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「陶磁器・パヤオ」シリーズ・9

2016-01-30 08:22:09 | 北タイ陶磁
<続き>

<ウィアン・ブア陶磁>

●その他の遺跡で出土したウィアン・ブア陶磁
パヤオ県ジュン郡ロー地区のウィアン・ロー遺跡近くにある廃寺ワット・シーチュムで、2005年に行われた芸術局による遺跡調査で、双魚文様のある黄緑色の青磁釉が掛かった盤が出土した。これは、ウィアン・ブア窯群の盤である。合わせて高台底に陳□□造と書かれた、明時代の陶片も同時に出土した。
(写真は、ウィアン・ブア窯群のひとつである、ジャーマナス古窯址から出土した双魚文盤片で、ワット・シーチュム廃寺から出土した盤片と同じものである)
この他、上記のウィアン・ブア陶磁と中国陶磁が出土した同じ場所で、下写真のファクカーム文字が刻文された煉瓦片も見つかっている。煉瓦片に書かれたのは、ファクカーム文字である。仏暦21-22世紀(西暦15世紀半ばー16世紀半ば)頃のもので、これまで見つかったものと同じ頃である。
もっとも古いファクカーム文字の刻印は、仏暦1954年(西暦1411年)ワット・スワンマハーウィハーン⑨のもので、ファクカーム文字の手本になる刻文であるとされている。
ワット・シーチュムで出土した、中国陶磁の銘と煉瓦片の刻文から推測できることは、同時に出土したウィアン・ブア窯群の陶磁器は、同時代のものであると推測される
盤の魚文は、豊かであることを意味する。中国の格言では、“魚”は物事が有り余るほど豊かに多くあること、もしくは食べ物が豊かに多くあること、を意味する。
中国人は、同音の言葉をよく用いる。余る、有り余るという意味である、余(ウィー)と、魚を意味する、魚(ウィー)は、関連づけて用いられているうちに、完全さ豊富さを意味するようになり、シンボルとして用いられるようになった。伝統文化と人生に対する、中国人の哲学であろう。
現在でも、中国人が中国旧正月の時などに、年年有余というお祝いの言葉を書くのをよく目にするだろう。これは、ニアン ニアン ヨウ ウィー と読み、「毎年食べ物、使うものが豊富にありますように」、という意味になる。魚を文様に使う場合は、たくさんの魚文を使うほど、とても豊富な、とか食べ物や使うものが有り余るほど豊富な、という意味になる。

話は飛んで恐縮である。下の大壺は、透明釉の下に鉄彩で文様が描いてある。カロン窯群⑩のもので、文様の描き方が中国陶磁と安南陶磁によく似ている。仏暦21世紀(西暦15世紀半ば)頃のもので現在、パヤオ県ムアン郡ウィアン地区のワット・シーコムカム付属文化展示館に収蔵されている。


注釈
⑨パヤオ県内で見つかった刻印。現在、チェンラーイ県チェンセーン郡の国
 立博物館に収蔵されている。
⑩正式にはガーロンとタイ人は呼ぶが、日本で通りのよいカロンと表示する



                             <続く>


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