飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

「ドガ展」(横浜美術館)を見た

2010-09-24 | 美術&工芸とその周辺
横浜美術館で、教科書をはじめ様々なところで無意識に何度も目にすることがあるバレリーナを描いた絵画の名作「エトワール」を目玉としたドガ展を見てきた。ドガなのでいつもの美術展のように物凄い人手なのかなと予想していったが、そうではなく館内はほどほどの人で埋まりゆっくりと作品を鑑賞できた。



まずは「エトワール」。なんといってもバレリーナの動きの一瞬をとらえたような感じが素晴らしい。それはダンスの途中、ジャンプし着地したその瞬間、ポーズをとるその前の姿を描き出しているという説もあるように、それはまだ円環運動を伴った動きの途中であり、バレリーナ自体のの曖昧な線とともに次の華麗な動きを想起させるのだ。そのパステルで描かれた鮮やかな彼女とは裏腹に脇に見える顔が見えない黒い服の男。当時のバレリーナは社会的地位が低くパトロンなしでは成立しえなかったという。今踊っている彼女は、パトロンの欲望の対象なのである。画面の左側の全体の靄のようなものは劇場の装置というよりも言葉にできない欲望の渦を表現しているようにも感じる。一見、華やかな絵の背後にはバレエという特殊な世界の悲しさが同時に見え隠れする傑作なのだ。



バレリーナを多く描いたドガであるが、ただ彼女らを描いただけではない。その背後の闇の世界まで表現しているのだ。そういった視点に立つと14歳のいたいけな少女の彫像は何やら当時のバレエ社会へ抗議しているように見えてくるともいえなくもない。作品ができた頃はその少女はリアルな肌色をしていて、彫像に服を着せるという前代未聞の試みにより、いずれ舞台を見ないパトロンもいたという男の欲望の視線にされされることになる悲しさを無言の訴えを持たせて制作したのかも知れない。その彫像は思っていたより小さくはかない感じがした。美というよりは博物館の展示のように…。


(手前の少女が背中を搔いている自然な仕草に注意)

ドガは画家としては致命的な視力を失っていった。展覧会の最後に展示されていた小さな彫像の数々。それはドガの死後に発見された。その数は150体もあったという。ドガは視力を失っても触覚でそれら見られることのない作品を作っていたのだ。ドガは単なるバレエを綺麗に描いた画家ではなかったことが生の作品を見てわかった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ところで、ドガ展の後、中華街で食事をして山下公園に行った。海に浮かぶ氷川丸を見て、なんじゃ、こりゃ?氷川丸を繋ぐ向かって左側の鎖にかもめが一列になってとまっている。その鎖だけである。いやいや、ユニーク。思わず声を出して笑ってしまった。







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