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「四谷怪談は面白い」横山 泰子(平凡社)
鶴屋南北の傑作「東海道四谷怪談」に関する記事を続けて書いてきて、それをテーマとした2冊の新書(小林恭三、廣末保による本)を読みました。いずれも「四谷怪談」の世界を深堀していて興味深い本でしたが、今回、横山泰子による「四谷怪談は面白い」を読んで、実はこの本が一番気楽に読めてしかも面白かったなと思いました。まず著者の横山が、江戸東京博物館の学芸員であるところがいいじゃないですか?(現在はどうなのかわかりません)本を読む限り、なかばお岩さんフリークと化しているといえなくもない著者の勤務先が江戸をテーマとした博物館というのが知的エンタテイメント性を連想させるし、それによって本も楽しい感じに思えてくるのです。書くことや研究することが本業の作家とか学者と違い、まあ学芸員ということで研究も仕事の一つとしてあるのでしょうが、そこには趣味と仕事が一致していているサラリーマンとして、作家や学者と違った立ち位置にある専門職としての仕事と人生の幸福な関係といった風なものが本から見て取ることもできるし、それが素直に文章に現れているようにも感じたのです。
その本によると歌舞伎の「四谷怪談」に出てくる仕掛けを解説したものが、勤務先の江戸東京博物館に展示されているとあります。以前にそこへ行った時は「四谷怪談」は、ボクの関心の対象外であったこともあり見過ごしたのか、記憶にないのかとにかく全然気がつかなかったのですが、こうなると一度見てみてみてい気もします(展示替えでなくなっているかも知れませんが…)。
その「四谷怪談」ですが、今までボクがこのブログで紹介した映画もそうなんですが、鶴屋南北の原作から外れて様々な伊右衛門像や、人物関係や設定を変えているなど、「東海道四谷怪談」を中心に映画、舞台、小説、エッセイにといくつもの「四谷怪談」が存在していることがわかります。原作のインパクトが強いこととともにそれを観て物申したいこともある。つまりそれだけ作り手を刺激する作品であるという証拠なんでしょう。本に登場したものを少しだけ列挙してみても、
円地文子「江戸文学とわずがたり」(エッセイ)、大村嘉代子「婦人の立場より見たる四谷怪談」(エッセイ)、深作欣二「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(映画)、蜷川幸雄「魔性の夏」(映画)、花組芝居「いろは四谷怪談」(演劇)、北篠秀司「お岩と伊右衛門」(演劇)、かわぐちかいじ「アクター」(漫画)、花田清輝「新編映画的思考」(エッセイ)、芥川龍之介「市村座の四谷怪談」(エッセイ)、中川信夫「東海道四谷怪談」(映画)、鶴見俊輔&安田武志「忠臣蔵と四谷怪談」(対談)、冨塚秀子「伊右衛門と長兵衛」(演劇)、・・・・・・まだまだあります。森茉莉「ドッキリ・チャンネル」(エッセイ)、中山幹夫「やはり伊右衛門にはなれなかった」(エッセイ)、石坂洋次郎「石中先生行状記」(小説)、金子光晴「怪談のこと」(エッセイ)、水木しげる「東海道四谷怪談」(漫画)、井上金太郎「いろは仮名四谷怪談」(映画)、橋本治「即ち、俳優の肉体は画布である」(エッセイ)、宇野信夫「隠亡堀」(演劇)、国枝史朗「隠亡堀」(小説)、三木のり平&京塚昌子「喜劇・四谷怪談」(演劇)、寺山修司「『四谷怪談』を見た日の横尾の日記」(エッセイ)、・・・・・・
もう疲れてきたからこの辺で止めにしますが、これでも半分に満たない量で、それを考えると相当な資料に横山が当たり見聞していることが分かります。それ以外にも、横山が収集できなかったものや、その本が出版されて以降に上演されたり書かれた「四谷怪談」モノがあるわけで、それを想うと南北の生んだこの怪談がどれだけの人たちに影響を与えてきたか。その深さと広さにはびっくりさせられるだけです。そしてそうした作品群を紹介しながら「四谷怪談」の世界を読み解いていく横山の行為は、実はそれらから発想のヒントを貰ってくる行為にもなっていて、それが著者の思考に幅を持たせているんではないかと想像させられるのでありました。
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鶴屋南北の傑作「東海道四谷怪談」に関する記事を続けて書いてきて、それをテーマとした2冊の新書(小林恭三、廣末保による本)を読みました。いずれも「四谷怪談」の世界を深堀していて興味深い本でしたが、今回、横山泰子による「四谷怪談は面白い」を読んで、実はこの本が一番気楽に読めてしかも面白かったなと思いました。まず著者の横山が、江戸東京博物館の学芸員であるところがいいじゃないですか?(現在はどうなのかわかりません)本を読む限り、なかばお岩さんフリークと化しているといえなくもない著者の勤務先が江戸をテーマとした博物館というのが知的エンタテイメント性を連想させるし、それによって本も楽しい感じに思えてくるのです。書くことや研究することが本業の作家とか学者と違い、まあ学芸員ということで研究も仕事の一つとしてあるのでしょうが、そこには趣味と仕事が一致していているサラリーマンとして、作家や学者と違った立ち位置にある専門職としての仕事と人生の幸福な関係といった風なものが本から見て取ることもできるし、それが素直に文章に現れているようにも感じたのです。
その本によると歌舞伎の「四谷怪談」に出てくる仕掛けを解説したものが、勤務先の江戸東京博物館に展示されているとあります。以前にそこへ行った時は「四谷怪談」は、ボクの関心の対象外であったこともあり見過ごしたのか、記憶にないのかとにかく全然気がつかなかったのですが、こうなると一度見てみてみてい気もします(展示替えでなくなっているかも知れませんが…)。
その「四谷怪談」ですが、今までボクがこのブログで紹介した映画もそうなんですが、鶴屋南北の原作から外れて様々な伊右衛門像や、人物関係や設定を変えているなど、「東海道四谷怪談」を中心に映画、舞台、小説、エッセイにといくつもの「四谷怪談」が存在していることがわかります。原作のインパクトが強いこととともにそれを観て物申したいこともある。つまりそれだけ作り手を刺激する作品であるという証拠なんでしょう。本に登場したものを少しだけ列挙してみても、
円地文子「江戸文学とわずがたり」(エッセイ)、大村嘉代子「婦人の立場より見たる四谷怪談」(エッセイ)、深作欣二「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(映画)、蜷川幸雄「魔性の夏」(映画)、花組芝居「いろは四谷怪談」(演劇)、北篠秀司「お岩と伊右衛門」(演劇)、かわぐちかいじ「アクター」(漫画)、花田清輝「新編映画的思考」(エッセイ)、芥川龍之介「市村座の四谷怪談」(エッセイ)、中川信夫「東海道四谷怪談」(映画)、鶴見俊輔&安田武志「忠臣蔵と四谷怪談」(対談)、冨塚秀子「伊右衛門と長兵衛」(演劇)、・・・・・・まだまだあります。森茉莉「ドッキリ・チャンネル」(エッセイ)、中山幹夫「やはり伊右衛門にはなれなかった」(エッセイ)、石坂洋次郎「石中先生行状記」(小説)、金子光晴「怪談のこと」(エッセイ)、水木しげる「東海道四谷怪談」(漫画)、井上金太郎「いろは仮名四谷怪談」(映画)、橋本治「即ち、俳優の肉体は画布である」(エッセイ)、宇野信夫「隠亡堀」(演劇)、国枝史朗「隠亡堀」(小説)、三木のり平&京塚昌子「喜劇・四谷怪談」(演劇)、寺山修司「『四谷怪談』を見た日の横尾の日記」(エッセイ)、・・・・・・
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