○○549の11の1『自然と人間の歴史・日本篇』消費税と企業の内部留保

2019-04-13 10:17:52 | Weblog

549の11の1『自然と人間の歴史・日本篇』消費税と企業の内部留保

 本邦企業の内部留保が積み上がっていることについては、世間ではかなり知られるようになっている。例えば、「思惑実感へ滞留資金動かそう」と題してのこんな新聞記事が載っている。

 「今回の景気拡大期では、日本銀行の金融緩和に伴う円安や、世界経済の回復が企業収益を押し上げた。需要は拡大し、物価下落が継続するデフレ状態を脱した。

 雇用も改善し、有効求人倍率はバブル期を超える。政策が一致の成果を上げたといえよう。

 だが、この間の実質国内総生産(GDP)成長率は年平均で1.2%と、これまでの拡大期より低く、回復の実感は乏しい。賃金や消費は力強さを欠く。税金や社会保険料の

負担が増え、手取り収入が伸び悩んでいるためだ。企業や家計が守りの姿勢を転換し、内需主導の成長を実現できるかが問われている。

 企業の内部留保は約450兆円と過去最高に達する。家計の現預金も約970兆円に上り、この6年で100兆円近く増えた。滞留する巨額の資金を、経済活性化に生かすことが大切である。」(読売新聞、2019年4月13日付け) 

 ちなみに、内部留保とは、企業の売上高から人件費や原材料費を差し引き、法人税(赤字法人の場合は徴収されない)や株主への配当などを支払った利益を積み上げたものだ。

 複式簿記(フローでいうと損益計算書(PL))をとっていることから、売上げ分は帳簿でいうと右側の、「おカネをどのような手段で調達したか」をあらわす収益欄に、「売上」として計上されよう。

 そして、それをどのような形で保有しているか(または、使用しているか)は、左側の費用・利益欄にひとまず「現金」として記載することになろう。そういうことだから、今度は、その企業が製品を売り上げることにより調達された現金を使って設備投資をしたり株式を買ったりすると、かかる現金が工場設備や株式、それに配当などに置き換わり、残ったものは現金・預金ということになるのだろう。

 次に、ストックとしての貸借対照表(BS、バランスシート)だが、こちらの左側は資産を記入するのに対し、表の右側の貸方の上部には負債、その下には資本、つまり資産から負債を差し引いた残りである正味資産が入る。

 そして、この資本のところに、今取り上げている内部留保としての利益剰余金などの項目が入る。それから、こちらの資産のところには、前の損益計算書の左側の欄で触れたような観点からの、それぞれの資産項目が入ってくる訳だ。

 この間の内部留保(財務省「法人企業統計調査」による、金融・保険業を除く全産業、資本金1000万円以上が対象)の推移は、1989年度が約116兆円、2003年度が約185兆円、2015年度が約185兆円、2017年度に至っては約446兆円にもつみあがっている。2017年度の結果をやや詳しく見ると、売上高は前年度比6.1%増の1544兆142万円8億円、経常利益は11.4%増の83兆5543億円の過去最高を記録した。

 なお、新基準に基づく国内の設備投資については、前年度比5.8%増の45兆4475億円とこれまた過去最高だったものの、内部留保の伸び率9.9%増には及ばなかった。

 次に、国民経済計算の資金の受け渡しの状況を見ると、一国の部門の貸出と借入との差が記されており、年間にどれだけの金額が貯蓄と投資の差額として残るかを示す。この値がプラスの場合は「純貸出」、逆にマイナスになると「純借入」という。それらのうち、企業部門(非金融企業、つまり金融企業を除く)の2015年のデータを見ると、GDP比で約5.0%もの貯蓄超過となっているのに対し、「ドイツは約2.7%、米国は約0.5%、英国は約0.1%」(OECD(「先進国」の集まりである経済協力開発機構のウェブサイト、伊藤元重「GDP分析―企業の貯蓄、日本は突出」2018年1月15日付け読売新聞において引用)と、日本の貯蓄が突出した形となっている。

 ちなみに、日本での2015年度の値は、「非金融法人企業」の同実績は25.3兆円のプラスであって、対名目GDP比は4.8%だったのに対し、「一般政府」(地方政府を含む)の場合は17.4%のマイナス、対名目GDP比は3.3%のマイナスであった(内閣府経済社会総合研究所「2015年度国民経済計算年次推計(2011年基準改定値、フロー編)」2015年12月22日)。

(続く)

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