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北タイ陶磁の謎が解けない・その4(最終回)

2015-03-02 10:08:40 | 北タイ陶磁
 過去ホノルル美術館とバンコクの東南アジア陶磁博物館で見た、端正な姿の掛分け釉大壺の存在が、眼に焼き付いたままである。

(ホノルル美術館:二色釉印花文四貝耳壺)


(バンコク大学東南アジア陶磁博物館:二色釉印花文両耳壺)

 御覧の各位はどのように見られたのであろうか? 形状から配色に至るまでよく似ている。印花文の一部が異なる点、配置も若干異なるが、間違いなく兄弟関係にある。
 似たような印花文は2014年1月7日、ナーン・ボスアック古窯址の私設博物館で見た。
(ホノルル美術館) 

(東南アジア陶磁博物館)
 写真中青丸で囲んだ印花文が、先の私設博物館で見た文様である。これを見ると二つの壺はナーン・ボスアック窯と思われるが、主文様と思われる、稲穂のように見える文様を見ることができなかったので、上掲写真の大壺をボスアック産と断言はできない。更なるボスアック窯の調査と報告が求められる。
 
 赤丸で囲った稲穂のような文様は何であろうか? 当該ブロガーには、先端が鉤の手のように曲がっているのは、稲穂の先端にできる髭(正式名称を知らず、髭と表現した)と考えている。
 これを稲穂文様と解釈できるのか?・・・という疑問が解けないでいる。そこで種々当たっているが、これだというものに行きついていない。
 では、全くないかと云うことになると、あるにはある。インターネット検索すると、PHUM KAO BIN 稲穂をモチーフとした格子模様なるHPがヒットした。それによると、ラーマ5世の時代に生まれた文様で、元来は宮殿など王室関係のみに使われていた、タイの象徴的な文様。・・・と記載され、時代はいつまで遡るか?という説明はない。そこに示された文様は、次のようなものである。

 この格子文様がベンジャロンに使われているという。三つに分岐するのは、上の大壺の文様と同じであり、穂の先端は髭のようであり、これも同じである。しかし、これをもって大壺も稲穂文様だとするには、早計であろう。
 「銅鼓の儀礼と世界観についての一考察:鈴木正崇」なる論文がある。そこには、”葬送儀礼に於いて銅鼓と共に稲穂も用いるという。この稲穂は、あの世での飽食を願うとされている。”
 日本でも稲穂は、目出度さの象徴で正月飾りに多用される。大壺に印された印花文は吉祥を表す文様であろうことに、疑いの余地はなさそうであるが、稲穂文様と決めつけたわけでもない。時間を要すと思うが継続して追究してみたい。


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