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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

永遠の妖女#62・・・R.シュトラウス「サロメ」(2000年・新国立劇場)

2008-05-05 | サロメ
■日時:2000年4月
■劇場:新国立劇場
■指 揮:若松弘
■演 出:アウグスト・エヴァーディング
■キャスト:(サロメ)シンシア・マークリス、(ヘロデ)ヨーゼフ・ホプファーヴィザー、(ヘロディアス)ネリー・ボシュコワ、(ヨハナーン)福島明也、他
■管弦楽:新星東京交響楽団

2000年に新国立劇場で上演された「サロメ」であります。同じ演出のもとキャストを替えて上演しています。となるとキャストによってその舞台の印象も変わってくるということになります。そして、このプロダクトも先の2002年に新国立劇場で上演された「サロメ」と同様、ヨハナーンは日本人が演じています。それについては前回と同じような感想を抱いたので前に書いた記事を参考にしてもらうとして、サロメを演じるシンシア・マークリスは、筋が通った鉤鼻で魔女的な美人、ステージに立っていても一際華がありビジュアル面で存在感を出していました。サロメを魔性の妖女とみるならば、とてもその雰囲気をらしく醸し出しています。

演技のほうも歌に意識が集中してしまうことなく細部にも気を使っているようにも見えます。新国立劇場で上演されたアウグスト・エヴァーディング演出バージョンの「サロメ」をこれで3本観たことになるのですが、このシンシア・マークリスが一番見栄えもし華美な感じがしました。(音楽音痴のため、肝心の歌のほうの評価はわかりませんが)

見せ場である七つのヴェールの踊りでも力が入っていました。オペラ歌手なのでおせじにもダンスはうまいとは言えませんが、身こなしはまだ軽やかでした。途中から乳首が透けて見えシンシア・マークリスがノーブラであることがわかります(踊りながら大きなおっぱいがポロリとはみ出すサービスぶり)最後は巻きスカートをさっと脱ぎ堂々のトップレスになり、一瞬全裸?かと観客をアッと言わせます。若干ヒップあたりの肉がたるんではいたのですが。その心意気は買いたいと思いました。

同じ演出のもとでのサロメであるわけですからこの見せ場であり観客も注目する踊りの部分で、どう演じて見せるかそこに違いが出てくるからです。つまり歌手がどうその場面を対処するかが興味のあるところです。本来の歌の部分ではなく、ダンスと度胸が問われるところなので歌手にとってはしんどいのでしょうが。ただ、残念なのはボクが音楽音痴であること、歌唱力の違いがよくわからないのでそのあたりの評価ができないのです。

また、新国立劇場版「サロメ」を観ていてずっと気になっているのはヨハナーンの斬首後のその生首の扱い方です。やはりこの上演でもサロメは手に持って乱暴に振り回していました。そこには死者への畏怖の気持ちがあまり感じられません。文化の違いと見ればいいのでしょうか、たとえば日本では骨壷を振り回すなんて不謹慎そのものです。サロメにとってヨハナーンの首は恋焦がれた対象であったはず。戦場で敵の首を刈りその戦利品というものではないはずです。どうもそのあたりの演出はなじめないものがあります。

一方のサロメを引き立てるヘロデ王は白髪の紳士であり、猥雑性に欠けていました。できればヘロデ王は脂ぎって太っていて、頭も薄くなっている、義理の娘に欲情する助平おやじ全快のイメージであって欲しいと思いました。それでこそサロメの踊りが生きてくるし、彼女の狂気性が俗世間の常識を突き抜けるものであることがより鮮明になってくるのではないでしょうか。

ところでこの新国立劇場で上演される「サロメ」は、その衣装が紫色をベースにしており、妖しげで狂おしいこの劇をより一層引き立てているように思えます。どの役柄の衣装もとても素敵で惹かれるものがあります。また、装置のほうも丸井円形の古井戸を覆う鉄柵も重量感があり、それがグワーンと上がる時はなかなか圧巻ものです。モスクを模したテント型の宮殿も内と外の世界をうまく表現しており、暗い舞台に一瞬の華やかさを提供します。

派手な顔のサロメは大胆なサロメでもありました。


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