乱歩NO.１２・・・＜悪魔のような美女～黒蜥蜴／１９７９年＞

悪魔のような美女～黒蜥蜴

放送：１９７９年テレビ朝日
監督：井上梅次
主演：天知茂、小川真由美

江戸川乱歩の原作に、三島由紀夫が黒蜥蜴と明智小五郎の恋をクローズアップさせ劇化した。三島の見事な着眼点によって、先に投稿した映画作品が生まれた。このテレビ番組作品もそれをベースとして、物語は展開されていくが、この作品が一番その恋愛関係に重点をおいて演出されているように見受けられた。

配役も明智小五郎がおなじみの天知茂。天知版＝明智は、大木実・木村功の明智と比べて、犯罪の世界を生き抜きながらも華麗に振舞うある種のハードボイルド的な男の色気がダントツで、暗黒の世界の女王・黒蜥蜴がのめり込んでいくには一番適役に見える。

一方の黒蜥蜴演じる小川真由美も、何気ない所作が美しく、また大人の女の色っぽさに溢れているのだが、どことなく力強さも感じ、配下に何人もの手下を抱える犯罪集団の棟梁としての風格があるのである。そういえば、小川真由美はテレビ時代劇で「女ねずみ小僧」を主演していなかったか？小川真由美さん、絵になる艶があるんだよね。

だから、この存在感ある役者２人の競演なので、たとえば黒蜥蜴と明智がトランプのカードをめくりながら会話するなんていうシチュエーションも許されるのである。

しかし残念なのは、
１．黒蜥蜴が人間椅子となって宝石商・岩瀬宅に乗り込んで娘の早苗を誘拐するのだが、その早苗に黒蜥蜴は変装するのだが、なんと顔いっぱいに白パックで“私は早苗よ”ときたからずっこけもんだ。（今こういったパックはあるのだろうか？）
２．せっかく役者が揃っているのにテレビ番組のため、時間も短く、セットも稚拙。黒蜥蜴のアジトの美術館も台無しだ。
この２つの要素がどうしても気になってしまいドラマの魅力が半減してしまう。

ラストの黒蜥蜴と明智の会話は、
「松吉だと思って、私が自分の心を打ち明けてしまったこと。あれで黒蜥蜴の心は消えてしまった・・・。でもそれでいいのかも知れないわね。死ぬ時は普通の女になって死ねるのだもの。」
「しっかりするんだ。」
「怖い。だんだん暗くなってくる。唇を、あなたの唇を。お願い、息のあるうちに早く・・・。」
というように、女性としての一面をより強調した作品となっている。

脚本はジェームス三木、監督は京マチコ版「黒蜥蜴」を演出した井上梅次、職人の腕か？



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乱歩NO.１１・・・＜黒蜥蜴／１９６４年＞
乱歩NO.１２・・・＜悪魔のような美女～黒蜥蜴／１９７９年＞
乱歩NO.１３・・・＜美しき悪女の伝説　黒蜥蜴／１９９３年＞
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漫画ｎｏ乱歩＃１⇒「黒とかげ」ｂｙ高階良子


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