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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

永遠の妖女#65・・・楽劇「サロメ」(コヴェント・ガーデン王立歌劇場2008年)

2011-03-01 | サロメ

~R.シュトラウス:楽劇『サロメ』全曲~

 

■コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
■指揮:フィリップ・ジョルダン
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■出演サロメ:ナディア・ミヒャエル、ヨカナーン:ミヒャエル・フォレ、ヘロデ:トーマス・モーザー、ヘロディアス:ミカエラ・シュースター
■収録時期:2008年3月

 

ナディア・ミヒャエルが主演したオペラ「サロメ」を見ました。この盤(ブルーレイ)には日本語字幕がついておりませんので、英語字幕で見ることとなりましたが、当方、今まで何度か「サロメ」を見ているし、またサロメをテーマに記事をつらつらと書いてきた経由もあるので久しぶりではあったのですがなんとかわかりました(英語なので詳細がわからないところもあり)。字幕を逐一追っかけないぶんオペラ歌手の表情などの演技面やその歌声などをじっくり?見ることができました。その点から見るとサロメを演じたディア・ミヒャエルの後半のパフォーマンスは素晴らしくよかったと思いました。エロスと狂気の濃密な世界が(テレビなので実際はわからないのですが)蔓延し舞台がそれ一色で染まっていったようにも見えました(あくまでモニターを通してそう感じたということ)。

 

 

 

舞台の設定は古代の王制国家から近現代の軍事国家(ファシズム国家)であるかのように置き換えられています。メイキングがあったのですが、ボクは語学力がないのでわからずじまいではあったのですが、かろうじてパゾリーニの映画「ソドムの市」を何か参考にしているようなことは、何となくわかりました(サロメをソドムの娘と呼ぶ台詞もあるし)。その映画こそマルキ・ド・サドを原作としたファシズム国家による性的な暴力三昧の退廃と快楽、狂気に満ちた世界を描いた映画ではなかったか?オペラの冒頭に裸の女性が出てくるのでそれに関係があるのか?ないのか?メイキングが理解できなかったので、以下はボクの印象で書いていこうと思うのですが、この冒頭の女は「ソドムの市」に出てくるような女奴隷なのか、あるいはファシストの幹部に雇われた娼婦のようにも見えました。いずれにせよ、この舞台の世界は道徳が崩壊し性的享楽が蔓延している退廃した世界の話であることがわかってくるのです。

 

ボクは音痴なので音楽的なところはよくわからないのですが、今回サロメを演じたナディア・ミヒャエルは、美人でスリム(オペラ歌手によくみられる太った体型ではない)なのでサロメを演じるにはぴったりではないかと。少なくとも今まで見たサロメで一番の美人であります。なので中盤のダンスシーンは期待も膨らむというものなのですが、残念!期待していた?見せ場であるサロメの7つのヴェールの踊りは、妖艶なサロメ・ダンスを見せるのではなく観念的な展開でダンスというよりはヘロデ王との性的な駆け引きを見せるようなものなっていました。ただ、ヘロデ王とサロメが脇に引っ込み、2人で再び登場するときは、そこには性的な関係があったようなことを短い時間ながらも示唆しているような印象をあたえました。

 

 

 

そして後半、ヨカナーンの首が削ぎ落とされてからの、サロメとその生首の戯れはかなりグロテスクなものになっています。何故か全裸になる首切り役人は地下牢に降りていきヨカナーンの首をかっ切ります。頭を剃りあげ筋肉質の全身がその返り血で赤く染まり、ヨカナーンの生首をサロメに差し出します。その生首からは血が滴り落ちています。サロメは白い衣装なのでヨカナーンの首を愛撫することで、その血がべっとりとつくわけです。彼女の白い衣装はヨカナーンの血で真紅に染まっていくのです。この異常な状態でサロメはある種の恍惚としたトランス状態に入っていき狂気の様相を見せます。グロテスク・リアリズムとかグロテスク・エロティシズムとでもいえばいいのでしょうか?サロメという女の存在がが際立って見える瞬間です。

 

ナディア・ミヒャエルが演じたサロメ、7つのヴェールの踊りでは脱いでくれなかったのが残念でしたが(この場面をもっと過激に演出したらさらに強烈な「サロメ」になったろうに…と思います)、それ以外のところでは充分魅せてくれました。「サロメ」を演じきれる代表的なオペラ歌手といわれているのがわかるような気がします。ナディア・ミヒャエルの「サロメ」はとてもよかったので、もう一本その彼女が出演している別演出のバージョンの「サロメ」があるので、それもどうしても見たくなりCDショップへ足を運んでしまったのでありました。

 

 

 

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