ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

焼かれて昇華する者、汝の名は魚

2008-07-16 04:40:36 | Weblog
 夏に一歩づつ近づいているような暑さが滲む今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 この時期は日の光を浴びた野菜などにも艶が出てきて、ある意味、「美味しい時期」なのではないか、と思われますが、今年は雨があまり降らないため、農家の方は頭を悩ませているそうです。
 そして、漁業の方もガソリン高騰の煽りを受け、一斉に休業する、と宣言しているそうですが、それだけはやめて頂きたい、家庭も大変になるでしょうが、我々飲食店もモロに影響が出ます。
 かといって、冷凍の魚を使うなどという事は出来ませんから、何卒、穏便且つ、平和的な解決方法をとって頂きたいものです。(魚市場では「セリ」という値付け方式をとっていますので、買い叩かれる可能性もあるため漁業者の方々は困窮しているのだそうです)  

 さて、話は魚続きで行きますが、当店では2つの魚屋さんから魚を仕入れております。
 まず1つは、以前仕事をしていた時から付き合いがある魚屋さんで、もうひとつは、後輩の実家である魚屋さんです。
 2つの違いは何か、という話になると思うのですが、前者は高級魚を仕入れたりする時に注文する魚屋さん。後者はリーズナブルな魚を仕入れする時に注文する魚屋さんです。
 勿論、明確に分けているわけではないのですが、後者の後輩の実家魚屋は気を使ってくれるのか、割とリーズナブルな魚を持ってきてくれます。
 これは、ランチ用といいますか、価格的にギリギリのラインで仕事しなければならない時のための魚でございまして、当然ですが、質的に悪いものではありません。いや、「この値段でやってけるのか?S?(後輩の名前)」と思ってしまうような良い物も中にはあります。
 私の基本的な考えは、ランチは格好をつけないで食材を大きめにし、「ドーン」というような盛りをしたいのです。
 ですから、魚も1匹の半身くらいは付けたいではないですか。「ホウボウ」という長細い魚の場合、半身使うと皿からはみ出してしまう勢いはありますから、盛り付けしてスタッフを呼ぶと、「ウワッ」だの「スゴイね、こりゃ」だのコメントが来てしまう始末です。
 出す本人ですら「おっ、いいね、いいね。ビストロっぽくて。」と思ってしまうくらいですから結構です。
 
 小さな魚が来た場合前菜に回したり、白身の魚であれば尻尾の方はムースにして魚のテリーヌにしたり、クネル(魚のムースリーヌをフットボール形に成型しポシェしたもの。本来は川カマスという魚で作り、ソースアメリケーヌをかける)にしたりと活用方法を考えなければならないのも魚料理の面白いところです。
 
 その魚によって調理法を考えなければならないのも、魚料理の楽しさと言えるのではないでしょうか。
 例えば、「カサゴ」という岩礁魚の場合、1匹丸ごと香草と一緒にロティ(ロースト)し、お客様の目の前で取り分けしサーブ(サービス)する、や(この時、マネージャーが取り分けます。取り分けサーブを見たい方は是非、ご予約を)、カレイや小さめなヒラメの場合、筒切りにしムニエルにする、タイの場合、皮下脂肪を落とすため皮を徹底的に焼き、クロッカン(クリスピーの意。カリカリした食感の事)にする、「糸より鯛」という魚の場合、魚の香りを重視したいので皮をしっとり目に焼く、骨付きの魚はしっかり焼くが、魚がフィレの切り身の場合、ギリギリの火入れを意識する、など考えればキリがありません。
 その調理法を選ぶ、という事は、調理器具もそれに合わせて選ぶ、という事にも繋がりますので楽しみは尽きません。(鉄のフライパンにするか、テフロン加工のフライパンにするか、大きさはどうする?など)

 魚を処理する時、ジックリ観察すると面白いものです。空腹時に釣られたのか、ある程度満腹時に釣られたのか、は胆のうを見ると分かるものです。

 その時、私は空腹時だったりするんですけどね。

 稀に、二日酔い時だったりする時もある事はあまり書かないようにしなければ。


コメント (2)
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