたのか、短剣などを懐に忍ばせておりました。殺人の意志があった、と取られても致し方ありませんな。
メロスは妹以外、両親、妻もおらず「どうなってもいい身」でありましたから、王ディオニスの前でもふてぶてしさを隠そうとはせず、ディオニスと討論してしまいます。
「市を暴君の手から守るのだ!」そう叫ぶメロス、「俺の孤独がお前にわかるか!」怒鳴るディオニス。「民を信じない王などいるか!」反論するメロス、「私欲に取り付かれているのはお前らだろう!」引かないディオニス。
元々、死を覚悟で来たメロスでしたが、冷静になって考えると妹の結婚式がある事を思い出し、「王様よ、俺が死ぬのは良いけど、その前に妹の結婚式があるから3日間の猶予を与えてくれ」と交渉してしまいます。
王様を激怒させておき、しかも、妹の結婚式の準備があるから帰らせてくれ、と願ってもそれが受け入れられる状態ではありません、なぜなら王様は人を信用しないんですよ、基本的に。
そこでメロスは驚愕の取引を持ちかけます。
「この市にオレの友人で石工のセリヌンティウスという男がいるからそいつを身代わりに置いていく。」
メロスよ、お前どこまで自分勝手なんだよ。街が暗いから人を問いただし、その話に激怒して王様に暴言を吐いて、緊迫した状況の中、妹の結婚式を思い出して「帰らせろ」と言い出し、それが認められないと自分の身代わりに友人を置いていく、お前の友人にだけはなりたくないな、正直、それが感想であります。
セリヌンティウスは捕まり縄をかけられるのですが、それが2年ぶりの再会、捕まった方は何が何だか判らない、というものでしょう。しかし、友人セリヌンティウスはあっさりそれを了承し、メロスを送ります、良い人なんだねぇ、セリヌンティウス。
順調に村へ帰ったメロスは妹を呼び出し「明日結婚しろ」とせかします。実は結婚式は来週くらいだったのですな、ここでも自分勝手だぜ、メロス。
その後、深い眠りについたメロスは次の日の早朝から結婚式の準備を進めます。まずは新郎の説得。結婚式を早めるのですから相手も渋々でしたが、とりあえず了承し、次の日、無事、結婚式を済ませます。
しかし、私はここで大いなる疑問が浮上したのです。結婚式の最中、メロスは酒を飲んでおり、飲みすぎると明日帰るのがしんどくなるから、という理由で式を中座してまたもや深い眠りにつくのです。
友人が死ぬかどうかの瀬戸際で飲酒をしながら楽しみ、そして、深い眠りになどつけるのでしょうか?読んでいて「早く走れ!メロス!」と心の中で叫んでしまったほどです。
次の日、普通に起きたメロスは思い出したかのように市へ向って走ります、もっと早く起きろ!そう心で思ったのもメロスののんきさに対する声であります。
前日の雨でぬかるんでいるのはお約束としても、川が濁流で氾濫し橋が流されたのは予想外でした、だからもっと早く起きろ、と思ったんだよ!
やっとの事でその濁流の中を泳ぎきると待っていたのは王ディオニスの刺客でありました、そんなオマケ付きなのね。
それもバッタバッタとなぎ倒し走りを再開すると、何と!疲労困憊で動けなくなってしまいます、おいおい、大丈夫かよ。
その薄れゆく意識の中で「もう止めようかな、走るの・・・期日を過ぎても身代わりがいるから免罪にしてくれるって言ってもらったしな・・・」などととんでもない事を思ってしまうメロス、コラッ!早く走れ!
すると、近くで出ていた湧き水を飲んで元気が出たメロスはまた走る決意を固めます・・・メロスよ、早く走れよ・・・
順調に走り出したメロスは自分を鼓舞する為にこう言い聞かせます。
「走れ!メロス、走れ!メロス・・・」
そうです、これが表題になっているのです。タイトルはメロス本人の心の叫び、自分を鼓舞する為の心の叫びだったのです。
街まで来たメロスを待っていたのはセリヌンティウスの弟子でした。
「もう無駄だから走るのは止めてください。あなたの為に死ぬのです。」
そんな事を言われて止めれないだろ、メロスよ。
ギリギリ城に着いたメロスは、友人セリヌンティウスの縄を解くよう願います。
縄を解かれたセリヌンティウスにメロスは「俺を殴れ!俺は途中で走るのを止めようとした。」そう打ち明けると思いっきりぶん殴られます。
するとセリヌンティウスも「俺も殴れメロス、俺も一度お前が帰ってこないのではないか、と疑った。」するとメロスはねじりを加えたパンチをお見舞いします、メロスよ、コークスクリューパンチかよ・・・
そんな2人を見た王ディオニスは「俺も仲間に加えてくれ、感動した!今、オレは感動している!俺も仲間に加えてくれ!」と涙を流します。
人を信じる心を失い、孤独に苛まれていたディオニスは2人に真の「信頼」というものをみたのです。
ここで、この作品は終わりに向いますが、最後、布切れを持ってメロスに近づいてくる女の子がいました。
メロスは素っ裸だったのです・・・フルチンかよ、メロス。
みんなで笑いながら市に幸せをもたらした2人、いや、ディオニスも加えた3人は清々しい気持ちになったのではないでしょうか。
ただ、仲間に加えたならば2人でディオニスをもぶん殴らなければならなかったのではないか、という疑問が最後に付いたのはご愛嬌でしょう。
終わり
という事で、こんなにも長い文章になるとは思っていませんでしたが今日はこの辺で。
そして、この読書感想文を故平井チエ先生に捧げます。受け取ってもらえるか判りませんが一応、提出してみる、という事で。
みんなで同じ本を読んでのディスカッション的なものなら理解できましたが、自分が本を読んで自分しか判らない内容を理解してもらうにはストーリーを最初から説明する必要がありますから、「オレのストーリーを主軸にした感想文を読むより、同じ本を読んで個々で感想を持ち、胸にしまった方が良いのではないか?」というのが当時の私の考えでした。
それでも宿題として出されるわけですから先生から催促されたのですが、頑なに「読書感想は人に披露する物ではない」という考えを崩さず、先生を困らせておりました。
しかし、時が経ち、物事を理解できるようになると「感想」というのが非常に大事で、そして、自分の仕事に結着している、と考えるようになったのです。
食事をしたらその料理の感想を、ワインを飲んだらそのワインに対する感想を、新聞を読んで国内外の情勢を知ったらその感想を、食材を前にしたらその食材の感想を、そして、それを料理したらその感想を、嬉しい事があればその感想を、悲しい事が続けばそっとその感想を、心の中で想い、そして、時としてそれを言葉に出さなければならないのが世の中だ、と知ったのです。(だいぶ大げさですな)
そんな「読書感想文」の事を思ったのは、昨夜帰宅したら何気にテーブルに置いてあった本「走れ!メロス」をこれまた何気に読んでしまったからでした。
短編小説ですからすぐに読み終わったのですが、読み終わってから「今なら書ける気がするな、読書感想文・・・」そう思ったのです。
私もいい歳ですから、「読書感想文」などといっても文章内容がいつもの調子になるのは必至だと思われますが、何十年ぶりに読んだ「走れ!メロス」は面白く、感想を語るにはもってこいの題材でありました。
では、公開読書感想文、行ってみましょうか!
「走れ!メロス」を読んで
マチルダベイ 藤原
「メロスは激怒していた。」という一節で始まる「走れ!メロス」は、卓越した文章でダメ男を表現させたら日本一、と思われる太宰治先生の短編小説であります。
ダメ男指数が非常に高い先生の作品「人間失格」の書き出しも「私は、その男の写真を三葉、見たことがある」という回顧している始まりである事からも先生の書き出しに対するこだわりが見られる、というものでしょう。
なぜメロスは激怒していたのか?この一節でそう思わせ、そして、ここから本題に入っていく文章手法は見る者に期待感を持たせるのではないでしょうか。
メロスは田舎育ちの牧人であり、妹の結婚式が近いため、その装飾品や食料などを購入する為にシラクスの市にやって来て、そしてその後、そこに住む友人「セリヌンティウス」に合う事にしていた。
しかし、2年ぶりにメロスが目にしたのは活気のない市、ひと気のない町でした。意外と乱暴なメロスは通りすがりの若者をとっ捕まえて問いただそうとすると逃げられてしまいます。
そこで今度は老人をとっ捕まえて問いただします、乱暴すぎだろ、メロスよ。
すると、老人が口にしたのは「王様が人を殺す」という事でした。何気にベラベラ喋ってメロスに情報を与える老人は、「王様は妹や皇后、甥っ子、家臣なども信用できなくて殺している」と思いっきりな情報を与えます。
「人を信用できないんです、王様は・・・」と老人は続けましたが、大丈夫か、老人、そんなにベラベラ喋って。密告されて捕まる可能性だってあるんだぞ。
その話に怒ったメロスは冒頭の「激怒」へと変化していくのです。「何たる事か!暴君ディオニスよ!オレが一言言ってやろうではないか!」元来メロスは正義心の強い男だったようで妹の結婚式の事は頭から離れてしまい国王ディオニスの元へ直訴しに行きます。
王の下へ行くと勿論、ボディーチェックをされるのですが、メロス、何の為にそれを持っていたのか、短剣などを懐に忍ばせておりました。殺人の意志があった、と取られても致し方ありませんな。
メロスは妹以外、両親、妻もおらず「どうなってもいい身」でありましたから、王ディオニスの前でもふてぶてしさを隠そうとはせず、ディオニスと討論してしまいます。
「市を暴君の手から守るのだ!」そう叫ぶメロス、「俺の孤独がお前にわかるか!」怒鳴るディオニス。「民を信じない王などいるか!」反論するメロス、「私欲に取り付かれているのはお前らだろう!」引かないディオニス。
元々、死を覚悟で来たメロスでしたが、冷静になって考えると妹の結婚式がある事を思い出し、「王様よ、俺が死ぬのは良いけど、その前に妹の結婚式があるから3日間の猶予を与えてくれ」と交渉してしまいます。
王様を激怒させておき、しかも、妹の結婚式の準備があるから帰らせてくれ、と願ってもそれが受け入れられる状態ではありません、なぜなら王様は人を信用しないんですよ、基本的に。
そこでメロスは驚愕の取引を持ちかけます。
「この市にオレの友人で石工のセリヌンティウスという男がいるからそいつを身代わりに置いていく。」
メロスよ、お前どこまで自分勝手なんだよ。街が暗いから人を問いただし、その話に激怒して王様に暴言を吐いて、緊迫した状況の中、妹の結婚式を思い出して「帰らせろ」と言い出し、それが認められないと自分の身代わりに友人を置いていく、お前の友人にだけはなりたくないな、正直、それが感想であります。
セリヌンティウスは捕まり縄をかけられるのですが、それが2年ぶりの再会、捕まった方は何が何だか判らない、というものでしょう。しかし、友人セリヌンティウスはあっさりそれを了承し、メロスを送ります、良い人なんだねぇ、セリヌンティウス。
順調に村へ帰ったメロスは妹を呼び出し「明日結婚しろ」とせかします。実は結婚式は来週くらいだったのですな、ここでも自分勝手だぜ、メロス。
その後、深い眠りについたメロスは次の日の早朝から結婚式の準備を進めます。まずは新郎の説得。結婚式を早めるのですから相手も渋々でしたが、とりあえず了承し、次の日、無事、結婚式を済ませます。
しかし、私はここで大いなる疑問が浮上したのです。結婚式の最中、メロスは酒を飲んでおり、飲みすぎると明日帰るのがしんどくなるから、という理由で式を中座してまたもや深い眠りにつくのです。
友人が死ぬかどうかの瀬戸際で飲酒をしながら楽しみ、そして、深い眠りになどつけるのでしょうか?読んでいて「早く走れ!メロス!」と心の中で叫んでしまったほどです。
次の日、普通に起きたメロスは思い出したかのように市へ向って走ります、もっと早く起きろ!そう心で思ったのもメロスののんきさに対する声であります。
前日の雨でぬかるんでいるのはお約束としても、川が濁流で氾濫し橋が流されたのは予想外でした、だからもっと早く起きろ、と思ったんだよ!
やっとの事でその濁流の中を泳ぎきると待っていたのは王ディオニスの刺客でありました、そんなオマケ付きなのね。
それもバッタバッタとなぎ倒し走りを再開すると、何と!疲労困憊で動けなくなってしまいます、おいおい、大丈夫かよ。
その薄れゆく意識の中で「もう止めようかな、走るの・・・期日を過ぎても身代わりがいるから免罪にしてくれるって言ってもらったしな・・・」などととんでもない事を思ってしまうメロス、コラッ!早く走れ!
すると、近くで出ていた湧き水を飲んで元気が出たメロスはまた走る決意を固めます・・・メロスよ、早く走れよ・・・
順調に走り出したメロスは自分を鼓舞する為にこう言い聞かせます。
「走れ!メロス、走れ!メロス・・・」
そうです、これが表題になっているのです。タイトルはメロス本人の心の叫び、自分を鼓舞する為の心の叫びだったのです。
街まで来たメロスを待っていたのはセリヌンティウスの弟子でした。
「もう無駄だから走るのは止めてください。あなたの為に死ぬのです。」
そんな事を言われて止めれないだろ、メロスよ。
ギリギリ城に着いたメロスは、友人セリヌンティウスの縄を解くよう願います。
縄を解かれたセリヌンティウスにメロスは「俺を殴れ!俺は途中で走るのを止めようとした。」そう打ち明けると思いっきりぶん殴られます。
するとセリヌンティウスも「俺も殴れメロス、俺も一度お前が帰ってこないのではないか、と疑った。」するとメロスはねじりを加えたパンチをお見舞いします、メロスよ、コークスクリューパンチかよ・・・
そんな2人を見た王ディオニスは「俺も仲間に加えてくれ、感動した!今、オレは感動している!俺も仲間に加えてくれ!」と涙を流します。
人を信じる心を失い、孤独に苛まれていたディオニスは2人に真の「信頼」というものをみたのです。
ここで、この作品は終わりに向いますが、最後、布切れを持ってメロスに近づいてくる女の子がいました。
メロスは素っ裸だったのです・・・フルチンかよ、メロス。
みんなで笑いながら市に幸せをもたらした2人、いや、ディオニスも加えた3人は清々しい気持ちになったのではないでしょうか。
ただ、仲間に加えたならば2人でディオニスをもぶん殴らなければならなかったのではないか、という疑問が最後に付いたのはご愛嬌でしょう。
終わり
という事で、こんなにも長い文章になるとは思っていませんでしたが今日はこの辺で。
そして、この読書感想文を故平井チエ先生に捧げます。受け取ってもらえるか判りませんが一応、提出してみる、という事で。