■日時:2011年2月26日(土)、14:00~
■劇場:東京文化会館
■指揮:シュテファン・ゾルテス
■演出:ペーター・コンヴィチュニー
■出演:大隈智佳子、友清崇、片寄純也、山下牧子、他
東京二期会によるオペラ「サロメ」を東京文化会館で見てきた。チラシなどの前情報によると斬新な「サロメ」解釈らしい。確かに予想を裏切るような展開を見せてくれたオペラでした。真っ赤な舞台の幕が開くと高いコンクリートの壁が立っている四角い部屋が、そこに横一文字に並ぶ食卓がある。そこは核戦争が勃発した第三次世界大戦後の地下濠の世界であるという。そこでは出口不能の密閉された閉塞空間でアルコールとドラッグが蔓延した退廃ムードが支配する空間となっている。預言者のヨカナーンは地下に閉じ込められているのではなくテーブルに座りなにやら白い袋を被せられている。(一体どういう立場なのか?)サロメの母であるヘロディアスはヨカナーンが指摘するように淫蕩ぶりを発揮してテーブルの下で男と情事に耽る。(男が生々しくヘロディアスの腰めがけて振っていた)ヘロデ王は音楽に夢中で麻薬に溺れている。(ヘッドホーンをつけて音楽に夢中になっている姿は王の貫禄はない)サロメを制止するナラボートは自害後、そこの地下濠にる男らに男色=死姦の餌食となる。(尻を剥き出しにされ次々と群がる男達)サロメはパンツをはいているのでこれは脱がないなと。全てはメタファーによって構成された舞台であった。テーブルの下から現れた少女は?白い風船は月?
それらがはたしてボクの所まで届いたのか?残念ながら斬新な「サロメ」の解釈に参った、とはいきませんでした。むしろボクにとっては原作を捻りすぎたのではないか?というのが正直な印象だった。あまりにもメタファーを多様し過ぎたため途中から訳がわからなくなってしまった。思うにヨカナーンの首は切断されたのか?否か?なぜ、最後のヘロデ王の台詞「あの女を殺せ!」だけが日本語で歌われたのか?全くそれらの解釈がボクには届かなかった。この「サロメ」はまるで現代美術、モダンダンスを見ているかのような難解さがあった。それはボクがオペラといえば「サロメ」しか見たことがなく現代オペラを知らなさすぎるのか?カタログを購入してそれを読んでいると、7つのヴェールの踊りでは脱がないし踊らないので踊れるオペラ歌手である必要はないと書かれてあった。それはそれでいいが、その前にDVDでナディア・ミヒャエルのサロメを見てしまった直後のこのサロメなので、ちょっとがっかりした。もちろんオペラは唄えることが大前提なのであるが、ミヒャエルのような美貌とスタイルを期待するのは酷なことなんだろうか?
ちなみにボクの力では読み取れなかったパンフレットに記載されていた文章を引用しておく。“四角い舞台装置(第三次世界大戦後の核シェルター、防空濠がイメージされている)の中に閉じこめられた人々は、アルコールや薬物でうさを晴らし、退廃きわまって変態的な遊びに興じている。刹那的な快楽に溺れて不安を忘れようとする現代人の姿だ。実は『サロメ』を現代風に演出するのはヨーロッパでは決して珍しくない。それどころか今日では主流と言ってもよいほどで、ベルリン、パリ、ドレスデン、ハンブルグ等々、ヨーロッパの主要都市の『サロメ』はみな現代風だ。エロや残酷など安っぽい扇情性を退けるのも最近の傾向である。コンヴィチュニーの演出も、その点では世の趨勢に従っているのだが、大胆な基本コンセプトという点ではずば抜けている。というのも《退廃の果ての死》《エロスを突き詰めたあげくの死》が一般的な『サロメ』解釈であり、実際それが間違っているわけではないのだが、彼はこれをひっくり返してしまったのだ。つまり《退廃の果てから広がる未来》というように。こうした逆転はまさに彼の得意とするところ。最後、サロメとヨカナーンは、新しい世界へ旅立つアダムとイヴになるとは、驚くほかない着想である。”
まだまだ、眼と頭と耳の修業が足りんと実感…。
※“”部分、東京二期会「サロメ」公演パンフレット、文:許光俊から引用
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