飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

「昭和の風貌」展(FUJIFILM SQUARE)を見た

2010-09-22 | 美術&工芸とその周辺
ボクは昭和36年生まれの49歳です。一人の人間としてこの世に生を受け、いろいろな価値観の基礎が培われるまでの思春期を昭和という時代で過ごしました。残りの人生を順調に生きたとするとおそらく平成の時代の方が長く生きたことになるのでしょうが、間違いなく影響を受けたのは昭和という時代です。



今回、この写真展を見てその考えを強くしました。今ほど情報通信のインフラが整備されていない時代(とはいいながら印刷と電波によるマスメディアが巨大化したそれは過去の時代にくらべて圧倒的に情報量が多い時代ではあったのですが)、昭和にはまだまだ神話となりえるヒーローがいたのだと思いました。昭和の情報は、どちらかというと善行とともにあらゆるスキャンダルを剥き出しにしよくもわるくも現象は等価に扱われ、あっという間にネットや携帯により広がってしまい、もはや人格者などという偶像は存在するのだろうかと虚無感さえおぼえる平成の情報とは違い、ヘタしたら悪事までが伝説として美化され媒体に表現され、むしろ広告宣伝的な色彩が強かったように思えるのであります。皆が同じものを見て感動し共感した時代、そして声高かに反対をとなえることができた時代、まだ幻想は時代の空気として残っていた時代であったもかもしれません。



今回展示されていたの肖像写真には、いわゆる文豪と呼ばれる小説家たちが多くありました。太宰治や坂口安吾などかならずその人物を紹介するときに名刺のようにくっいて紹介される写真もありました。うらおぼえですが、作家の藤本義一が男の顔は履歴書、女の顔は請求書といったような本を書いていたように記憶しています。こうして昭和のヒーローたちの写真をながめていると平成のヒーローたちがパッと浮かび上がってこないのに気づきます。社会が成熟し履歴書のインパクトが多少なりとも弱くなってきているのでしょうか。それから類推して、日本の弱体化が本当にそうなっていないように祈るばかりと思いながら会場を後にしました。



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