951『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの経済・社会政策の行方(2021政権交代に際して)
🔺🔺🔺(2021.2上旬時点)
アメリカ大統領選挙後の方向性は、まだどうなるかわからない。とはいうものの、やや乱暴ながら、2021年1月の大統領の交代局面におけるトランプ政権の経済政策とバイデン新政権の経済政策(予想)との比較を試みてみよう。
(1)まずは、財政政策から。そのなかでは、1月中旬には、ドライバー政権下で決まった2次にわたる対新型コロナ経済対策(計約4兆ドル規模)に加え、新たに約1.9兆ドルの追加経済対策をまとめる、よう議会にその法案を提出した。
また、税制改革はどうだろうか。連邦法人税率を見よう。こちらは、トランプ政権による2018年からの実施改正で一律21%(その前の最高税率は35%)となってから現在にいたるも、同政権の公約は現状維持、中国から撤退したアメリカ企業に対する税制優遇あり。
これに対してバイデン新政権は、この最高税率を28%へ引き上げることを公約。工場を海外移転したアメリカ企業への課税強化をうたい、かたや国内で雇用創出、投資を行った企業には税を優遇を行う。
現在のキャピタルゲイン課税の最高税率が最高23.8%であるのを、トランプ政権の公約によると、15%ないしは18.8%へ引き下げるという。これに対し、バイデン新政権は、同率を39.6%へ引き上げるという。
現在の個人所得税率の最高は37%となっている。これは、トランプ政権が前述の法人税改正と合わせ、2018年から実施させた改正であって、この時最高税率を39.6%から37%に引き下げることなどを行っており、これを維持することをいう。
一方のバイデン新政権の公約は、40万ドル超の課税所得に対しては39.6%の税率を復活して適用する。また、各種の税額控除を縮小する方針。
(2) 医療では、「オバマケア」を無効化し、薬価を引き下げる。一方、バイデン新政権は、「オバマケア」を拡充するとともに、薬価を引き下げるという。
(3) 雇用・労働では、トランプ政権は、1000万人の雇用を創出するという。一方、バイデン新政権は、アメリカ製品の政府調達や老朽化したインフラの改修などに4000億ドルを、研究開発に3000ドルを投資することで500万人の雇用創出を目指す。また、時間当たり最低賃金を、現在の7.25ドルから15ドルへ引き上げる。
(4)教育への投資について、トランプ政権は特段の政策をうたわなかったのに対して、バイデン新政権は、チャイルドケアやフレスクールの拡充を行うとともに、学生ローンの減免を行う。さらに、中間所得層以下の家計に対する州立大学学費の免除を行う。
(5)環境問題としては、トランプ政権においては、気候変動に対する国連の政策は中国寄りだと批判して、パリ協定からの離脱を表明し、通告していた。バイデン新政権はこれを批判し、国際協調の観点からパリ協定への復帰すると明言している。
巨大パイプライン計画の中止。環境規制緩和の見直し。代表的なのは、「」キーストーンXLパイプライン」(既にあるのは、「キーストーンパイプライン」)の建設問題で、大統領令をだして建設許可の取り消しを行った。カナダで採掘した原油を南部テキサス州まで運ぶのを拡張しようとするものだ。距離は約1900キロメートル、建設費は9000億円規模。「化石燃料に依存しない社会を目指す」「パイプラインは温暖化対策を進めるうえで好ましくない」とする。
これについては、同じ理由でオバマ政権で取り止めていた敷設計画を、トランプ政権が「2万8000人の雇用を生む」ということで復活させた、それを大統領令でまた建設を中する決定を行った。これに対しては、「エネルギー移行はそんなに簡単ではない」などの批判がある。
(6)独占禁止政策について、トランプ政権は、GAFAの市場支配力をそぐために反トラスト法に基づく調査を進めていた。一方、バイデン新政権は、GAFAにデジタル課税を検討するとのこと。
(7)(1)とやや重なるが、国内の経済を回復されようと、あれやこれやの対策が目白押しだ。
消費の拡大ということでは、政府調達で米国製品を購入する「バイ・アメリカン」の強化。学生向けには、学生ローンの返済猶予や住宅の強制立ち退き停止を延長。マスク着用キャンペーンやワクチン配布の迅速化。
(8)通商では、トランプ政権はアメリカ第一主義をとり、とくに貿易赤字が大きい中国との交渉に強硬姿勢をとり、譲歩を引き出す。一方、バイデン新政権は、国際協調路線に戻るも、「戦略的競争関係」の中国に対しては、引き続き厳しい態度で臨む姿勢を見せている。アメリカからの技術流出については、トランプ政権の時と当面さほど違わない、かなり強硬な姿勢をとるのではないだろうか。
とはいうものの、新政権は、中国相手に強硬姿勢ばかりでは実効が上がらないことを見越しているかのようで、地球温暖化対策のパリ協定絡みやWTO(世界保健機関)に復帰する中では、協力関係を築いていくことが十分に考えられる。
(9)その他の政策ということでは、トランスジェンダーの人々の米軍受け入れの再開など。イランとの核問題協議に復帰。
メキシコ国境の壁建設の中止、難民受け入れの拡大の大統領令を出した。こちらは、オバマ政権が強制送還を猶予していたのをトランプ政権が中止の命令を出すものの、連邦裁判所がこれを認めなかった経緯がある。
ドイツやアフガニスタンの米軍削減の見直し。ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)を延長。
(10)その他として、「大統領令の乱発」という向きに対しては、バイデン大統領は、「法律を作っていたのではない、間違った政策を排除しているだけだ」と反論。背景には、議会での勢力拮抗があるという。
🔺🔺🔺(2021.2中旬以降)
(続く)
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🔺🔺🔺(2021.2上旬時点)
アメリカ大統領選挙後の方向性は、まだどうなるかわからない。とはいうものの、やや乱暴ながら、2021年1月の大統領の交代局面におけるトランプ政権の経済政策とバイデン新政権の経済政策(予想)との比較を試みてみよう。
(1)まずは、財政政策から。そのなかでは、1月中旬には、ドライバー政権下で決まった2次にわたる対新型コロナ経済対策(計約4兆ドル規模)に加え、新たに約1.9兆ドルの追加経済対策をまとめる、よう議会にその法案を提出した。
また、税制改革はどうだろうか。連邦法人税率を見よう。こちらは、トランプ政権による2018年からの実施改正で一律21%(その前の最高税率は35%)となってから現在にいたるも、同政権の公約は現状維持、中国から撤退したアメリカ企業に対する税制優遇あり。
これに対してバイデン新政権は、この最高税率を28%へ引き上げることを公約。工場を海外移転したアメリカ企業への課税強化をうたい、かたや国内で雇用創出、投資を行った企業には税を優遇を行う。
現在のキャピタルゲイン課税の最高税率が最高23.8%であるのを、トランプ政権の公約によると、15%ないしは18.8%へ引き下げるという。これに対し、バイデン新政権は、同率を39.6%へ引き上げるという。
現在の個人所得税率の最高は37%となっている。これは、トランプ政権が前述の法人税改正と合わせ、2018年から実施させた改正であって、この時最高税率を39.6%から37%に引き下げることなどを行っており、これを維持することをいう。
一方のバイデン新政権の公約は、40万ドル超の課税所得に対しては39.6%の税率を復活して適用する。また、各種の税額控除を縮小する方針。
(2) 医療では、「オバマケア」を無効化し、薬価を引き下げる。一方、バイデン新政権は、「オバマケア」を拡充するとともに、薬価を引き下げるという。
(3) 雇用・労働では、トランプ政権は、1000万人の雇用を創出するという。一方、バイデン新政権は、アメリカ製品の政府調達や老朽化したインフラの改修などに4000億ドルを、研究開発に3000ドルを投資することで500万人の雇用創出を目指す。また、時間当たり最低賃金を、現在の7.25ドルから15ドルへ引き上げる。
(4)教育への投資について、トランプ政権は特段の政策をうたわなかったのに対して、バイデン新政権は、チャイルドケアやフレスクールの拡充を行うとともに、学生ローンの減免を行う。さらに、中間所得層以下の家計に対する州立大学学費の免除を行う。
(5)環境問題としては、トランプ政権においては、気候変動に対する国連の政策は中国寄りだと批判して、パリ協定からの離脱を表明し、通告していた。バイデン新政権はこれを批判し、国際協調の観点からパリ協定への復帰すると明言している。
巨大パイプライン計画の中止。環境規制緩和の見直し。代表的なのは、「」キーストーンXLパイプライン」(既にあるのは、「キーストーンパイプライン」)の建設問題で、大統領令をだして建設許可の取り消しを行った。カナダで採掘した原油を南部テキサス州まで運ぶのを拡張しようとするものだ。距離は約1900キロメートル、建設費は9000億円規模。「化石燃料に依存しない社会を目指す」「パイプラインは温暖化対策を進めるうえで好ましくない」とする。
これについては、同じ理由でオバマ政権で取り止めていた敷設計画を、トランプ政権が「2万8000人の雇用を生む」ということで復活させた、それを大統領令でまた建設を中する決定を行った。これに対しては、「エネルギー移行はそんなに簡単ではない」などの批判がある。
(6)独占禁止政策について、トランプ政権は、GAFAの市場支配力をそぐために反トラスト法に基づく調査を進めていた。一方、バイデン新政権は、GAFAにデジタル課税を検討するとのこと。
(7)(1)とやや重なるが、国内の経済を回復されようと、あれやこれやの対策が目白押しだ。
消費の拡大ということでは、政府調達で米国製品を購入する「バイ・アメリカン」の強化。学生向けには、学生ローンの返済猶予や住宅の強制立ち退き停止を延長。マスク着用キャンペーンやワクチン配布の迅速化。
(8)通商では、トランプ政権はアメリカ第一主義をとり、とくに貿易赤字が大きい中国との交渉に強硬姿勢をとり、譲歩を引き出す。一方、バイデン新政権は、国際協調路線に戻るも、「戦略的競争関係」の中国に対しては、引き続き厳しい態度で臨む姿勢を見せている。アメリカからの技術流出については、トランプ政権の時と当面さほど違わない、かなり強硬な姿勢をとるのではないだろうか。
とはいうものの、新政権は、中国相手に強硬姿勢ばかりでは実効が上がらないことを見越しているかのようで、地球温暖化対策のパリ協定絡みやWTO(世界保健機関)に復帰する中では、協力関係を築いていくことが十分に考えられる。
(9)その他の政策ということでは、トランスジェンダーの人々の米軍受け入れの再開など。イランとの核問題協議に復帰。
メキシコ国境の壁建設の中止、難民受け入れの拡大の大統領令を出した。こちらは、オバマ政権が強制送還を猶予していたのをトランプ政権が中止の命令を出すものの、連邦裁判所がこれを認めなかった経緯がある。
ドイツやアフガニスタンの米軍削減の見直し。ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)を延長。
(10)その他として、「大統領令の乱発」という向きに対しては、バイデン大統領は、「法律を作っていたのではない、間違った政策を排除しているだけだ」と反論。背景には、議会での勢力拮抗があるという。
🔺🔺🔺(2021.2中旬以降)
(続く)
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