日中の尖った日差しと、夕方のアスファルトから湧き出る熱気が人々の心を「祭り」という方向へ導き、人々の心で形成された「祭り」は人を呼び、街を動かすのです。その「街」を動かす人々の踊り、掛け声、鼓動を一度も見ることなく毎年祭りが過ぎて行くワタクシでありますが、皆様、如何お過ごしでしょうか。
毎年この時期に行われる「山形花笠祭り」は東北4大祭りのひとつに数えられるそうですが、何だか、一つ足していただいたような気がして申し訳ない気持ちになってしまします。
しかし、ニュースでは他県からわざわざ観に来てくださった方が多数いらしたようですし、夕方、花笠祭り初日に八百屋へ買い物に出かけましたら「祭り目的」と思しきアジア系の団体様を見掛けましたので、山形市民としてホッと一安心した次第でありました。
お祭りだからと言って仕事を休めないのは飲食店従事者の運命(さだめ)でありますが、楽ではないにしても屋台を出している方々は商売をしながら祭り気分も味わえるので羨ましい気もするのであります。
「だったらあなたも屋台を出したらいいじゃないですか。」そのようなお言葉を頂くと、しばし考えながら空を眺め、まだ蒸し暑い夕方の空に向かって「そりゃそーなんですけどね~!」と叫んでしまうかも知れませんが、花笠祭りの時の屋台は個人でやってもたかが知れているものです。
例えば、テーブルはどうするのか、や、テントはどうするのか、という問題がありますし、仮にテーブルやテントを家庭用アウトドアグッズで補ってしまうとどうしても素人っぽさを払拭出来ず、良いイメージをアピールする事が出来ない=売り上げを作る事が出来ない、という落とし穴に陥ってしまう事は必至でしょう。
「お祭りの時だから用意すれば何でも売れる」という考えはただの幻想でしかありません。用意するのであれば「手軽さ」「買いやすい金額設定」「スムーズな提供オペレーション」そして「味」というのを考え抜かなくてはなりません。お祭りで道行く人でも提供したものを買ってくれれば「お客様」なのです。
数年前、当店が入っております「商店会(全くヤル気が無い商店会)」で珍しく花笠祭り時に「出店をやろう」という話になり、その調理、販売を任された事がありました。
その時、先ほど挙げました「手軽さ」「買いやすい値段設定」「スムーズな提供オペレーション」を考えると勿論、フランス料理は除外されます。「手軽さ」「買いやすさ」に重きを置くと「焼き鳥」「煮込み」「焼きそば」などに絞られ、当店の厨房機器や器具も加味すると「焼き鳥」「煮込み」にする事にしました。
丁度良い事にその時某ホテル調理長から牛スジ肉を頂いたばかりでしたので煮込みは「牛スジ煮込み」に決定。炭火の焼き台もありますから(チャコールグリルをやろうと購入した物)焼き鳥も出来ます。
あとは「味」の問題です。煮込みは足りないスジ肉は業者さんから取り寄せ2回ほど煮こぼしてアクを取ってから柔らかく煮込むのですが、正直、牛スジだけからでは味の奥深さを表現する事はできません。そこで、日々の仕事で使っている魚の骨を天日干しし、昆布と一緒に布袋に入れて牛スジと一緒に煮込みます。牛肉のアミノ酸と魚の骨、昆布のイノシン酸のブレンドですな。しかし、一緒に煮込みすぎると魚臭さが目立ってしまいますから骨と昆布の引き上げ時というのも重要です。
牛スジが柔らかくなったら玉葱、人参、こんにゃく(穴をあけ手でちぎったもの)、を大量に投入し一緒に煮込み、日本酒、味醂、醤油で味を付けて更に煮込み、一晩置いて馴染ませます。因みに、これを30リットルの寸胴2本分仕込みました。
「焼き鳥」はもっと大変で、「タレ」の仕込からしなければなりません。大きな鍋に、醤油、味醂、日本酒を1升づつ入れ上白糖1キロを加えて沸騰させます。それに焼いた葱、生姜、玉葱、焼いた鶏ガラを入れて弱火で2時間ほど煮込み濾して冷まし、一週間以上冷蔵庫で寝かせます。
焼き鳥は「もも肉」一種類にしました。いや、ひとりでは「もも肉」だけの仕込みが限界です、600本刺さなければならないのですから。刺し方も考えると難しいもの。逆に言えば簡単な料理など無い、という事です。
鶏の「もも肉」は正確に言うと「もも」と「すね」に分かれます。「もも」は柔らかくジューシーな身質、「すね」はスジっぽさを感じますが弾力があり食べごたえがあります。
これを一串に「もも」2、「すね」1の3貫刺します。食べた時の鶏肉のジューシーさに重点を置くと、これ以上小さくして4貫にするよりも、少し大きめにして3貫の方が良いと考えました。
これを「白焼き」しタレをつけて「本焼き」となるのですが、流石に「タレ」だけでは飽きてしまいます。そこでバリエーションを増やし「タレ」「塩」「カレー味」「オマール塩」の4種類にしてみました。(オマール塩はオマールエビの殻を乾燥させ粉砕し塩を合わせたものです。勿論、思い付きだがね)
売れ行きは上々で煮込み、焼き鳥、共に二日間で完売する事が出来ました。
そこで疑問に思われる方がいらっしゃるのではないでしょうか?なぜ、商店会の屋台の売り上げが良かったのに毎年、それを実施しないのか?
それは、大きな壁と問題点が立ちはだかったからです。
まず一つの壁は、終わってから商店会の古参の方々が「なぜ焼き鳥をタダで食べさせなかったのか?」と騒ぎ始めたからです。確かに、商店会の催し、と考えれば商店会の人たちに無料配布、という事も考えられたのですが、屋台の設置及び撤去、テーブルの設置及び撤去、なども含めて何一つ関わらず、当初、自分たちは関係ない、との立場を取ってきて、「商店会の方々はすべて半額」を黙認していたはずなのに突然、「焼き鳥をタダで食べさせろ」と来るのはどうなんでしょうか?
私的な考えは花笠祭りの屋台に商店会として参加する事で当店を含む通りの商店街を少しでも知ってもらえたら、そして、その売上げ金で商店会の皆さんで打ち上げ出来たら、と思ったのですが、やはり若輩者の立場はいつの時代も弱いものです。
そして最後の問題点。これが決定的だったのかもしれません。
え~、何と言いましょうか、一緒にその屋台をやってきた方が、まぁ、何と説明しましょうか・・・着服したんですな、売上金を。
すぐにそれが発覚して当商店会の屋台は幻の1回で終了する事となりました・・・ダークな終わり方ですよ・・・
来年は何かやろうか、毎年そのような事を思うのですが、いろいろ考えると難しいです、な。
それより、ご予約様で埋まってくれればいいんですよね、店が。
それを考えよ。
毎年この時期に行われる「山形花笠祭り」は東北4大祭りのひとつに数えられるそうですが、何だか、一つ足していただいたような気がして申し訳ない気持ちになってしまします。
しかし、ニュースでは他県からわざわざ観に来てくださった方が多数いらしたようですし、夕方、花笠祭り初日に八百屋へ買い物に出かけましたら「祭り目的」と思しきアジア系の団体様を見掛けましたので、山形市民としてホッと一安心した次第でありました。
お祭りだからと言って仕事を休めないのは飲食店従事者の運命(さだめ)でありますが、楽ではないにしても屋台を出している方々は商売をしながら祭り気分も味わえるので羨ましい気もするのであります。
「だったらあなたも屋台を出したらいいじゃないですか。」そのようなお言葉を頂くと、しばし考えながら空を眺め、まだ蒸し暑い夕方の空に向かって「そりゃそーなんですけどね~!」と叫んでしまうかも知れませんが、花笠祭りの時の屋台は個人でやってもたかが知れているものです。
例えば、テーブルはどうするのか、や、テントはどうするのか、という問題がありますし、仮にテーブルやテントを家庭用アウトドアグッズで補ってしまうとどうしても素人っぽさを払拭出来ず、良いイメージをアピールする事が出来ない=売り上げを作る事が出来ない、という落とし穴に陥ってしまう事は必至でしょう。
「お祭りの時だから用意すれば何でも売れる」という考えはただの幻想でしかありません。用意するのであれば「手軽さ」「買いやすい金額設定」「スムーズな提供オペレーション」そして「味」というのを考え抜かなくてはなりません。お祭りで道行く人でも提供したものを買ってくれれば「お客様」なのです。
数年前、当店が入っております「商店会(全くヤル気が無い商店会)」で珍しく花笠祭り時に「出店をやろう」という話になり、その調理、販売を任された事がありました。
その時、先ほど挙げました「手軽さ」「買いやすい値段設定」「スムーズな提供オペレーション」を考えると勿論、フランス料理は除外されます。「手軽さ」「買いやすさ」に重きを置くと「焼き鳥」「煮込み」「焼きそば」などに絞られ、当店の厨房機器や器具も加味すると「焼き鳥」「煮込み」にする事にしました。
丁度良い事にその時某ホテル調理長から牛スジ肉を頂いたばかりでしたので煮込みは「牛スジ煮込み」に決定。炭火の焼き台もありますから(チャコールグリルをやろうと購入した物)焼き鳥も出来ます。
あとは「味」の問題です。煮込みは足りないスジ肉は業者さんから取り寄せ2回ほど煮こぼしてアクを取ってから柔らかく煮込むのですが、正直、牛スジだけからでは味の奥深さを表現する事はできません。そこで、日々の仕事で使っている魚の骨を天日干しし、昆布と一緒に布袋に入れて牛スジと一緒に煮込みます。牛肉のアミノ酸と魚の骨、昆布のイノシン酸のブレンドですな。しかし、一緒に煮込みすぎると魚臭さが目立ってしまいますから骨と昆布の引き上げ時というのも重要です。
牛スジが柔らかくなったら玉葱、人参、こんにゃく(穴をあけ手でちぎったもの)、を大量に投入し一緒に煮込み、日本酒、味醂、醤油で味を付けて更に煮込み、一晩置いて馴染ませます。因みに、これを30リットルの寸胴2本分仕込みました。
「焼き鳥」はもっと大変で、「タレ」の仕込からしなければなりません。大きな鍋に、醤油、味醂、日本酒を1升づつ入れ上白糖1キロを加えて沸騰させます。それに焼いた葱、生姜、玉葱、焼いた鶏ガラを入れて弱火で2時間ほど煮込み濾して冷まし、一週間以上冷蔵庫で寝かせます。
焼き鳥は「もも肉」一種類にしました。いや、ひとりでは「もも肉」だけの仕込みが限界です、600本刺さなければならないのですから。刺し方も考えると難しいもの。逆に言えば簡単な料理など無い、という事です。
鶏の「もも肉」は正確に言うと「もも」と「すね」に分かれます。「もも」は柔らかくジューシーな身質、「すね」はスジっぽさを感じますが弾力があり食べごたえがあります。
これを一串に「もも」2、「すね」1の3貫刺します。食べた時の鶏肉のジューシーさに重点を置くと、これ以上小さくして4貫にするよりも、少し大きめにして3貫の方が良いと考えました。
これを「白焼き」しタレをつけて「本焼き」となるのですが、流石に「タレ」だけでは飽きてしまいます。そこでバリエーションを増やし「タレ」「塩」「カレー味」「オマール塩」の4種類にしてみました。(オマール塩はオマールエビの殻を乾燥させ粉砕し塩を合わせたものです。勿論、思い付きだがね)
売れ行きは上々で煮込み、焼き鳥、共に二日間で完売する事が出来ました。
そこで疑問に思われる方がいらっしゃるのではないでしょうか?なぜ、商店会の屋台の売り上げが良かったのに毎年、それを実施しないのか?
それは、大きな壁と問題点が立ちはだかったからです。
まず一つの壁は、終わってから商店会の古参の方々が「なぜ焼き鳥をタダで食べさせなかったのか?」と騒ぎ始めたからです。確かに、商店会の催し、と考えれば商店会の人たちに無料配布、という事も考えられたのですが、屋台の設置及び撤去、テーブルの設置及び撤去、なども含めて何一つ関わらず、当初、自分たちは関係ない、との立場を取ってきて、「商店会の方々はすべて半額」を黙認していたはずなのに突然、「焼き鳥をタダで食べさせろ」と来るのはどうなんでしょうか?
私的な考えは花笠祭りの屋台に商店会として参加する事で当店を含む通りの商店街を少しでも知ってもらえたら、そして、その売上げ金で商店会の皆さんで打ち上げ出来たら、と思ったのですが、やはり若輩者の立場はいつの時代も弱いものです。
そして最後の問題点。これが決定的だったのかもしれません。
え~、何と言いましょうか、一緒にその屋台をやってきた方が、まぁ、何と説明しましょうか・・・着服したんですな、売上金を。
すぐにそれが発覚して当商店会の屋台は幻の1回で終了する事となりました・・・ダークな終わり方ですよ・・・
来年は何かやろうか、毎年そのような事を思うのですが、いろいろ考えると難しいです、な。
それより、ご予約様で埋まってくれればいいんですよね、店が。
それを考えよ。